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第5話 ゴーレム、主の力に戦慄する

ご来店いただき誠にありがとうございます。

 木葉は柘榴と隠し部屋を出ると上の階へつながる階段へと歩く。


 余談ではあるが、名古屋第2ダンジョンは地下に下るタイプであるが、この世界においてダンジョンは上層に進むものもあればフィールド内でエリアが区切られたりと様々なタイプがある。下るタイプ以外のダンジョンでも高難易度のエリアになれば中層、下層といった呼称で呼ばれている。これは、初期に発見されたダンジョンが下るタイプであったからだ。


 柘榴は特に何も言わず、木葉がするがままに任せており、特に手を出す気もなかった。


 これは、この階層程度であれば渡した装備があれば、木葉でも問題なく切り抜けられるという判断もあるが、木葉育成計画のため極力自分が直接の手出しをすることはしないと考えているためである。後方で腕も組んでいる。


 少し進むと、こん棒や短剣を装備したゴブリンが3体現れ木葉が構えるが、この時点で柘榴は内心で評価にバツをつけた。


「よし、いくよ!」


 ナイフを抜き、叫びながら突進する木葉に、柘榴は遠い目をした。


 それでも、階層の適正レベルより上で、上層では破格の装備をしていることもありナイフを振るえばこん棒ごとゴブリンが切り裂かれ、ゴブリンが振るう短剣をナイフで受ければ短剣が切れ、服に刃がかすっても傷もつかない。因みに、柘榴から貸し出されたナイフは特殊効果はないが、素材はミスリルである。


 ゴブリンにしてみれば、可哀そうに思えるくらいの無理ゲーである。


 まあ、ダンジョンの魔物は基本的に感情がなく、侵入者に対する殺意のみがあるので、魔物に対して情をいだく人間など殆どいないが。


 やがて、すべてのゴブリンを倒し終えるとドロップの魔石を拾って、柘榴の様子に気づかずドヤ顔で言った。


「どう?あたしも結構やれるでしょ」


 その言葉に柘榴はスンとした表情になり、木葉の背後を指さす。

 指をさされた方を向くと、隠れ潜んでいたもう1匹のゴブリンがこん棒を振り上げていた。


「ひゃあっ」


 木葉は悲鳴を上げて手で頭を覆い目を瞑ると、そこにゴブリンがこん棒を振り下ろす。


 手甲にこん棒が当たるが、少し衝撃があるのみで痛みも感じないので、恐る恐る目を開けると何度もこん棒を振り下ろすゴブリンが目に入った。


 やがてゴブリンが疲れて息を切らしたところで、めった刺しにする。


 あまりにグダグダな戦闘に、満面の笑顔を木葉に向ける。人間であったら額に青筋が浮かんでいるだろう。


「マイナス100点です。おめでとうございます。探索者はあきらめましょう。マスターのアレは戦闘といっていいものではありません」


「えうっ、いい線言っていたと思うんだけどな」


 木葉も意外と自己評価が高い。存外お似合いの主従かもしれない。


 そんな木葉に、心底面倒くさそうに柘榴が評価を述べる。


「まず無造作に歩くのが論外です。索敵もせず、斥候が斥候していないではありませんか」


「うぐっ」


「おまけに敵とほぼ同時の発見で正面対決。斥候系のクラスの戦い方ではありませんね」


「あぶっ」


「さらに叫んで攻撃を知らせながら、大ぶりのフェイントもない斬撃」


「はげっ」


「戦闘後は油断しきって伏兵に気づかず、奇襲を許す」


「ひんっ」


「最後に攻撃されたら縮こまって目を閉じるとか、死にたいんですか?」


「がはあっ」


 木葉に999のダメージ。木葉は力尽きた。


「他にも細かい部分は諸々ありますが、大きな部分だけでもこれだけあります。よく今まで生きていましたね」


 柘榴は今までの木葉の装備であれば死ぬか重傷を負っていてもおかしくない戦闘風景で、半年も生存していることを不思議に思った。


「あ、うん。それはね、いつも危なくなると、何となくどうすればいいかが分かるんだよ」


 それを聞き柘榴の頬が引き攣る。

 

 それは《生存本能》が働いているのだろうと推測した。おそらくそれは当たっているはず。つまりは木葉は上層で日常的に命の危険に陥っていたという事だ。


(私はこのマスターを導けるのでしょうか……いえ、至高の私に不可能などない……はず)


 唯我独尊で自信の塊のような柘榴の心を折りかける木葉は、ある意味大物であるといえる。


 ちらりと木葉を見るとしっぽを振る子犬のような表情で柘榴を見上げる。

 まるで褒めろと言わんばかりである。


(マイナス評価をしたばかりなのに、褒めろ……だとッ!考えろッ!どうするッ!どうやって切り抜けるッ!)


 ピンチの時の奇妙な冒険をする人みたいな顔になり、今までで最高の難問にあたる。ゴーレムの本能として、なんだかんだでマスターには甘い部分があるのだッ!


