第17話 ゴーレム、ダンジョンに潜る
ご来店いただき誠にありがとうございます。
やっとダンジョンに来ましたヨ。
軽めのランニングから帰ってきて朝食を食べ終えて、まったりしているとインターフォンがなる。
モニターに依和那が映っていたので、木葉がパタパタと走り玄関を開ける。
招かれた依和那がダイニングに来たので、席を勧めてカフェオレを出した。
先日、オピオタウロスの査定が終わり、売却金額が振り込まれ咲乃家の家計が上向きになっていたので食卓も以前よりかは豪華になっている。
「あ、これも美味しい。柘榴さんは給仕が上手ね」
依和那の賞賛に柘榴は当然ですという顔をしてすましていたが、木葉がドヤ顔をして胸を張る。張っても高さは変わらなかったが。
「そう!柘榴は料理も出来るし、家事も上手なんだよ。強いし、色々作れるし、おかげで最近あたし達すっごく助かってるんだよ。これで性格もよければ完璧だね」
木葉が褒めるにつれて、柘榴の眉や口元がぴくぴくと緩みそうになるが、最後の言葉でスンとなり、それを見ていた依和那の頬が引き攣った。
「至高の私は性格も至高であると、マスターの身に刻んであげましょう」
「あふろ、ごふぇんはさい。ゆふしへ」
「誰の頭が鼻毛を伸ばす人ですか?」
木葉は自分の頬を摘まみ伸ばす柘榴に涙目で許しを請うが、ボー○ボ扱いされた柘榴は頬をさらに伸ばしパチンと放す。
「おうっ」
急に放された木葉はよろめいて涙目のまま頬をさする。
それを苦笑してみていた依和那は立ち上がり、戯れている2人に声を掛ける。
「さあ、あんまり遊んでると遅くなっちゃうしそろそろ行かない?」
「うん、そうだね。あたしも1週間頑張ったし、成果を見せちゃうよ」
張り切る木葉に残念なものを見るような顔で見るが、なにも言えずそのままスルーすることにした。先が思いやられてちょっと憂鬱になった柘榴である。
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6日ぶりに名古屋第2ダンジョンに訪れた木葉達は、ギルドの建物に入ると受付に向かう。
柘榴は入場の受付を済ませようとする木葉と依和那を呼び止める。
「少しお待ちください」
「「ん?」」
不思議そうにする2人をよそに受付嬢に話しかける。
柘榴に関しては重要事項として回覧が回っているので、ギルドの職員であれば柘榴のことを知っている。
「鷹柳を呼んでください」
「は、はい。呼んでまいりますので、少々お待ちください」
なので、不躾に用件を告げる柘榴にも即対応をしてくれる。顔を赤らめていたので、柘榴の顔を間近で見てテンパっただけかもしれないが。顔の造作はイイ(造り物)ので。
受付嬢が呼びに行き、しばらく待っているとカウンター外側に鷹柳がやってきた。木葉達の方に歩いてくる鷹柳は、40代前半くらいの年齢の男性を連れていた。
「こんにちは。お待たせいたしました、皆さん」
「ええ」「こんにちは!」「初めまして、姫宮です」
鷹柳の挨拶に3人が返礼したところで、柘榴の視線が連れの男性に向く。
「ところでその者が?」
「はい、彼が柘榴さんのご希望の探索者です」
「「え?」」
柘榴と鷹柳のやり取りにJK2人の頭に疑問符が浮かぶ。
「ああ、この間の騒ぎは見ていたんだが話すのは初めてだな。俺は西田中秀三だ。んでクラスは斥候でC級だ」
西田中の自己紹介に依和那は察したようだが、木葉が良く分かっていないようなので鷹柳が捕捉する。
「先日、柘榴さんが来られて、依頼を出したんですよ。咲乃さんに斥候の技術を教えてくれる探索者を1人募集をかけてくださいって」
「あっ、あの時」
依和那はランニングでばてた木葉を連れてきた時の、用事がこれだと思い至った。
「ああ、ゴーレムの姉ちゃんは怖いが、報酬が良かったんでな。応募が殺到して勝ち取るのが大変だったぜ」
「そうですね。斥候系でC級かD級という条件でしたので、最初から条件外の人たちは悔しがってましたね」
苦笑しながら鷹柳が当時の状況を口にすると、同意するように西田中が疲れたように頷く。
「ホントにな。勝ち取ったはいいけど、周りの目が怖かったぜ。特にB級以上の斥候系のやつらは……マジで」
