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第51話 ゴーレム、だが断る

ご来店いただきまして誠にありがとうございます。

 鷹柳の口から発せられた言葉に、皆が一様に驚愕の表情になる。厄ーーーもとい、約1体を除いてだが。


「川崎ダンジョンは確か以前にA級パーティが未帰還になっていやがったな?」


「ええ、A級パーティ<サンマーメン>ですね。バランスのいい優秀な方達だったのですが」


「気の抜ける名前を出すんじゃねえよ。せっかく伏せてやったんだからよ」


「なぜですか?とてもいいパーティ名ではありませんか」


 げんなりした鮫羅木の言葉に心底不思議そうに<エビフリャー>の元リーダー鷹柳が返す。


「あのなぁ。っと、それどころじゃねえな。詳しく話せ」


 鷹柳のネーミングセンスに諦めをつけて先を促すと、それ以上は食い下がらずに説明し始める。


「そうですね。兆候は3か月前にサンマーメンが未帰還になった時から現れていたのですが、川崎ギルドが異常を日本本部に報告していなかったのです。当時サンマーメンが下層の未到達エリアに挑戦して未帰還となったと報告されていたのですが、実際ははギルドから依頼を受けて中層で探索をしていたのです」


 支部が異なるとはいえ身内の失態に、頭痛をこらえる様に頭を押さえながら続ける。


「現在ギルドはサンマーメンが全滅したとみなしていますが、A級パーティが全滅するようなことが中層で起きていたにも関わらずあのクソ共は、ギルドの依頼でA級パーティが壊滅した責任から逃れるために報告を握りつぶしたのです。そして、ここしばらくで階層で本来出るものより強い魔物が現れ始めて、本日中層の魔物が上層に出現して初心者に被害が出るに至って漸く救援要請を出しました。今は川崎を主戦場とする探索者たちが魔物を外に出さないよう駆除していますが、数が多くて疲弊してきている状況です」


「そいつは……大失態だな」


 鷹柳はばっさりと切った鮫羅木の言葉に頷いて、室内にいる探索者たちを見渡す。


「返す言葉もありません。しかし、現状は一刻を争う事態です。ここにはB級以上のパーティに集まってもらいました。皆さんには川崎ダンジョンの救援と原因の調査及び解決をお願いしたいのです」


 鷹柳の説明を聞き終えた探索者たちは、どうするかを迷うそぶりで他の探索者を窺う。今はまだ中層の魔物が相手だが、次は下層、更にはもっと深い階層の魔物と対峙することになるかもしれない。S級でもなければ一応は要請を断ることも出来るので、リスクの大きさを考えて躊躇していた。


「あ、あの~」


 そこに場違いなかわいらしい声が上がり、皆の視線が声の主に集まる。


「あ、あわわっ。えっと、あたし達はB級じゃないんですけど、なんで呼ばれたんでしょうか?」


 声の主ーーー木葉は、一応の予想はしながらも気まずさと念のために尋ねる。


「すみません、咲乃さん達にというよりも、今回は柘榴さんの力を借りたかったんです」


「い、いいえっ!仕方ないですよ。あたし達はまだ皆さんほど強くないから………」


 そういう木葉たちは実力不足なので仕方ないとは分かっていても、やはり悔しさがにじみ出ていた。


 木葉達の誇りを傷つけると分かっていても、少女たちをないがしろにした要請をしなくてはいけないことに、己へのふがいなさも相まって鷹柳は苦渋に満ちた表情をしていた。


(マスターを蔑ろにされるのは大変気分が悪いですね。とはいえ、今のマスター達をそのような修羅場に放り込まれても困りますし……。マスターたちを強化して見返すことが最も近道でしょうか?訓練を3割くらい強化しましょう)


ゾクリッ!


 急に背筋に氷を入れられたような感覚に陥った木葉はきょろきょろと周囲を見回したら、三日月のような口をしている柘榴と目が合って小さくひっという声が漏れた。


 一部始終が見えていた鷹柳は未来の木葉の無事を祈りながらも、川崎ダンジョンの話に戻る。


「基本的には皆さんには魔物が外に出ない様に防衛戦をお願いすることになります。そして、調査には残念会でたまたま探索に出ていなかった為、要請を受けていただくことが出来たS級パーティ<浪人グ石達>の方々が当たります」