「い……生きてて偉いですね~」


 絞りだした答えは、全人類に当てはまる内容であった。

 まだちょっぴり心が折れていたようだ。


「えへへ~」


 内容は気にせず、とりあえず褒められたことに喜ぶ木葉を見ながら、もういっそ人体改造も有りかなとかヤバいことを考える。


 そんなことを考えられているとは思っていない木葉は、形だけ壁に張り付いたりしながら帰りの道を進んでいく。


 道中で何度かゴブリンやコボルトに遭遇したが、相変わらずの泥仕合で倒しながら進んでいき、やがてダンジョンの出口が見えてきた。


 木葉はダンジョンを出て受付へと向かい、柘榴はそのあとをついて行く。


 名古屋第2ダンジョンの受付はカウンターに10人ほどの職員がおり、事務所機能や倉庫もある規模の大きな建物の中にダンジョンゲートがある。これは、ダンジョンゲートができた後に監視、管理の目的により建設されているからだ。規模の小さいダンジョンでは、カメラによる監視だけにとどめられている場所もある。


 木葉は受付の機械に探索者カードをタッチし、退場の手続きをするとドロップアイテム売却カウンターに向かう。省人化の波は探索者業界にも押し寄せており、退場は無人化している。入場時は安全のため、目的階層の設定や、死亡の自己責任についての誓約書への電子署名などの手続きを人間が行い、危険などがあれば通達を行っているのだ。


 ギルド内で柘榴は黙って木葉の後をついていたが、その容姿と服装のせいで、その場にいる職員や探索者からの視線を一身に集めていた。 もっとも、柘榴にとっては他人などは関心を払う対象ではないため、気にも留めていなかったが。


 木葉は売却カウンターに着くと、受付をしている20代後半くらいの男性職員に買取を依頼する。


「今回は魔石以外はありますか?」


「はい、あります。お肉もあります」


 ドロップアイテムの買取は初めてで、緊張している木葉が職員の質問に答える。


「それでは、こちらにドロップアイテムを出してください。こちらが魔石で、こちらはそれ以外です。また、食品はこちらです」


 職員はそういって魔石用の小さなトレイとそれ以外用の大きめのトレイ2個を出した。


 そのトレイに木葉がリュックにいれていた魔石を入れ、トレイにオピオタウロスの角を入れると職員がぎょっと顔をした。さらに、柘榴から渡されたマジックバッグから肉を取り出すと口をあんぐりと開けて驚いていた。


「簡易鑑定で詳細不明な素材にマジックバッグ……」


 売却カウンターの職員は簡易鑑定のスキルを持っているため、角と肉の正体がわからなかったことに驚いたのだ。


 柘榴に注目していた探索者たちの視線も素材やマジックバッグに移り、中には欲望の光を宿らせるものもいた。


 驚いていた職員は気を取り直し、職務に戻り精算を行っていき、結果を木葉に報告する。どうやらこの職員は職務に忠実で真面目な人格であるらしかった。


「咲乃様、精算が終わりました。まず、ゴブリン、コボルトの魔石が19個で950円です」


 上層の魔石は内包するエネルギーもあまり多くなく、供給量も多いためほとんど値にはならない。木葉も普段は電車代など交通費を差し引くとほとんど手元に残っていなかった。


 因みに、ゴブリンやコボルトは魔石以外もドロップするが腰ミノや毛玉など需要がないので拾うものはいない。


 つまりは、上層は生活ができるほどの稼ぎとならないため、探索者達は早々にレベルをあげ中層を目指す。


「それで、こちらの角と肉ですが未知の素材であるため。詳細な鑑定をさせていただきたいと思います。こちらの結果につきましては、後日、咲乃様にご連絡を入れさせていただきます。その際には入手した経緯の聞き取りがある可能性があります。これはF級である咲乃様の探索者ランクと素材元の魔物との著しいランク差があるためです。ご了承願います」


 とても真面目で公平な対応であった。男性職員は眼鏡をしていないが、エア眼鏡をクイっとしている幻像が見えてくるようである。鈴木朔太郎27歳彼女は3か月前にチャラ男にNTR済みである。公平すぎて特別扱いをしてくれないことに不満があったところをチャラ男に付け込まれたのだった。


「はい。分かりました。よろしくお願いします」


 木葉の返事に職員が安堵で男性顔をほころばせた時、1室の扉が開き何人かの人間が出てくる。


「なげーこと時間とらせやがってよ。未来のS級様の時間を無駄にすんなってなぁ」


「ほんとそれな。ひゃはは」


 それは木葉を隠し部屋に無理矢理案内させ、強敵の囮にした波賀一行であった。


作者:お久しぶりです。また魔物借りに来ました。

魔物屋:いらっしゃい。今日はどんな子だい?

作者:初級の魔物でおすすめいますか?

魔物屋:じゃあ、ゴブリンやスライムかね。

作者:ゴブリンとかもよく出てますが、借りれるんですか?

魔物屋:あいつらは数がいるからねぇ。

作者:ならゴブリンでお願いします。

魔物屋:あいよ。

ゴブリンズ:ギー。

作者:よろしくな。ゴ吉、ゴ郎、ゴんザレス、ゴリ

魔物屋:(また名前つけてる)

ゴブリンズ:ギー?ギ、ギーッ!(やっちまえ!)

作者:ぎゃーっ

魔物屋:あ、そいつらリアル種なんで基本的に手あたり次第襲うから気を付けてください。

作者:……ガクッ

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