第40話 ゴーレムの主、〇〇〇〇を拾う
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セレスタの目の前で倒木ーーー否、倒木と思われていたモノから堆積した土や苔が落ちると、中から黒々とした丸太を組み合わせた5m程もある辛うじて人型に見える存在が現れた。
それは、顔に当たる部分の中央にある洞に灯った緑の光をセレスタの方に向けた。
『きゃあああああああっ!』
セレスタは驚きと恐怖で思わず悲鳴を上げてしまったが、それが木の巨人を刺激してしまったのか丸太のような、というか丸太そのものの腕を振り上げる。
「セレスタっ!」
事態に気づいた木葉と依和那が駆けだすが、人型が腕を振りまわす方が速そうであった。
しかし、絶望的な顔になる2人の横を小さい人影が駆け抜ける。
「「ざくろちゃんっ!」」
探索用ざくろちゃんが猛烈な速さで盾を構えたままセレスタを庇い、人型の腕に飛び上がって突撃する。
盾と人型の腕がぶつかると硬質な音を立てて柘榴ちゃんが弾かれて地面に打ち落とされて転がる。しかし、人型の腕も上方に軌道を逸らされてセレスタの頭上を通り抜けていった。
我に返ったセレスタはその隙を見逃さず後退して、木葉達と合流した。
「セレスタ、無事でよかった」
『ざくろちゃんのお陰で命拾いしましたわ』
合流して無事を確かめ合っているところに転がっていった柘榴ちゃんも駆け寄った。
『ざくろちゃん、ありがとうございました』
「ざくろちゃん、セレスタを助けてくれてありがと。それにしてもあれって……」
「形だけならウッドゴーレムよね」
2人は人型を警戒しながら事前に調べていた魔物の情報から近いものに当たりをつける。
「だけど、普通のウッドゴーレムなら2mくらいだよね。あれ、大きすぎない?色も黒いし」
「成長したんじゃない?寝る子は良く育つっていうしね。あと、日光浴が趣味みたいだから日焼けしたんでしょ!」
顔を引き攣らせながら言う木葉に、同じく顔を引き攣らせた依和那が軽口を返す。もっとも、声が少し震えていたので強がりと丸わかりであったが。
『わたくしもこのような個体は見たことはありませんがウッドゴーレムの特異種でしょうか?』
「フィールドボスかイレギュラーってことね」
ウッドゴーレムから目を放さず後退をしていたが、体勢を立て直したウッドゴーレムが一行目掛けて走り出した。
「速い!っていうか歩幅が大きいんだ!逃げても追いつかれちゃうよ」
「ってことは、戦うしかないわね」
『ええ、そうですわね』
一行は覚悟を決めると戦闘態勢をとり、セレスタが先陣を切りシェキナーを撃つが、特異種のウッドゴーレムにはわずかな傷をつけることしか出来なかった。
標的がセレスタになったのを察した柘榴ちゃんがウッドゴーレムの足にシールドバッシュを仕掛けて注意を引く。
「ざくろちゃん、そのままタゲをとって。皆、出し惜しみをしている余裕なんてないから全力で行くよ。セレスタ、精霊魔弾で肩の関節をお願い。あたしと依和那はそれぞれの膝関節を攻撃するよ」
「ええ」『分かりましたわ』
ざくろちゃん目掛けて腕を振りかぶった時をや振り下ろした時を狙って、セレスタは火の精霊魔弾を撃ち込んでいくと通常の魔弾と違い命中した箇所が焦げて欠片が落ちる。
「起動」「起動」「起動」「起動」
木葉はウッドゴーレムの周りを走り回り、四方からクラフトソーサリーで風の刃を放ってウッドゴーレムの右膝を削いでいく。
「起動」
依和那は左膝目掛けて走りながら、剣に火の付与をして勢いのまま斬りつける。幾度となく斬りつけると傷が大きくなり傷の周辺から水分が無くなってきて動きがぎこちなくなってきた。
それでも決定打にはならず走り回って息が切れ始めた木葉にウッドゴーレムが腕を振るうと、庇ったざくろちゃんごと木葉は吹き飛ばされた。
「ぐはっ」
「木葉っ!」
吹き飛んだ木葉は地面を撥ねながら体勢を整えて着地する。ざくろちゃんが庇ったおかげで軽症で済んだようだった。
「大丈夫!」
