第41話 ゴーレム、超嫉妬する
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主達がダンジョンで探索をしている頃、柘榴は幸村に加えてオンラインで剱崎や鷹柳と他に何人かのギルド幹部との会議を終えていた。
力技も使ったが、交渉と懐柔でセレスタの戸籍や所属はなんとか解決できたので、結果は悪くはないだろう。
海外に遠征に行かなければいけなさそうな流れは面倒極まりないが、異世界人を探すうえではそこまで悪くはない。
落としどころとしてはお互いにwin-winの結論まで持って行けたであろうと思っている。
会議を終えて宿をチェックアウトした後は、しばらく散策をしていた柘榴が時計を見ると帰還予定の時刻が近いため、迎えに行くために立ち上がった。
その先であんなことが起こるとは、さしものリハクの目をもってしても見抜けなかった。
それはさておき、柘榴の存在は目立つ。最近はそこまでではないとはいえ、日本でアジア人ではない容姿自体が目立つし、その上恰好がメイド服だ。
そのため、山道を歩いていても観光客や探索者から注目をされている。
物おじしない人間に話しかけられても適当にあしらっていたが、元々他者のことな路傍の石と思っている柘榴なので足止めされて先に進めないことに次第に苛立ち、衝撃軽減の魔術を使って木々の上を跳ねていった。
「OH~~NINJA」
この時に観光客に撮られた動画が拡散して、メイド服を着た女性は忍者であるという都市伝説が生まれたりして一部で流行るが、それは別の話だ。
余計なことに時間を取ったが、ギルドに着いた時にはまだ木葉達が出てきていなかったので、柘榴は待合所で待つことにした。
しばらく目を閉じて待っていると不意に目の前に複数人の気配がした。
特に何もしなければ無視をしていたのだが、手を伸ばしてくる気配があったので目を開けて正体を見ると健よりも年下の少年少女が5人ばかりいて、うち1人の少年が柘榴に触れようと手を伸ばしていた。
「わっ、起きたぁっ!」
急に眼を開けた柘榴に驚いた子供たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていき、物陰からそっと覗きこんでいた。
好奇心が表に表れた目で見てくる子供たちに、見ているだけでもうんざりしてきた柘榴は別の場所で待とうと移動をし始めた。
すると、子どもたちもそろーっと柘榴の後をついてきた。振り返ると散らばってまた物陰に隠れる。完全に遊んでいた。
「なんですか?この山猿たちは、駆除しましょうか……」
柘榴の呟きをが聞こえた探索者が顔を青くしたが、怖いもの知らずの子供たちは次第にわらわらと柘榴に集り飛びついてきた。
普通の見知らぬ他人ならばそのようなことはしないが、下手に有名になってしまった柘榴が相手なので着ぐるみに集る感覚で扱われていた。
「くっ、何なのですか!この山猿共は!大人しく山に帰りなさい」
「わーー、動画のまんまだ。口が悪いなざっく」
「ざっく、ざっく抱っこしてーーー」
柘榴が心底嫌そうに言うも、意に介さず纏わりつく子供たちに周りの大人は気が気ではなかった。
「そのような量産型モノアイのような名で呼ぶなと、そこの猿も何か掘ってるように呼ぶのは止めなさい」
人目のある場所で子供たちを〆たりしたら、後で木葉に心の底から軽蔑されたりしてしまうので、その選択肢をとれず苦戦して職員に目で助けを求めるが逸らされてしまった。
よじ登っても姿勢が崩れない柘榴は初めの子供が頭の上まで来ると、次々続いてあっという間に子供たちに埋もれて見えなくなってしまった。
柘榴が子供たちに手出しができないと分かると、周囲の人間も珍しい光景を写真や動画に撮ったりしていた。
「おのれーーーっ!人間どもめーーーっ!」
その騒ぎは子供たちの親が顔面蒼白になって引きはがして謝りながら逃げ去るまで続いた。
子供たちが去った後にはダンジョンを攻略した際にも見せなかった疲労感を表して、フルラウンド闘ったボクサーのようになっていた。
そんな時に木葉達がダンジョンから出てくる姿が見えた。
柘榴は先ほどまでの疲労困憊っぷりが嘘だったように取り繕って歩み寄る。
