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第4話 ゴーレム、装備を作る

ご来店いただき誠にありがとうございます。

「ううぅ。ひどい目にあったよう。柘榴はちゃっかり逃げてるし」


 リンゴの果汁を浴びた木葉は全身から甘いにおいをさせながら、ジト目で柘榴を見つめた。

 しばらく膨れていたが、やがて気を取り直し、柘榴に今の魔術について推測を述べる。


「ねぇ柘榴。もしかして、今のって強化魔術ってやつかな?」


「ええ、そうです。これでも必要ありません「いる!」か?」


 木葉が明らかに興味を持った様子であったので、勿体つけてみると食い気味反応された。


「それは僥倖です。しかし、マスター。臭いので近寄らないでください」


「柘榴のせいだよねっ!」


「いえ、リンゴの匂いだけならいいのですが、気付いていないのですか?マスターは今、汗と血と尿とリンゴの匂いが混ざって、かなりヤバめの臭いを放っています」


「えっ?……あっ!」


 言われた木葉は心当たりを思い出し、羞恥に顔が真っ赤になり臭いを飛ばそうと手をバタバタ振る。

 ひとしきりその姿を堪能した柘榴は、魔術で水球を出す。

  

「とりあえずマスターを洗いますので、脱いでください」


「えっ、ここで?人が来るかもしれないよ」


「その運が悪い下等生物は消えてもらいますので、問題ありません」


「問題しかないよっ!」


 他人の命を路傍の石くらいにしか思っていないメイドに木葉が突っ込むが、面倒くさくなった柘榴は木葉を無理矢理剥き、水球に投げ入れ洗濯機のように、わずかな間回転させると目を回した木葉を回転の勢いのまま放りだす。


「うきゅっ」


 放り出された木葉に柘榴が、例のごとくスカートから取り出したローブを被せ、ドライヤーのような魔道具を渡すと、自分は布や皮などを取り出してごそごそと作業を始めた。


「ひどい目にあったよ~。……それで、何をやってるの?」


「マスターの装備を製作して……はっ!もしや、ローブ1枚で出歩くことをお望みでしたか。マスターがそのような趣味をお持ちとは、この至高の私のセンサーをもってしても見抜けませんでした」


「ないよっ、そんな趣味!ーーわ、わぁい嬉しいな。……あ、でも、あたしのサイズは分かるの?」


 特殊性癖扱いされそうになり、焦る木葉がふと思いついて疑問を投げる。


「剥いた時に測りました。至高の私からすれば、サイズの把握など造作もないことです。すぐ作製いたしますので、マスターはしばらく遊んでいてください」


 柘榴に、言外に邪魔といわれた木葉はしばらく柘榴の作業を観察する。


 魔術も使っているのか、時折光ったりする作業を横目で見ながら、木葉は柘榴について考える。

 

 (どうして柘榴は3層に居たんだろう。あの怪物もだけど、隠し部屋だからと考えても今まで聞いたことのある噂話よりあの怪物は強すぎだし、それに勝つ柘榴はもっと強いってことだよね。といっても、あたしは中層以降なんて知らないんだけど……。柘榴に聞いたら教えてくれるかな?)


「あれ?そういえば今何時だろう?」


 木葉が時間を気にして左腕を見るが、腕時計がないことに気づいき、周囲を見渡すと人間の腕が落ちていることに気づいた。

 

「腕ぇ!さ、殺人事件?逮捕される?金○一?あ、もしかして、あれって、あたしの左腕かな?といことはあたしの腕って繋げたんじゃなくて生えたの?うーん。また柘榴の謎が増えちゃったな」


 謎はすべて解けた。が、また謎が増えた。


 恐る恐る近づいて見てみるも、断面を見て吐きそうになったりしたけど、我慢をして落ちてる腕から時計を外して今の左腕に着ける。


「そういえば、あたしかなり重症だったはずなのに全然傷がないし。どうやって助けてくれたんだろう」


 柘榴にツッコミで忙しかったので、今まで疑問が浮かんでいなかった事柄に今更気付いた。


「そのあたりは後で聞くとして、今は何時かな?ーーー結構いい時間になってる。装備が出来たら帰ろう。柘榴のことお母さん達になんて説明しよう。あの部屋にもう一人は厳しいよねぇ」