体勢を整えた木葉が見たウッドゴーレムの方も無傷ではなかった。木葉を吹き飛ばした際にセレスタに攻撃をされて限界を迎えた右腕が肩から捥げており、膝のダメージも大きいようで動きが鈍くなっていた。
さら依和那が攻撃を加えると、足を踏み出した拍子に左膝が砕けてウッドゴーレムは前のめりに倒れた。
「とりあえず、ほぼ動きを封じることが出来たけど、普通のウッドゴーレムと同じく目のような部分が弱点でいいのかな?」
「とりあえず、そこを攻撃しましょ。ほかに心当たりもないしね。ダメなら逃げればいいでしょ」
「うん、そうだね。身体強化を使うから依和那、火のカードをちょうだい」
「分かったわ。まだ左腕はあるんだから気をつけてね」
依和那からクラフトソーサリーを受取り、身体強化を発動させて両手のナイフに火を付与してウッドゴーレムの顔を目掛けて駆けると目を横一文字に焼きながら斬り裂く。
一撃では動きが止まらなかったので、左腕を搔い潜りながら幾度も斬り裂くと目から光が消えて、ついにウッドゴーレムの動きが止まり沈黙した。
木葉はそれでも油断なく身構えていたが、しばらくしてウッドゴーレムが完全に停止していると判断すると息を吐きながら構えを解いた。
「やったわね木葉」
『やりましたわね木葉さん』
駆け寄ってきた2人も強敵との戦いに勝利したことに喜びを隠さず、かけた勢いそのままに木葉に抱き着きもみくちゃにする。
「あぶぶぶぶぶぶ」
木葉がもみくちゃにされているとウッドゴーレムが光って消えていき、ドロップアイテムが残される。
ウッドゴーレムが消えたその場には、魔石と太めの枝が3本と楕円形の物体が残されていた。
それを見た3人とも頭に疑問符が浮いた。
「枝は………素材かな?こっちはなんだろ………卵みたいだけど」
「従魔の卵がドロップした話は聞いたことあるけど、さすがに木から卵が産まれるなんていくらファンタジーでもないわよ」
「そうだよね。とりあえず持って帰ろうか」
木葉は枝をマジックバッグにしまい込み、卵のようなものに手を伸ばす。
「ひゃっ?」
木葉を卵のようなものを掴むと驚きの声を上げた。
『どうされたのですか?』
木葉の反応を不思議に思いセレスタが聞くが、木葉は戸惑ったように卵のようなものを地面に置きなおす。
「う、うん。なんか、中で動いていたような感覚があったの」
「ええっ、本当の卵だったの!?木って卵から生まれるの!?それともゴーレムが卵から生まれるの!?」
その言葉に木葉とセレスタの脳裏には卵をパカッと開けて、「至高っ!」と鳴き声を上げるゴーレムの姿が思い浮かんだ。
「『捨てましょう』」
「ダメだよ!いい子かもしれないでしょ」
即断即決で廃棄を奨めるの2人に対して木葉が1人反対するが、柘榴への擁護はなかった。
卵をぎゅっと抱えるのを見て仕方がないといった雰囲気を出すが、腕の中の卵が震えていることに気づいた。
「あれ、なんか中から叩いているような感触が……」
木葉も気づいたようで視線を腕の中に落とすと、卵の表面に罅が入っていた。
「うわわわ、う、生まれるっ!」
「そういえばドロップの卵って人の手で触れるとすぐ生まれちゃうから、持ち帰るなら専用の道具が必要だったわね」
「そ、そうだったの~~っ!あああっ!」
そうこうしているうちに罅は大きく広がっていって、卵の上部当たりの殻が砕けて落ちた。
木葉達3人は固唾をのんでその様子を見守っていると……
「wood」
ぴょこんと擬音が聞こえそうな仕草で先ほどまで戦っていたゴーレムを手のひらサイズにしたような魔物が顔を出した。ボス個体との違いは大きさと頭から1本枝が生えているくらいだろうか。
「ほんとに卵からゴーレムが生まれたよおおおっ!」
「鳴き声が安直すぎるでしょっ!」
『あら?なんだか大きくなってませんか?』
「ほんとだよっ!」
慌ててウッドゴーレムを地面に降ろすと、みるみる大きくなって1m程になって止まった。
「woooood」
大きくなったウッドゴーレムは黙って木葉を見つめている。
「……この子、どうしようか?」
「……連れて帰るしかないでしょ」
「……そうだよね」
木葉は連れ帰った後の先住ゴーレムの反応を想像して、ため息を吐いた。
次回、修羅場!