「おお、あの浪人グ石達が!」

「田中一浪は今年もダメだったのか!」

「クラン全員が浪人で構成された<浪人業の館>!その中でも中核のパーティ、浪人グ石達か!」

「受験勉強しろよ……」


 S級参戦の報に沸き立つ探索者たちの中で鮫羅木がポツリと突っ込みを入れるが、興奮している探索者たちの声に搔き消されていた。この男は基本的に短気で粗暴であるが、割と常識的な人間のようだ。周りが変人ばかりで相対的に常識人のように見えるだけとも言えるが。


「柘榴さんには浪人グ石達と調査を……「嫌です」お願い……へ?」


 最後まで言わせずに間髪入れずに断った柘榴に、思わず気の抜けた声を発してしまった。


「な、なぜですか?」


「私は人類のものではなくてマスターのものですので、貴様たちに使われる謂れなどありませんよっ。これは普段の取引や商談とは別の話でしょう。なにより、この調査は今日出発しても明日には終わらない可能性が高いのではありませんか?」


「ええ、おそらく異常の大元は下層以降だと思われますので、週、いえ月単位になるかもしれません」


「マスターは来週から期末試験の直前になります。そんな時に学校を休むことなどできません」


「え~~~」


 思わぬ答えに放心してしまった鷹柳は悪くない。すべては木葉が(成績的な意味で)悪い。


「で、ですが、これは貴女もおっしゃっていたダンジョンからの「だが、断る!」……え~」


 食い下がるが、漫画家のような顔をして食い気味に断られた鷹柳は助けを求めて木葉に視線を移す。


「あ、あのz「これは地上の危機かもしれませんが、マスターは留年の危機です!」…ぐはぁっ」


 助けは現実を突きつけられて即ダウンして沈黙した。そして、やり取りを聞いていた周囲の探索者も大半が昔を振り返り、気まずそうな顔をして黙り込んでいた。


 さすがに今回は柘榴の意見に分がある。柘榴の主は木葉で、その木葉が学生である以上は退学を決めているなどでもない限りは学業が優先だ。


 しかし、鷹柳としてもギルドの責任者の1人として探索者たちの安全のため、最善の布陣を取りたいがゆえに頭を悩ませる。


 木葉は自分の成績のせいで地上の危機を齎していることに居た堪れなさを感じて小さくなっていたが、やがてキッと顔を上げて覚悟を決めた顔で柘榴に向き直る。


「ざk「退学するというのなら佳未亜の理解を得てからではないですか?」ろ……はい」


「はいはい、そこまでにしなさい」


 言葉頭で先回りされてへにょった。そんな木葉たちを見て苦笑していた依和那が仲裁に入る。鷹柳や探索者たちは依和那に期待の眼を向けて見守っている。


「確かに期末試験を受けられないのは困るわ。特に木葉は2学期までの成績が足を引っ張っているし」


 期待していたはずの依和那の言葉に鷹柳たちもへにょった。


「だけど、ダンジョンブレイクを本当の意味で解決するには柘榴の力が必要でしょう?だから、木葉の勉強はわたしが付きっ切りで見るわ。ただ、ね。柘榴ってこれを解決する手段を持ってない?」


 依和那の確信がありそうな物言いに木葉は驚きを露わにして柘榴を見つめて、新人2人組は話についていけずに目を白黒していた。


 そして、依和那に問い詰められているはずの柘榴はというと……苦笑していた。


「なんだか……まるで依和那は私のことをよく理解しているようではないですか。おかん気質故ですかね?」


「せめてお姉ちゃん気質にしてよ……」


 少し抜けている木葉の幼馴染として面倒を見ているうちに身についた気質であるが、おかん扱いには嫌そうな顔をして訂正をした。


「そうですね。人類が下層を攻略したと聞いていたので、そろそろ開示してもいいと思っていたものがあります」


 柘榴は一度言葉を途切るとスカートの中から2つの幾何学的な模様が描かれて中心部が空白となっている板を取り出した。


「これはワープポータルです。いわゆる転移装置というものですね。設置をすればダンジョンに融合しますのでダンジョン内にも設置可能です。ただし、下層以降の魔力がないと動かないので、上層から中層で設置する場合は下層の魔物からとれる魔石を1週間ごとに交換しなければいけません」


 柘榴の説明に探索者たちは顎が外れるのではないかというくらい大口を開けて愕然とした顔を晒して放心した。


 そして、


「「「「「そんなものがあるなら早く出さんかいっ!!」」」」」


 皆の心が一つとなった。

2話に渡ってただ主人公が駄々をこねるだけの話になってしまったので12時にもう1話投稿します。

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― 新着の感想 ―
なんで柘榴が無償提供を自分からしてくれると思ってるの?出さんかいじゃなくて何かないですか出してください報酬はこれです、でしょ
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