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第43話 ゴーレム、配信する(前)

ご来店いただき誠にありがとうございます。

 意を決して木葉は佳未亜と健にセレスタと濡鴉を紹介して同居の許可をお願いしたが、 さすがに佳未亜もエルフとゴーレムと住みたいと言われてもどうすればいいか判断できずに迷っていた。


 木葉自身に人を一人養う甲斐性が今ならある。とはいえ、木葉は未成年だ。あとは世帯主としての判断になるわけだが、濡鴉は娘の従魔なので仕方がないと言える。


 しかし一方でセレスタはエルフであろうと人だ。これは不法滞在者になるのであろうか?だけど目の前で困っている人を見捨てるのは……などと、あらあらしながらも割と困っている感が出ていた。


 それを眺めているセレスタも不安を感じている雰囲気が出ていたので、柘榴は密かに彼女に根回しをしてその返事が返ってきていた。


「佳未亜、少しいいですか?」


 柘榴が声を掛けるとその場の全員の目が向けられて、顔に助けてと書かれていた。


 柘榴は濡鴉については、ゴーレムは命令しなければ停止していられるので木葉の部屋に置いておけばいいと提案すると部屋の持ち主だけは厳ついオブジェに微妙な顔をしたが、拾ってきた本人なので最終的には受け入れさせられた。健はうらやましそうにしていたが、濡鴉も魔物であるので諦めた。


 セレスタは明後日には戸籍が取得できる見込みと説明して西風荘の隣の部屋を麗華に押さえてもらったので、明後日まで泊めることはどうかと話すと、それならばと佳未亜からも了承が得られた。


 セレスタとしても、知らない世界で仲間のすぐ近くに住めるのであれば心強いと思って乗り気だった。


 本日は木葉の部屋で休むという事で、家族会議も終わり解散しようとしたところで柘榴がセレスタに声を掛ける。


「セレスタ、明後日は貴女の存在を生配信で公開しますので、私とギルド本部まで行きますよ。ですので、それまではこの家から出ないようにしてください」


「ええっ、わざわざ公表するの?セレスタさんは大丈夫なの?」


 配信の意味が分からないセレスタは良く分かっていない顔をしていたが、木葉が驚いて柘榴を問い詰める。


「隠蔽してもいずれバレますので変に権力者や資産家間だけに知られるよりは、広く周知してこの私の庇護下にあると知らしめます」


「うわぁ……」


 柘榴が悪意のあるちょっかいを掛けてくる者を処分していることは知らないが、説得力しかない言葉にドン引きして口を噤む。


「その上で他にも異世界人との出会いの可能性を示唆してあげれば、世間は愚かに踊るでしょう」


「……うわぁ」


 その過程でダンジョンで力尽きる被害者が出ることを考慮に入れた上での悪辣な策を実行するつもりの柘榴にもはや言葉もなかった。


 それでもロマンと未知の知識や技術を追う者が出るであろうことは想像に難くない。


 もっとも2匹目のドジョウを狙う者は必ず出るはずであるので、そのあと押し程度の狙いであるが。


 そして、未だに意味が分かっていないセレスタに動画を見せて説明をした。


 初めて動画を観たセレスタはタイムスリップした人がテレビを観た時のような反応をして大興奮しており、後に動画の沼にはまっていくことになるのはリハク(柘榴)の目を持ってしても見抜けなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーー


 セレスタ公開の当日がやってきて、早朝から事前の打ち合わせのために西風荘を出発していた。


 ギルドからの緊急発表という事で、木葉達が松本ダンジョンで探索していた時からSNSや公式で広報をしており、英雄である剱崎が出演するという事で短期間で話題になっていた。