「それは仕方ないでしょう。マスターに分不相応の技術を教えようとしても、すぐには身につけられませんから。C級から一人前と認められるD級くらい者が持つ技術を教わるのが、今は良いと考えただけです。上層~中層くらいであればそれ位で十分でしょう。マスターの成長速度によってB級以上の出番が来る日が早くなりますよ」
「プレッシャー!?」
周囲の視線が一斉に木葉に向き、青ざめながらオロオロする木葉と、鬼かこいつと言う目で見る鷹柳達をよそにすましているいつもの柘榴である。
暫く談笑して西田中の紹介をして役目を終えた鷹柳は支部長室に戻っていった。3人と1体は改めて受付に向かい手続きをするとダンジョンに入場する。
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ダンジョンに入場した3人と1体はやや開けた場所で西田中が立ち止まったので、つられて足を止める。
「そういえば入る前に聞けばよかったが、嬢ちゃんは何が出来るんだ?」
「えっとね、「マスターはそろそろ漢防御と漢解除を覚えそうです」柘榴っ!?」
「嬢ちゃんは盾職じゃないよな?軽装で、漢防御は良くねえぞ」
「木葉、あなた……まさか、今までずっと」
「どっちもしてないからっ!?」
「論より証拠と言いますし、しばらくマスターの死闘(笑)を見ていただきましょう」
「(笑)ってなに!?」
柘榴の提案に西田中と依和那はこのあたりの階層であればすぐ助けられるしいいかと納得し、木葉は華麗に戦って皆を見返してやると意気込む。
かくして柘榴の提案により、木葉の華麗な死闘(笑)を観戦した結果……。
「やべぇ、どうすればいいんだこれ。依頼受けたの早まったか?」
「一緒にパーティ組んでた時は、わたしが前に出てたから気づかなかったわ。そもそも、わたしが斥候より前に出てるっておかしいわよね。過保護にしすぎていたのかしら?」
西田中と依和那は精神ダメージを受けていた。精神ダメージを与えた当の本人は悩んでいる2人を見て頭に疑問符を浮かべていた。柘榴は同志が増えて心なしか嬉しそうな雰囲気を出している。
柘榴が手を叩いて2人の目を向けさせるとひとさし指を立て、今日までに考えていたこれからの行動を説明する。
「これから罠もある中層に行きます。西田中、貴方はそこで普段の探索を見せてください。まず、マスターはこれまで他者の探索と言うのを殆ど見たことがありませんでした。なまじスキルの力で戦えてるように見えるせいで、それに頼りきりのようでして」
「マジか!今どきは探Tubeとかで配信もあるだろ?」
「うぅ、あたしが今まで使ってたスマホは古すぎて動画とかあまりよく見れなくて……」
少し恥ずかしそうに木葉が告白する。スマホも必要だろうという事で今日までに現行モデルに機種変更している。下層未発見種の買取価格はなかなかにいいお値段だった。
「はー、そういうこともあるんか。分かった。任せとけ」
「ふっ。頬を赤らめたロリを前に張り切るオッサンですか。事案ですね」
「やめてくれ、マジで!社会的に死んじゃうから」
「ロリじゃないもん!」
柘榴の正直な感想は必死な西田中と、ロリ疑惑のJK木葉によって否定された。
しかし、木葉は中学生程度の身長はあるが、どこかほわほわした空気感と言動に残る幼さからロリっぽく見える。
「まあ、細かいことはいいとして、マスターに任せていたら中層に行く前に日が暮れてしまいますので、オッサンと依和那で前衛、私が後衛をしますのでマスターは見ながらついてきてパーティでの探索をするという事を学んでください。そして、時には実践もしてみましょう。いわゆるOJTというやつです」
「俺の呼び名オッサンで固定しちゃうのっ?」
オッサンと呼ばれたおっさんがショックを受けていたが、柘榴はイイことをした風な顔をしている。
「ふふん、光栄に思いなさい。美女美少女に囲まれたオッサンは最強になるみたいですよ。私が読んだ資料ではオッサンと呼ばれた主人公が夢想してハーレムを築いていました」
「夢想してたら、それは唯の妄想だっ!」
言葉の意味を正確に読み取り西田中が叫ぶが、柘榴はどこ吹く風で弓を取り出して後ろに下がる。
「さあさあ、戯れていないで行きますよ」
がっくり肩を落とした西田中を先頭に隊列を組み、一行はダンジョンを進み始める。
なんか連載を書いていると唐突に包丁持ったババアに追いかけられて、アパートの階段を滑り落ちた先でトラックに撥ねられての四散エンドが書きたくなります。




