第33話 ゴーレム、エンカウントする
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休憩を終えた一行は装備を整え直して、柘榴もいつもの格好で頭に探検帽を被ってカメラを構えていた。
木葉と依和那はそんな柘榴の奇行に慣れており、もはや何も言わないので柘榴はどことなく物足りなそうであった。
「今回は私が先頭を行きますので、マスターは後ろから指示をしてください」
「分かったよ」
本来なら木葉達に経験を積ませたいところであるが、帰還が遅くなってしまうので今回は柘榴が露払いをして進むことにした。
「投射ー鋼矢、投射ー鋼矢、投射ー鋼矢、投射ー鋼矢」
「「「「GEEEYAAAAAAAA」」」」
カメラをまわしながら見敵必殺で魔物を倒して進んで行く柘榴の後ろを歩きながら、2人は柘榴の動きをよく観察していた。
「今までは大技ばかり見ていたからなんかすごいって感想だけだったけど、こう1つ1つは出来そうなことをされると実力の差が良くわかるわね」
「ほんと!あの索敵何百m先の魔物を見つけてるけど、どうやってるのかな?あたしも出来るかな?後で聞いて見よ」
オークのモンスターハウスの時は目の前の敵で精いっぱいでそれどころではなく、天使戦の時は大技で一掃しており蹂躙という感じの上、日頃は木葉達に合わせているので、実のところ柘榴がまともに戦っている場面はギルドでの乱闘くらいしか見たことがなかった。
武術の類ではないが身のこなしが巧く、無駄のない動きで敵を屠る柘榴の動きを取り入れるべく木葉と依和那は周りが目に入らないくらい良く観察していた。
成長著しい今は2人とも学ぶことを楽しめる時期でもあった。
そんな2人に気づいている柘榴は苦笑しながら、油断していることを後でお説教をしなければと考えているーーー
(さすがは至高の私です。背に受ける賞賛の視線が心地いい)
というようなことはなく、あっちもこっちも色々ダメであった。
賞賛の視線が心地よくてサービスで、狙撃だけでなくナイフや剣で戦ってみたりして2人が使っている武器の動きも見せたりしながら奥へ奥へと進んでいたところで、木葉が止める。
「うーん。なんかここのあたりが気になるんだけれど………大きな木があるだけだね」
木葉が足を止めた場所は今までと同じ森の中であるが、1本だけ幹の直径が10mはありそうな巨大な木がある場所であった。
今度は木葉を先頭にして木葉が気になるところを調査していくが、木を1周しても特に何も見つからなかった。
「やっぱり気のせいだったのかな?ごめんね。無駄足を踏ませて」
申し訳なさそうに木葉が言うが、柘榴はかぶりを振って木を見据える。
「いいえ、1本だけある巨大な木なんていかにも怪しいではないですか。それにーーー」
「この木はこれだけ大きいのに遠くからは見えていなかったのよ」
柘榴が話しかけていたことを依和那が引き継いで続けた。
一瞬セリフを取られたことに愕然としたが、すぐさま気を取り直して木を調べ始めた。
「!」
木に叩いてみると中に空洞が確認できたので幹が薄い所の前に立つとカメラを仕舞って、拳を背中に鬼を背負った傷だらけのヤ○ザの様に引き絞る。
「ちょ、まっーーー」
「い、いきなりーーー」
どっごおぉぉぉぉぉぉぉぉん!
2人が止める間もなく幹を殴りつけると、殴られた箇所が砕け散り木の破片と土煙に包まれた。
「げほっ、げほっ、いきなり無茶しないでよ柘榴」
むせる依和那が文句を言うが、柘榴からの返答はなかった。
「柘榴?」
返答がなかったので何か起こったのかと不安が頭をよぎったが、土煙が晴れてくると木の孔の中に頭を突っ込んでいる柘榴が確認できたのでほっとして文句を言おうと近づいた。
「もぉ~柘榴、そういうことをするならーーー」
どっごおぉぉぉぉぉぉぉぉん!