 ぐるぐるとしばらく考えていたところで、不意に柘榴が立ち上がる。つられて、視線を向けると手に服のようなものを持っていた。


「お待たせしました、痴女マスター。装備が出来ましたのでこちらに。まあ、目覚めてしまってのでしたら、無理にとは言いませんが」


「痴女じゃないしっ、目覚めてもいないよっ!」


 痴女呼ばわりを否定しながら柘榴の方へ寄ると、装備一式を手渡される。

 下着などもあり、わずかな時間で作ったとは思えないものであった。


「即興の品ではありますが、今のマスターには十二分すぎるでしょう」


「う、うん。ありがとう」


 ダンジョン内で着替えることには抵抗があったが、隠れる場所などはなかったので、仕方なくその場で着始める。一通り装備を着けると、木葉の身長が150cmほどと小柄なこともあって、いかにもシーフ少女というような姿になっていた。上着はシャツに半そでジャケット、下はショートパンツにニーハイとブーツ、腕には手甲と指ぬきグローブをしており、童顔とふわりとウェーブしたセミロングの髪をポニーテールにしており、その手の紳士には受けそうな恰好だ。


「わぁ……これ、動きやすいよ。だけど、軽装過ぎないかな?やっぱり、皮鎧くらいあった方が…」


「皮鎧というと、あのゴミですか?」


 そういって柘榴が指をさした方には、先ほど剥かれたときに投げ捨てられた半壊し、血に塗れた皮鎧があった。

 それを見た木葉は、お小遣いを貯めて中古で安く買った皮鎧の姿にしょんぼりした。


「心配されなくても、マスターの装備はあのような物など比べ物にならない性能を持っています。服はヘルスパイダーの糸を使用しておりますので、中層程度の魔物ではほつれすら作ることができません……」


 そう言いながら柘榴は、皮鎧に歩み寄ると皮鎧をつまみ上げ、魔術で洗浄・加工し、ポーチにして木葉の腰に付けた。


 形は変わったが、思い出の物をこれからも持っていられることに木葉は喜色を浮かべる。


「ブーツはペガサスとケルピーの皮を使用しており、空中や水面を1回蹴ることができ、クールタイム15秒で再使用可能です。そして、手甲は宝物庫の品で身体強化3倍を10分間発動できます。あ、あとこれが1番重要ですが、パンツは尿を吸収します」


「ゑ?」


「パンツは尿を吸収します」


 途中まで下層モンスター素材の高性能な装備に目を瞬かせていたが、最後の説明に目が点になった木葉に再度告げる。


「オムツっ!?」


 どう考えてもオムツである。オムツ業界に革命が起きる。


「もしかして、うn「言わせないよ!」」


 直感を発揮した木葉が慌てて言葉を遮る。


「もうっ!ふざけてばっかりでっ」


 顔を赤くしてぷりぷりする木葉をしれっとした顔で見ていると、ふと思い出したかのように木葉に武器について尋ねる。


「武器?そんなに高いものじゃなかったけど、ナイフを使っていたんだ。探索者になるって決めたときに、お母さんが買ってくれたんだけど、この部屋を案内させられた時に波賀さん達に取り上げられちゃって……」


「なるほど。でしたら、しばらくこれを使用してください」


 そう言いながら、柘榴はホルダーに入ったナイフを手渡す。因みに、宝物庫は体のどこからでも取り出せるはずだが、スカートから出すのはただの趣向である。


「ありがとう。それじゃ、だいぶ時間経っちゃったし帰ろうか」


 オピオタウロスのドロップを拾いながら言う木葉に柘榴が頷きを返す。


 ダンジョン内ではドロップした肉は腐らないが、包があるわけではないので当然そのままリュックにいれれば汚れる。そのため、食材狙いの探索者は袋など仕訳けられるものを持っていたりするが、食材の出る階層に縁がない木葉はそのようなものは持っていない。


 木葉がちらっと柘榴を見ると、言いたいことを察した柘榴は小さなバッグを取り出す。


 塊肉に対してかなり小さく、ポシェットくらいのバッグだった。しかし、愛読書たちから予習した知識より導き出した推測を口にする。


「もしかしてだけど、それってマジックバッグかな?」


「ええ、そうです」


「やっぱり……」


 バッグを差し出されて受け取ると悩むような顔をしたが、考えることをやめてドロップを収納する。収納が終わり部屋を出ていき、柘榴もそれに続いた。

木葉にさえぎられた言葉

柘榴「う○この分解も入れるべきでしたか」


ダンジョンのトイレ事情。

ダンジョンにはトイレがないので、垂れ流しです。

しばらくすればダンジョンに吸収されるので、置いて行っても問題なありません。

セーフティーエリアで排泄場所を暗黙の了解で決めて隠しながら用をたします。

あとは生活魔法にはテンプレのクリーンで処理したり、吸収されるまでそのままにしたりしています。

ですので、実は柘榴が作ったものは探索者待望の品だったりします。

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