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第44話 ゴーレム、配信する(後)

ご来店いただき誠にありがとうございます。

 配信の開始まで残り僅かになり、舞台となるギルドの会議室では司会を務める職員と剣崎がカメラの前に座って控えており、柘榴は重量から座れないので後ろで立っていた。セレスタは呼ばれてから登場する手はずになっているので、カメラの範囲外で待機している。


 磊は出演せず見届役として脇に控えていた。


 ギルドの公式動画などは通常ではあまり瞬間的な同接数は伸びないのだが、今回は事前に重大発表と告知されていたこともあり、多めの5千人ほどが待機中になっていた。


 探索者の場合は情報が命にかかわるので、ソロであれば本人、パーティなら誰がしかが確認をするのが当たり前になっている。情報収集を怠った結果が生命の喪失に直結する世界なので、探索者達も情報収集に余念が無い。


 そして、時間となり生配信が開始される。


「皆様、ご視聴いただき有難うございます。わたしは今回、司会を務めさせていただきます田崎と申します。そして、同席いただきますのがダンジョン探索組合日本本部長の剱崎と今回の情報提供者の1人の柘榴さんです」


 受けを狙うエンタメ動画ではないので固めな自己紹介から始まるが、英雄剱崎と最近、色々話題になった柘榴がいることでコメントが盛り上がり同接も増えていた。


「剱崎だ。今回は歴史的に見て大きな発表になる。このような場に立ち会えることを光栄に思う」


「柘榴です」


:轟雷武王がいるし相当なことだろこれ

:歴史的っていうと、ついに深層到達か?

:エゴや魔術も探索者の歴史を上書きしてたがさらに上か?

:何この女、感じ悪

:これざっくじゃん


 剱崎の思わせぶりな発言にコメントでは早速考察が飛び交い、柘榴のそっけない自己紹介に柘榴を知らない層から批判のコメントが流れていた。


「我々、探索組合は以前ダンジョンの発生に関する報告を発表させていただきましたが、今回はその裏付けとなる存在が発見されました」


「あまり勿体ぶっても仕方のないことだ。早速ではあるが紹介をさせてもらおう」


 田崎のナレーションを剱崎が継いで、セレスタ登場の流れを作ると、コメント欄は殆ど正解ともいえる答えにたどり着いていた者もいた。


「それでは、こちらにおいで下さい」


 田崎のセリフと共に白のワイシャツに薄い緑のフレアスカートをはいたセレスタが画面にINする。


 しとやかに歩き剱崎の隣に腰を下ろした瞬間にコメント欄が止まり、そして爆発した。


:はああああああああああっ!?

:え、え、え?

:美少女……イイ

:耳が長い………

:ゑ、ゑるふ

:エルフだとおおおおお!!

:異世界人の発見でダンジョンの元が異世界説の裏付けになるという事か

:いや、偽物だろ

:コスプレ乙

:偽物とか言ってる奴いるけどギルドがそんな悪戯するかよ


 若干偽物を疑っているコメントもあるが、概ね純粋に驚きで埋まっていた。


「こちらのセレスタさんには配信前にいくつか検査を受けていただいておりまして、血液検査ではこの地球上の人類のどの型とも類似しないと判定されております」


 司会の田崎が捕捉をコメントすると偽物説は完全に埋もれて興奮一色になる。中には検査と聞いてスリーサイズを聞くコメントもあったが、見た目中学生に公営に準ずるギルドの配信でセクハラをかます猛者はもれなくBANされていた。


「さて、セレスタさん、自己紹介をお願いいたします」


 田崎に促されてセレスタが立ち上がり、お辞儀をしながら自己紹介をする。


『この世界の皆さま初めまして、ストアラス氏族の族長の娘セレスタですわ』


:?

:綺麗な声だな

:英語か?

:翻訳ソフトが翻訳してくれない

:ざっくの持ってるフリップってそういう事!

:でもセレスタちゃんには司会の言葉通じてたよな


 翻訳の魔道具が配信では使えないことはあらかじめ説明されていたので、柘榴の高速フリップ術で翻訳することになっていた。田崎がそれを説明すると概ね納得のコメントが流れた。


 そして、セレスタの自己紹介までが拡散された影響で既に、同接数が3万人を超えていた。探索者だけでなく一般にもエルフ発見の報が広まってきていたことで現在進行形で伸びている。


「今回我々がこうして彼女に配信に出演をしていただいたことには理由がある。現在彼女はこの世界では唯一のエルフという種族だ。我々ダンジョン探索組合日本本部としては、彼女を1人の人間として認識して今後接すると示すためだ。日本政府とも折衝して彼女の戸籍取得を進めている」


