第12話 ゴーレム、高位探索者を量る(後)
ご来店いただき誠にありがとうございます。
残酷表現がありますので、ご注意ください。
「聞きたいことは聞けたでしょう。さあ、お前たち、行きますよ」
そう言うと、藤堂は男の1人から杖を受け取る。どうやら藤堂は魔法使いのようである。
周囲の男たちも藤堂の言葉に答え、武器や大盾を構え柘榴に相対する。
男たちは盾職のタンクが1人に剣士が2人、盗賊が1人、魔法使いが1人と汎用的にバランスの良いパーティ編成である。
なお、この世界において自己強化のスキルを持つものはいるが、バッファーの職業を発現した者はまだ現れていない。
余談ではあるが、ゆえに木葉は柘榴の強化魔術に驚き、その技術の習得に意欲を見せたという面もある。
「結界ー阻害ー認識」
柘榴が唱えると、半球状の透明な障壁が公園を包む。
「な、これは!?」
「公園内を認識できなくする結界です。これで邪魔も入りませんし、あなた達が助けを呼ぶことも出来ません」
うろたえる男たちに対し、柘榴は軽く説明してスカートの中からナイフを取り出す。
藤堂は警戒して魔法の準備をしているが、周りの男たちはたくし上げられるスカートに目を奪われている。悲しい男のサガである。
柘榴はナイフを逆手に構えると男たちを見据える。
「どうしましたか?かかってこないのですか?貴方達のような下等生物たちは、ヒャッハーと言って掛かってくるのが習わしであったかと思いますが」
「誰が世紀末の雑魚だ!」
男は憤るが闇雲には掛かってこない。侮りもなく油断もしないところは、性根は腐っていてもA級であるという事であろう。
柘榴がひたすら待ちでいると、盾の男が盾に身を隠し顔をわずかに出して突進してきた。それに残りの前衛が続く。
「スラッシュ」
柘榴が突進する男を躱したところに剣士が剣を振り下ろしており、とっさに剣をナイフで受け止める。
剣とナイフで鍔ぜっていると、横合いから投げナイフが飛んできて、躱しながら距離をとる。
「サンダーボルト」
距離をとったところに藤堂の魔法が追撃しており、柘榴はなりふり構わず転がって着弾地点から離れる。
転がった勢いのまま立ち上がった柘榴は、再度ナイフを構え藤堂たちに相対する。
「よし、イケるぞ。このままぶっ壊して生意気な口を叩いたことを後悔させてやる」
「お前たち、油断しないように。スキルをナイフで受け止めていましたし、そこそこ手強いですよ。あの魔術というものを使わせる隙を与えないように攻めましょう」
そういうと藤堂は、もう一度サンダーボルトを放つ。
「ちっ」
大きく飛んで躱して着地したところに、盾の男がシールドバッシュで跳ね飛ばす。
跳ね飛ばされた勢いのまま飛び退ったところに、回り込んでいた剣士2人が斬撃を放つ。
「破砕剣」「双連斬」
武器破壊のスキルが込められた斬撃でナイフを砕かれ、連続の斬撃を辛うじて躱したところに、
「サンダーストーム」
「っ!!」
藤堂の範囲魔法が直撃する。
雷魔法が直撃した柘榴は、白煙を上げて立ち尽くしている。
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柘榴が戦っていたころ木葉は、夕食を作っていた。
「はっ、柘榴!」
「ねーちゃん、どうした?」
「そういえば柘榴のくれた林檎はシナ○ゴールドだったのかな」
「?」
特に何かを察知することもなく、ギルドで食べた林檎の味を思い出していた。
シナ○ゴールドは名前はゴールドだが金色はしていない。
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「へっ、所詮ゴーレムごときが人間様に敵うわけがないだろうが」
白煙をあげ微動だにしない柘榴を見ながら、剣士の男が言うのに他の男たちも同意し盛り上がるが、藤堂だけは厳しい表情を崩していなかった。