 昨日は1日咲乃家で引きこもっていたセレスタは1日中動画を観ていて退屈はしなかったようだが、夜更かしまでしてしまい今は後部座席でお眠だった。


 しかしながら、そのおかげで動画に出演することに大変乗り気になっており、説得の手間などが省けたことは助かったと思っていた。


 そうして千代田区にあるギルド本部に到着すると、車を収納して変装したセレスタとロビーの受付に向かう。


 場違い感たっぷりな柘榴の格好は、逆に個人判定がしやすいのでスムーズに応接室に通された。


 しばらく待っていると、剱崎ともう1人壮年の男性が入室してきた。


「柘榴君、こちらはダンジョン庁攻略局局長の磊忠(こいしただし)氏だ」


「初めまして、磊です。今日は私が立ち会うことになりました。なにせ、貴女からの情報は刺激が強いのでね。剱崎君も胃痛を共有できる人間が必要らしい」


 剱崎から紹介された磊は慇懃に挨拶をすると、少し茶目っ気を見せた。話が通じるアピールかと解釈して柘榴は無難に挨拶を返して、本題に入る。


「さて、今日の配信枠を用意してもらった主題は話していた通り、こちらのセレスタです。セレスタ、帽子を取りなさい」


 柘榴に支持されたセレスタが帽子を取り、その容姿を見せると剱崎と磊が事前に聞いていたにもかかわらず驚愕で思わず声が漏れていた。


「これは………」


「疑っていたわけではありませんが、異世界人の実在を見せつけられると驚きますね」


『初めまして、ストアラス氏族の族長の娘セレスタですわ。と言っても氏族が無くなってしまったので今はただのセレスタですが』


 自虐を含んだ自己紹介にセレスタが体感時間で同族を喪ったばかりと思い至り、沈痛な表情を返す大人たちは流石である。初対面にビンタをかましたどこかのゴーレムは見習った方がいい。


『すみません。困らせてしまいましたね。わたくしについて便宜を図っていただいたとお聞きしております。御礼申し上げますわ』


 事前に聞いていた日本流で礼をすると、大人たちは見た目補正もあり感心していた。実年齢は大人たちに3倍ほどであるが。


「いえ、私達も貴女が早くこの国に馴染めるように微力を尽くさせていただきます」


 公人としては建前、個人としては本音で磊がセレスタの礼に返すと、セレスタは微笑みを返した。


 挨拶を一区切りすると、剱崎が口火を切る。


「柘榴君に質問だ。君が以前話をしてくれたダンジョン異世界説が補強されたと言える事態だ。その上で、彼女がエゴではないという根拠はなんだ?」


「セレスタの場合は単純に弱すぎます。松本ダンジョンも下層エリアまでありますが、セレスタでは下層まで辿り着けないでしょう」


『ふぐっ』


 セレスタが流れ弾でダメージを負っていたが、族長の娘で本格的な戦闘組ではなかったので仕方がないと言える。


「わざわざダンジョンが繋がる位の存在なのです。そのダンジョンで自身が最強であるか、最強を侍らせる存在かになります。こんなマッパで封印されていた雑魚なはずがありません」


『ぷひゅぅ』


 哀れなセレスタはダウンして涙でソファを濡らしていた。しかし、柘榴の説明はまだ続く。


「逆にコアのあるダンジョンで最深部にいるような存在が出て来られるほど、地上はまだ魔力が濃くありません。まあ、信じるかは貴方達に任せますが」


「いや、信じるさ」


 言葉少なに返すがどこか安堵しているようで、それは磊も同様であった。ダンジョンを管理する人間からすれば深層以降の存在が地上に出るなど悪夢以外の何物でもないだろう。


「それと、もう一つ質問だ。君は他にセレスタ嬢のような存在が他にもいると思うかい?そして、その存在は人類の味方たり得るか?」


「くくくっ、それは意地の悪い質問ですね。私はすべてのダンジョンを知っているわけではないといったではありませんか。……しかし、封印をして生命を隠蔽、それも滅びという意思なき概念を騙すという事をやってのけた。もちろん滅んだ世界の消滅したエリアにいれば封印ごと消滅に巻き込まれたでしょうが、セレスタは賭けに勝ちました。人類のこの己や他者の生命への執着!他の抜け穴を使った者がいないなどという事はありえないと確信していますよ」


 少し興奮したように言う柘榴に剱崎と磊、セレスタも驚くがそれに構わずさらに続ける。


「さて、滅びから逃れた者が人類の味方たり得るか、という質問に対しては全ての人類が意志を統一出来ますか?と問われているのに等しいですよ。思考、思想の違いがあるのは、自我があるならば異世界人も同じです」


「ぬ、そうだな。すまなかった。では、質問を変えよう。異世界人に我々の力になって貰う交渉は可能だろうか?」


「それに関しては人の立場から世界を見たことがない私よりも、セレスタの方が見てきたでしょう。貴女の世界の事でいいので教えてください」


『ええ、分かりましたわ。そうですわね、貴方達のような普人種はわたくしたちの世界にもいましたが、わたくしたちのような異人種を捕らえて奴隷にしているような普人種もいましたので、全ての種族が友好的にお話できるかと申されますと難しいかもしれませんわ』


 セレスタの話を聞き地球でもあった歴史上の民族弾圧から、光景が容易に想像が出来てしまい天を仰いだ。木葉だったら愛読書から想像をしていただろう。


 とりあえず友好的な異世界人の実例が目の前にいるので、すべてが悪い結果にはならないだろうと無理矢理己を納得させて、配信で発表する内容の打ち合わせに入った。


 そして、いよいよ未知との遭遇が世界に公開される。



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