第18話 ゴーレム、主の成長に師匠面する
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ベテランのC級を先頭として、有望株のD級、チートゴーレムでパーティを組んでいるので、上層などは苦も無く進んでいくことが出来るが、今回の目的は木葉に探索を見せること。
木葉は西田中の横について、ダンジョンでの歩き方や索敵の仕方を教えてもらい、そこら辺の石を投擲して牽制したりと節約術と斥候の技術を教えていく。
西田中も娘位の歳の少女に教えることを楽しんでいるらしく、木葉が人懐っこいことも相まってかなり仲良くなっている。
魔物が複数出た時には西田中が先行で撹乱し、依和那が切り込み、柘榴が前衛の隙を埋める。或いは、前衛2人で足止めをし、柘榴の魔術で仕留めるといったパーティプレイを見せる。
才気煥発であるがまだ未熟な依和那にベテランと万能ゴーレムが合わせるという戦闘構成で、急増パーティの割にうまく連携が出来ている。
時折、木葉も交じって教わったことを実践していくが、どんくさい所はあるが覚え自体は悪くなく、基礎鍛錬を続けていけば、成長をしていくことが出来るであろうと感じさせた。これには3人とも内心ほっとしていた。
「んー?」
「どうかしたんですか?」
訝し気な西田中に依和那が尋ねると、自身もあまり確信がないのか首を傾げている。
「な~んか、いつもより魔物に出会う事が多い気がしてな」
気のせいかなと言って、首を振り西田中は先に進む。木葉と依和那はそんな西田中について行き、柘榴は奥を厳しい目で一瞥して後に続く。
その後はさしたる問題もなく、上層の最後である階層ボスの部屋前にたどり着いていた。
「ごくりっ、ここがボス部屋……」
扉を見上げ、初めて訪れるボス部屋に木葉は緊張して息をのむ。が、木葉は思い当たっていないが上層のボスよりよっぽど強い、隠しボスのようなヤツと対面している。
「ああ、ここのボスはホブゴブリンだ。取り巻きも何体か出てくるが大した連携はない。名古屋第2ダンジョン上層は、あんま癖がないからチュートリアルダンジョンって言われているな」
「それではマスターがボスにアタックしてください。先ほどまでの戦闘を思い出していただければ問題ありません」
西田中の説明を聞き柘榴がボスアタックの提案をすると、木葉は少しひるむが意を決して頷く。依和那もここのボスであれば、取り巻きがいなければ大丈夫だろうと思い、特に異論はない。
ボスと戦うことを決めた木葉が扉の方へ歩こうとしたところで、とっさに柘榴が声を掛けた。
「マスター、そんな装備で大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。問題ない」
「なんでわざわざ負けフラグ立てたっ!?」
柘榴と木葉のやり取りに西田中がつっこむが、柘榴は確信犯であるが木葉は天然だ。
「緊張を解そうかと?マスターの装備は防具は高性能ですから油断しなければ大丈夫ですよ」
武器は波賀から取り返した元のナイフを使っているが、ミスリルのナイフも予備で持っている。
気を取り直して、一行はボス部屋へ入り、特に問題なくホブゴブリンを倒した。
木葉も西田中から斥候の立ち回りを学んだことで、足全体で接地するぽてぽてした走りから音を殆ど立てない走りになっており、斥候として少し様になってきていた。
そんな木葉をみて、腕を組んで微笑んでいたゴーレムもいた。働け。
そして、ボスを倒したところに宝箱がドロップしており、人生初の宝箱を前に木葉の目が輝いていた。
そんな木葉を見て自分たちも覚えがあるため、西田中も依和那も微笑ましそうに見守っている。
「あたしが開けていい?」
「パーティ組んだら取り分で揉めないようにその辺のルールを決めとけよ。今日は嬢ちゃんのボス討伐記念だし開けちまってもいいんじゃないか」
「ええ、そうね」
「わーい、天○の剣とか出たりして」
木葉が期待しながら宝箱を開けて、中を覗き込む。
「??なにこれ?」
宝箱の中にあったモノを取り出した木葉の手に、謎の藁人形が握られていた。
「げっ、気味が悪い。釘とか打たれてそう」
「嬢ちゃん、残念だったな。そいつは外れだ。滅多に出ることはないんだが、ギルドの鑑定でも用途不明なんで価値がないやつなんだ」
依和那が嫌そうな顔で言い、西田中が残念そうにすると、木葉も顔を曇らせた。
「そっかぁ、じゃあここに置いて行こうか」
「それを捨てるなんてとんでもない!」
木葉が残念そうに藁人形を置いて行こうとしたところで、柘榴が慌てて止める。
「どうしたの?」
「それは身代わり人形という名のアイテムです。見た目は悪いですが、マスターの身を守るには持っていた方がよろしいかと」
「身代わり人形?」
木葉が不思議そうに繰り返す言葉を聞き、残りの2人は言葉の響きから何となくの効果を予測して冷や汗を流す。