「ぶっふぇあっ!」
「やると思ったよ」
土煙を間近で喰らって再びむせる依和那は鼻水も出ていて、美少女が色々台無しな顔だった。その後ろで木葉は柘榴を警戒して近づかなかったので、被害を免れていた。
ちゃっかり逃れていた木葉を依和那が恨めし気に見て木葉があせあせするのを背景に、土煙が晴れてくると幹に大穴を開けた巨木が姿を見せた。
巨木の前に立っている柘榴は既に浄化をかけているのか、汚れのないメイド服であるが木葉と依和那は土煙で汚れており、依和那に至っては全身が灰色になっていた。
「ざ~く~ろ~~~~」
「おや、どうしたのですか依和那。まるでコントの様に全身真っ白ではないですか」
「誰のせいよっ!」
プンスコ怒る依和那を一通り堪能したら2人に浄化を掛けて綺麗にするが、まだ依和那はご機嫌ナナメであった。
「さてお2人とも、こちらを見てください」
それをさておいて真面目な表情をした柘榴は木に開けた大穴に2人を誘うと、その中に視線を向けた。
「っ!これっ!?」
「奥が見えないよ……」
木の幹に空いた穴から中を覗き込むと、下に向かって穴が伸びており奥は光が届かず見えない。木葉が石を落としてみるが、音が聞こえなかったことからかなりの深さがあるようだった。
穴の深さを想像して木葉と依和那が唾を飲み下がろうとしたところで、柘榴が腰を掴み抱え上げた。
「「え……?」」
「行きますよ」
そう言うと柘榴は2人を抱えて穴の中に躍り込んだ。
「「ぎゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」」
突然の浮遊感の後の落下の感覚に、盛大に絶叫を上げながら落ちて行った。
しばらく落下を続けるとやがて、下の方にぼんやりとした光が見えてきた。
「重囲ー重力ー軽減」
地面が視認出来たところで、周囲の重力を軽減して落下してふわりと地に足をつけた。
「「…………………………………………」」
「おや?」
柘榴が静かになっている2人を見ると、白目を剥いて気絶していた。
一先ず周囲に危険がないことを確認すると2人を下ろして、改めて周囲を見回した。
かなり深いところまで降りてきており、ここまでは木の根も伸びていないのか、周りは岩肌のみが見える洞窟のような場所であった。
1箇所だけ横穴が空いており、その奥からぼんやりとした光が漏れているようであった。
「これは………これが、マスターの才能なのかもしれませんね。さて奥には何があるのでしょうか?弟妹機であったらSSRといったところですね。さすがにそこまで都合よくは行かないでしょうが」
そう独り言ちながら柘榴はベッドを取り出して2人をそこに寝かした。乙女を岩の地面に寝かせたりしない出来るゴーレムである。気絶させた元凶であるが。
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「はっ」
目を覚ました依和那は状況が把握できなくて、記憶をたどり柘榴に抱えられて穴から落ちたことを思い出して憤慨し柘榴を探した。
周りを見たら柘榴はすぐに見つかり、先に目覚めたと思しき木葉の前で正座をさせられていた。
「だいたい柘榴はいつもいつもあたしたちを振り回してーーーーー」
よっぽど怖い思いをしたのか珍しく木葉がキレているので、依和那は毒気が抜かれて木葉の怒りが治まるまでしばらくベッドに腰掛けて待っていた。
しばらくお説教が続いたが、しばらくすると気が治った木葉と心持ちやつれた雰囲気の柘榴が依和那の方へ戻ってきた。
「あ、依和那ちゃんも起きてたんだね」
「ええ、木葉にしてはずいぶん怒ってたわね」
「ほんとにもういつもいつも柘榴は小学生みたいにいたずらばっかりでーーー」
「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」
「うわ、あの柘榴が壊れかけのレディオみたいになってる」
しばらくして柘榴が復旧すると、待っている間に2人も気づいていた横穴を再びカメラを回しながら奥に向かって進んで行く。
1本道になっている横穴は周囲に生えている苔が光っており、それは青白い光を放っているが、奥からはまた別の黄色い光が遠くに見えた。
道を抜けるとそこは広めの空間になっていて、中央に木の根が密集しておりその根に包まれるように巨大な琥珀の様な結晶が鎮座していた。
「「っ!」」
それを見て2人は息を呑む。結晶の中には身体を丸めた人のような姿があり、その人の耳は長く尖っていた。
みんな大好きあの種族