 剱崎の発言に肯定的な意見が多数を占めるが、中には海外からの干渉を心配するコメントもあった。


 そう言った意見があることも予測をしており、実際に圧力までかけてくることがあっても何ら不思議ではないとギルドとしてもダンジョン庁としても考えている。


 それゆえに柘榴の推測は非常に重要であった。これにより自国での捜索にも手を割き、発見時には柘榴が手を貸すことまでを交渉の材料にしても良いと約束していた。


「この配信の最大の趣旨として、我々ダンジョン探索組合日本本部はこれからエルフ以外の異種族が発見されても第一に共存を目指すことを宣言することである」


:うおおおおおおおお

:熱い展開になってきたな

:これはマジで歴史が変わるわ

:女ドワーフは髭生えていない方で頼むーーー

:ワイちょっとダンジョンで獣なイケメン探してくる

:今まで30年も見つからなかったのにそう簡単に見つかるかな

:実際いたんだから他にも異世界人がいる可能性はゼロじゃないぜ


 この剱崎の宣言から他にも異種族がいることを想起させられて、コメント欄も大いに沸き立ち自分達も異種族を発見するという野望に燃えたコメントも多数見受けられた。


「それでは発見した柘榴さんにどういった状況だったか聞いてみましょうか」


 柘榴はフリップを下ろして口を開きかけて少し考えると、


「柘榴アーーー一イッ」


 面倒くさかったようで、実際の状況を映した。これには剱崎も苦笑して、興味深そうに映像を眺めていた。ギルド職員の田崎はもちろん問題児である柘榴の情報をチェックしていたが、柘榴を知らない視聴者は眼から光線を出していることに驚きのコメントを入れていた。


 映像はダイジェスト版で進んで、木葉の感知能力などは省いているが大樹を砕いた粉塵を受けた依和那や穴から落下して白目を剥いた2人といった乙女の恥は映っておりセレスタは気の毒なものを見る目をしていた。


 そして……封印の場所にたどり着いた。


『きゃああああああああああああっ!!!!』


 セレスタが神速で柘榴の目を塞ぎ、自らの裸体が晒されたのを一瞬に抑えた。


:俺ダンジョン行ってくる

:さーちょっと散歩行くか

:一狩り行こうぜ

:ワイも裸のイケメン探しに行ってくるわ

:見つかるのハゲデブのおやじかもしれんやろ

:ぶっ〇すぞコラ

:マジ切れ怖い


「なるほど、隠し部屋か。そういえば君が発見されたのも隠し部屋だったな?」


 木葉達やセレスタの痴態をなかったことにして進める剱崎は、見た目は厳ついが紳士であった。


 そんな紳士の質問に対して柘榴は答えることなく、その質問の先を話す。


「私の弟妹機がこの世界にいるならば、確実に隠し部屋にいるでしょう。異世界人に関してはそれぞれではないかと思います」


「と、いうと?」


「セレスタは封印という手段で滅びを回避しましたが、他にもいくつか手段が可能性として考えられます。例えば、空間の狭間に潜むとか石像になるとかならば滅びの概念を回避できたかもしれません」


「なるほどな。我々には荒唐無稽な話であるが、未知の文明であるならば可能性はあるということか」


「しかし、魔物の擬態の可能性もあるでしょうから無暗に近づかないことを推奨します。特に私の弟妹機を見つけた場合は避けた方がいいでしょう」


「何かあるのか?」


 珍しく憂鬱げにシリアスな雰囲気を出す柘榴に、気になった風に剱崎が理由を尋ねる。


「私が居た場所をもう一度調べなおしたのですが、試練の魔物は特定のモノを捕獲したものではなく、試練対象者を圧倒できる存在を召喚するものでした」


「っ!!それでは達成不可能ではないのか?」


「ですから試練なのです。恐怖を越えて前に進み、技術や運、知力など全てを限界を超えて駆使して生きてゴール(弟妹)にたどり着いて起動させることですが、普通では越えられません。弟妹機は別の試練が仕掛けられているかもしれませんが、簡単なものなどはないでしょう」


「そうか。探索者の諸君も十分注意して、異常な事態には早急に組合に報告をしてくれ。これは日頃からの心得でもあるがな」


 剱崎が納得して探索者達に注意を促す。予定調和のやりとりであるが場の空気が重くなってしまったので、空気を変える為に田崎がセレスタに話を振る。


「はい、では此処からは折角ですからセレスタさんに色々聞いてみましょう。いただいたコメントから拾っていきましょうね。最初は……エルフと言えば弓といったイメージですが、セレスタさんも弓は得意なのですか?」


『ええ、弓は人並みに扱えますが、今はアレと出会うことがわたくしの運命だったと思います。』


「アレ……ですか?」


『柘榴さん、シェキナーとタスラムをわたくしに』


 請われた柘榴が2丁を取り出して手渡すとセレスタが陶酔した表情になり、コメントがざわつき田崎の顔が引き攣った。


『やはりこの形、手触り、重さ全てが馴染みますわ〜〜』


:その顔は俺にだけ見せてくれ!

:メス顔になってやがるwww

:ダンジョンで銃ってあまり効果ないって聞くけど

:そんな顔見せられたら……うっ

:通報しました

:これもう放送事故やろww


「つ、次の質問行きましょう!さて次はーーー」


 慌てて田崎が次の質問に移り、その後は順調に進行してーーーセレスタの趣味が配信鑑賞でスパチャをしたいと熱く語った処で一盛り上がりあったがーーー締めることができた。


 配信が進むにつれて海外にも拡散されていき、最終的には同接100万を超えていた。

 

音声の字幕化も出来ないのでセレスタが喋るたびに柘榴が高速でフリップを書いています。

そして配信終了後には魔銃の問い合わせが殺到して、ギルドが被害を受けたとか……

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