第35話 ゴーレム、塩対応をする
ご来店いただき誠にありがとうございます。
血塗れ爺のそり(仮)で飛ぶとあっという間にダンジョンの入口まで戻ることが出来た。
「空を飛ぶと早かったねえ」
「途中でな何か轢いてたわよね…」
空の領域を侵された飛行種の魔物が山頂の方から飛んできたが、頑丈さを強化したそりであえなく蹴散らされていた。蹴散らされて四散していく魔物を間近で見てしまった依和那は顔を青ざめさせていた。
ともあれ、時短で戻ってこれたので急いで退場の手続きをして、ギルドを出ようとしたところで声が掛かった。
「あの、すみません。柘榴さんが背負われているのは遭難者の方でしょうか?」
エルフは柘榴が背負っていたが、探検帽を被せて耳を隠しているので遭難者と思われているようだ。声を掛けてきた職員はエルフの服装を見て訝しげであるが、さすがにエルフとは思っていないようであった。
「いいえ、こちらはパーティメンバーです。疲れて眠ってしまったので負ぶっているのです」
「そうですか。………確か、咲乃様のパーティは貴女も入れて3人でしたかと思いますが?」
「新人です」
追及されても息をするように法螺を吹く………が。
「貴方達ほど注目されているパーティに新人が入っていたのでしたら、すぐ噂になりますよ。それに、入場するときは3人だったと確認されています」
「ちっ」
簡単に見破られて舌打ちをするが、目の前の職員が見覚えのある人物であることに気づいた。
「貴女は確か、名古屋の?」
「覚えていてくれましたか。普段受付をさせていただいていますのに、覚えてないと言われたらショックを受けてしまう処でした」
「名前は………佐藤花子でしたか」
「幸村真菜です」
「そうそう、その真田幸村がなぜここに」
「幸村真菜です。貴方達が松本に来られたと連絡がありましたので、フォローの為に派遣されました」
歩く火薬庫と思われている木葉のパーティ(の中の1体)のために、派遣されてきたようであった。
連絡が来てからその日のうちに強行軍で現地入りをさせられたのだろう。よく見ると頬と目元がひくついていた。
柘榴は幸村にずいと顔を近づけると、耳元に囁く。
「ちょっとした厄介ごとです。詳細は明日に説明しましょう。明日、宿まで来てください」
「分かりました。後で宿の名前をご連絡ください」
幸村は来てよかったというべきか、また厄介ごとかと悲しむべきか悩ましい表情になる。
とりあえず背中の厄介ごとを早めに人目につかない場所に放り込みたかった柘榴は幸村との話を切り上げて木葉達を促して宿に向かった。
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宿に着いた一行は宿に人数が増えることに了承を取り付けて、割り当てられた部屋へ向かった。
柘榴は古い板張りの床や畳は歩けないので、天然温泉付きのホテルでの宿泊である。
一先ずエルフをベッドに寝かして柘榴は見張りに残り、木葉と依和那は夕食を食べに向かう。
「う、ううん」
しばらくすると、エルフがうめき声を漏らして目が開きかける。
「目を覚ますならマスター達が戻ってからにしてください。面倒くさいので」
ずどむっ!