本当に予測した効果であれば、探索者界隈に激震が走る。前回からまだ1週間も経っていないのに。
「はい。身に着けていれば1回だけ致命傷を肩代わりしてくれます。上層でドロップする確率など、ほぼ0%に近いはずですが」
((やっぱりぃ~~~))
「これってそんなにすごい物なんだ。なんで今まで知られていなかったんだろう?」
「致命傷の無効化ーーそれは、いわば生命の創造ともいえます。つまり相応にランクの高いアーティファクトです。今の人類では効果を鑑定することは難しいでしょう。それこそ、手に入れた者が偶然致命傷を負うとか……くらいでなければ」
「そうなんだ。それじゃギルドに教えてあげないとね」
効果を知られたらギルドは欲するだろうし、木葉や西田中はそれぞれの理由で応じるだろう。
「私としてはマスターに持っていて欲しいのですが」
木葉は柘榴の顔を見て朗らかに笑う。
「あたしの事は柘榴が守ってくれるでしょう?」
木葉の言葉に柘榴は胸を押さえてよろめき、2、3歩後ずさると膝をつき息を荒げる。柘榴は呼吸をしていないので、ただのポーズだが。
「マスターのゴーレム誑し!ポンコツ斥候!ちんちくりーん!ゴーレムハーレムなんて禁止です!」
「急な罵倒!?」
語彙力が退化した柘榴に急に罵られた木葉は、ドMではないので普通にショックを受けている。
身代わり人形の効果を聞きショックを受けている残り2人も戦線離脱中だ。特に以前ドロップしたことがあり、その時は捨ててしまっていた西田中は口から魂が出ていた。
「はっ、ずいぶん前に死んじまったタローが川の向こう岸で吠えてたな。あんなに仲良しだったのにこっちに来るなって感じだったぜ」
「それは三途の川では……」
西田中の臨死体験に引きつつ、依和那は藁人形をまじまじと見る。ソロで探索しているため情報に疎く先達からあまり噂話なども聞いたことがないため、藁人形の話は聞いたこともなかったが、他にもこういう効果が知られていない物があるのかもと考えていた。
「あーとりあえずしばらく休憩しようぜ。それで、休憩後に中層で罠解除を教えてやる」
自力である意味致命傷から生還した西田中は、心の中で涙を流しながらこの後の予定を提案する。
「はい!よろしくお願いします」
「ええ、それでいいと思うわ」
「特に問題ないかと」
他の3人から同意を得て、各々休息をとりだす。
西田中が部屋の隅の方へ向かい、依和那は目を逸らすが木葉は首を傾げて依和那に反対側に向けられる。
西田中も戻って、なぜかダンジョンで優雅なティータイムが(柘榴のせいで)始まり、まったりしていたがしばらくすると木葉がもじもじし始める。
「マスター、どうしましたか?」
「え、えっと~……ちょっとごめん」
柘榴のわきを通り抜けようとする木葉を捕まえると他の2人と離れ、パスケースのようなものを取り出し投げるとパタパタとパスケースが展開し物置くらいの大きさの箱になった。
「えっ」
急いでいたのを忘れて呆ける木葉を、箱の扉を開け放り込む。
しばらくして出てきた木葉は呆けたままであったが、柘榴の顔を見ると猛烈な勢いで迫る。
「ちょっと柘榴あれなに?なんでパスケースがトイレになるのっ?」
「「はあっ!?」」
休憩していた2人が木葉の叫びを聞きつけ、駆け寄ってくる。
「ちょちょちょっ!そんなもんがあるならさっき貸してくれてもよかっただろ」
「マスターにオッサンが使用した後のお手洗いを使えと?処しますか」
柘榴に冷たい声で言われて、勢い込んできたおっさんは萎れたおっさんになってしまった。
「まあ、分解と浄化の付与が掛かっていますので気分だけの問題ですが」
さすがに気分だけの問題であるとはいえ、JKに掛かると社会的信用が簡単に失墜してしまうおっさんは三角座りになってしまった。どこかじめっとしていてキノコが生えているように見える。
別に哀れみなどを感じたわけではないが、木葉の教育に差し障りが出ても困るので仕方なしに菌床になっているおっさんに声を掛ける。
「……明日の探索が終わった後の報酬に追加しましょう」
菌床のおっさんが顔を上げ、ぱあっと顔を明るくする。特に可愛くはない。むしろちょっとイラっとした。
おっさんがキノコをはやしている間に、ちゃっかり依和那は用を済ませていた。
ダンジョンはブツが残ることはないが、誰がいるか分からない場所であるため、暗黙のルールで隠れていたすことになっている。しかし、安全地帯は見晴らしがいいので人目が避けやすい所に行くと、魔物や強盗の襲撃の危険やその手の犯罪などが発生するためダンジョンのトイレ事情は命がけかつ野○ョンや野○ソになるので探索者達の長年の悩みでとなっていた。
それが解決する夢のアイテムに3人は大興奮であった。
排泄などない柘榴はその熱量にドン引きしていた。その熱量差はフレイ○ードの右半身と左半身くらいあるだろう。
また一騒動あったが、休憩を終え一行は半数が初めて足を踏み入れる中層にたどり着いた。
裏タイトルはトイレ