「マスター、お帰…り……な…………。マスターそこの馬の骨はどこのどなたですか?」
澄まし顔をしていた柘榴だがある者を目に入れると、顔に影が差して表情が固まった。
「え、セレスタのこと?柘榴は知ってるでしょ?」
「いいえ、私が言っているのはそちらの一筆書きが出来そうな顔のヤツDEATH」
そう言って柘榴が震える指をさしたのは、先ほど卵から生まれたばかりのウッドゴーレムであった。
指を差された当ゴーレムは良く分からないようで無反応であったが……。
「あ、この子ね。さっきフィールドボスっぽい魔物を倒したら卵がドロップしてそこから生まれたんだよ」
「そうですか。うちでは飼えませんので、元居た場所に返して来てください」
「ええっ、なんで!?せっかくのテイムモンスターだよ。それに生まれたばかりなのに可哀そうだよ!」
「……佳未亜がゴーレムアレルギーなのです」
「うん。それは嘘だよ。お母さんゴーレムって柘榴にしかあったことないよ」
「ちっ。……健がゴーレムに尻を割られたトラウマがあるので」
「それやったの柘榴だ!?」
入退場口付近で騒いでいれば当然人の目を集めるので、柘榴と木葉が言い合っているところには野次馬が集まってきていた。
「これ何の騒ぎ?」
「あのお嬢ちゃんがゴーレムをテイムしたらしいんだけど、あのメイドが返して来いっていってるんだ」
「ペット拾ってきた子供か?お、あれってざっくじゃん」
「ざっく?」
「ほら魔術を広めたゴーレムの」
「あーあの…」
人が集まってきて木葉は居心地が悪そうにしているが、柘榴がウッドゴーレムのテイムを認めないので抜け出すに抜け出せない。
「もー、どうしてそんなにこの子の事嫌がるの?柘榴の弟みたいなものでしょ!」
木葉の確信をつく疑問に柘榴は俯いて押し黙り、やがて顔を上げて訴える。
「マスター!ゴーレムハーレムなんて許しませんって言ったではないですか!浮気ですか!?私にはもう飽きてしまったのですね!?」
((((((めんどくせー!?))))))
観衆の心は一つになった。
「あー、なるほど。わたし達みたいな人族が木葉と仲良くしてもなんとも思わないけど……ゴーレムだと嫉妬対象なのね。今は………ね。」
一歩外に逃れていた依和那は観察して何となく柘榴の精神的な急所を理解が出来た。
要するに柘榴は木葉に近づく人間、異世界人は害がなければ特に構わないし、従魔もゴーレム以外であれば構わないのであろうが、ゴーレムだけは己1体でなければ駄目という事だろう。
(うん。面倒くさいわね)
あーだこーだと言い合いが続くが、意見が平行線をたどり埒が明かないと判断した木葉は最終手段を使用する。柘榴の傍に歩み寄り、前掛けをちょこっと掴み上目遣いで見上げた。
「連れて帰っちゃダメ?」
「ぐっ!…………………………………………あくまで私が姉ですからね」
それだけ言うと柘榴は崩れ落ちた。効果はてきめんだ!
「「「「「『ちょろっ!?』」」」」」
観衆の心ーーー否、声は一つになった。
すぐ復活した柘榴は、気を取り直してウッドゴーレムを見回して見下すように嗤う。
「ふんっ、丸太を組んだだけの武骨な姿など美しくありません。来なさい!」
「woooood!!」
そう言って抵抗するウッドゴーレムを縛り上げて抱え、子供たちの襲来から見捨てたことをつついてギルドから部屋を無理矢理借りて中にこもった。
「大丈夫かなぁ?」
一度ウッドゴーレムを連れることに了承した以上は壊してしまったりはしないだろうが、一抹の不安がよぎり心配そうな顔で柘榴が入った扉を見る。
ゴギンッ!ガリガリガリッ!ヂリヂリヂリヂリッ!
中から盛大な物音が聞こえてきて、全員が中でなにが起こっているのか気になっていた。
やがて物音がやむと、扉が開き中から柘榴が出てきた。
「あの子は?あの子は無事なの?」
まるでわが子を攫われた親の様に柘榴に詰め寄るが、手のひらで顔を押さえられて離される。
「マスターは私の事をなんだと思っているのでしょうか?まあいいですが、出てきなさい」
柘榴が部屋の中に呼びかけると、扉の枠に5本の指が掛かった。
「え?」
そして、中から現れたのはまるでピキピキピーンなパイロットが乗りそうな外見になっていた。
「「「「「ガン〇ムかよっ!!」」」」」
今日の観衆はツッコミが激しかった。