「ふぎゅ」
哀れ目覚めかけたエルフは脳天に一撃を入れられて、再び夢の世界へと旅立った。
その後夕食を食べた木葉達が戻ってきたが、まだ眠っている(眠らされた)ので、温泉に入りに行った。入浴の描写はないが木葉はつるつるストン、依和那ぐいっきゅっぐいっとである。
改めて木葉達が戻ってきたので、柘榴はエルフを揺すって起こそうとする。
「別に無理に起こさなくてもいいよ。ずっと封印?されていたのなら身体も心配だし」
「あの封印は時が止まっている方式でしたので、封印による体調の悪化はないと思います」
しばらく揺するとむずかりながらもエルフが目を覚ました。
「%¥$#*/@&$+?」
目を開けると目線だけで、あたりを見回して木葉達を認めるとがばりと身体を起こす。
「~~~~~!!」
急に動いたせいか、頭を押さえて蹲る。頭頂部が膨らんでいるように感じるのは気のせいだろう。
「え、えーと、あいきゃんすぴーくじゃぱん」
木葉の話せる言語は日本語ですらなかった。
「木葉、たぶんこの世界の言葉じゃないのよ」
「そっか。うーん。どうしよ。……ちら」
視線を向けられた柘榴は宝物庫から取り出したものを見せた。
それは孔をあけられたこんにゃくだった。
「はい。ほんやーーー」
べしっ
表情が無になった木葉に叩き落された。
「柘榴、真面目にやって」
「ハイ、カシコマリマシタ」
昼間の説教を引きずっている柘榴は、片言になりながらペンダントを取り出してエルフが抵抗する間もなく首に掛けた。因みにこんにゃくはただのこんにゃくで孔に理由はない。ないのだ。
『っ!!何をするのですか!』
「あ、言葉が分かる」
『これだから人間は……え?』
「これは相互に意志を伝達する魔道具です。意志の伝達……ですので、言葉自体が分からなくても会話が出来るものです」
突如言葉が分かるようになり混乱するエルフを尻目に淡々と説明をする。
「そっか。初めまして。あたしは咲乃木葉」
「姫宮依和那よ。よろしくね」
会話が出来るようになったので、早速挨拶をする2人。
『あ、わたくしはストアラス氏族の族長の娘セレスタですわ』
勢いに押されて思わず名乗り返すセレスタ。しかし、少しずつ記憶が整理されて、ハッと気づくと近くにいた木葉を掴む。
『教えてくださいまし!人間が生きているという事は世界は滅びなかったのですか?森は?お父様は無事なのですか?』
「わ?わ?わ?」
鬼気迫る表情で捲し立てられて、木葉が困惑して慌てた顔して助けを求める。
「てい」
『ぶふぉっ』
柘榴が一足飛びに距離を詰めてセレスタにビンタをかました。ビンタを食らったセレスタはもんどりうって地面に落ちた。
「容赦なさすぎでしょ柘榴」
戦慄した表情で柘榴を見ながら言うと、当然ですという顔を返されて押し黙った。柘榴は地面で顔を打って悶絶しているセレスタの傍に近寄る。
「いいですか、落ち着いて聞いてください。貴女の世界は滅びました」
「鬼かあんたは!!」
「ゴーレムです。隠す必要もないでしょう。どうあっても直ぐ分かることです」
「そうだとしてもっ!言い方ってものがあるでしょ!」
地団駄を踏んで責める依和那、慌ててセレスタを介抱に走る木葉を眺めながら柘榴が発した言葉が脳内に染みていって理解する。
『ああぁ、わたくしの故郷は、大切な人たちはもういないのですね』
「そのとーーーもがもが」
追い打ちを掛けようとする柘榴の口を依和那が塞いで続きを止める。
良心を持ち合わせる2人は沈痛な表情で、落ち込むセレスタを見る。
『あなたたちは人間なのにわたくしに同情をするのですね。そちらは……心など持ち合わせていないようですが……』
良心組2人には見定めるような、希うような顔で見るが、柘榴には冷たい視線を向けて皮肉を言う。しかし、木葉と依和那はそれに反応した。
「セレスタさん。柘榴は心がないんじゃないよ!すごく邪悪なだけなんだよ!」
「そうよ。心がない方がまだましっていうものよ!」
味方から背中から撃たれた柘榴はよろめいて四つん這いになった。完全に日頃の行いの賜物で、自業自得なのであるが。
『ふふっ。わたくしの世界の事、この世界の事、貴方達の事、色々聞きたいことはございますわ。ですが、すみません、少し一人にしていただけますか』
切なげな表情で願うセレスタを慮って、部屋から出ようとする2人の横をすり抜けてセレスタの襟首を摘まんで持ち上げると部屋の外に放り捨てた。
『え?』
茫然とするセレスタを尻目に扉を閉めた。これには部屋から出ようとしていた2人もあっけにとられてしばし呆けていたが、状況を飲み込み気を持ち直すと、
「「柘榴ーーーーーーーっ!!」」
特大の雷を落とした。
柘榴は別に邪悪ではないんですよ。
ただ、好意がある者とそれ以外に対する落差が大きいだけなんですよ~(必死)
セレスタの口調はぶっきらぼうかですわで迷いました。