藤堂は結界が解除されていないことから、まだ警戒を解いていなかった。
「この結界は術者が死んでも残るものでしょうか?」
そんな藤堂のこぼした疑問に答えるものがあった。
「----いいえ、これは私が死ねば解除されます」
藤堂たちは声の発生地に目を向け距離をとった。
そこにはダメージを感じさせずに静かに立つ柘榴がいた。
「くっ、あれを受けて動けるのですか。お前達、今度はもっと強力な魔法を叩き込みますよ!」
「おうよ、今度こそぶっ壊してただのガラクタにしてやる」
すでに本来の目的を忘れている男たちであるが、完全破壊する気でやらなければ敵わないと思い、藤堂は口を挟まず魔法の準備をする。
そんな彼らに、柘榴は少し感心した表情を向ける。
「ああ、もう結構ですよ。A級の力というのも見ることが出来ました。連携で何倍もの力を発揮するというのは素晴らしいですね。マスターもパーティーを組ませるというのもよいでしょうか。本当は個人として高みに上って欲しいのですが、人間という社会生物としての強みを持つというのも1つの手段ですね」
悩まし気に呟きながら、柘榴は戦闘中であるにも関わらず木葉の育成に頭を悩ませる。
まるで、藤堂たちなど端から眼中にないとでもいうように…。
「いろいろと悩みは尽きませんが、まずは目障りなものを片付けるとしましょうか。安心してください。A級の力量を教えてくれたお礼に、苦しまたりしませんから」
柘榴は藤堂たちに向き直り、再度右ナイフと左手に投げナイフ3本を持つ。
「ーーーっ!お前達、もう一度行きますよ!」
「「「おおっ!」」」
再び盾の男が大盾を構え突っ込んでくるのに対し、柘榴も盾の男に向かって走る。
「なっ」
盾の男とぶつかる瞬間、柘榴は盾を足場に飛びあがり、左手に持つナイフを構える。
「付与ー曲射、付与ー爆砕」
魔術を掛けたナイフを剣士と、盗賊の男に向けて放つ。
「なめるなっ、こんなナイフごときっ!」
「いけませんっ、お前達逃げなさい!」
魔術の詠唱から効果を予想した藤堂は剣士の男たちに逃げるよう言うが、間に合わず剣士たちは剣で叩き落そうとし、盾の男は大盾で受けようとする。
しかし、ナイフは剣や盾にあたる瞬間に曲がり、男たちの首や腕に突き刺さる。
「がっ」「くっ」「ちいっ」
「いけません、すぐ抜いて投げ捨てーーー」
藤堂の言葉が終わらぬうちにナイフが爆発する。
爆発の煙が晴れると、そこには上半身を失った男達の残骸があった。
「くそったれがぁ!瞬速っ」
投げナイフを使い果たした柘榴に、盗賊の男がスキルで加速しながら迫る。
まだ、盗賊の男に背を向けている柘榴に勝利を確信し、その背に短剣を突き立てるべく突き出す。
「障壁ー反射ー刺突」
魔術により張られた障壁に触れた短剣は、盗賊の腕を圧し折って跳ね返り、男の口を貫き脊椎を断ち切った。
「サンダースピア」
盗賊の男を倒した柘榴に向けて藤堂が魔法を放つが、あっさりと躱される。
「ディレイスペル、ライトニングスピア」
柘榴が躱して足を着いた瞬間に、魔法遅延のスキルで待機していた魔法を解き放つ。そして、それは狙い過たず柘榴の胴体に突き刺さると激しく放電した。
「やった、やったぞ。犠牲は大きかったが、こいつを手に入れれば、これからいくらでも取り返せる!」
「ぱちぱちぱち。何をやったのかは分かりませんが、おめでとうございます。もっとも、貴方に未来などありませんが」
柘榴を倒せたと思ったところで、無表情の柘榴が拍手をしながら普通に立っており、藤堂は目玉がこぼれ落ちんばかりに見開き叫ぶ。
「なぜだっ!直撃したはずだ。今度は範囲魔法ではなく単体魔法の最大出力だぞ!生きているはずがないだろう」
あまりの理不尽に現実を否定し、よだれを飛ばして喚く藤堂に柘榴は嘲笑しながら告げる。
「最初に貴方が雷魔法を使った時から、この服に雷撃耐性を掛けていたのですよ。私は金属製ですから他の属性に比べれば確かに雷撃が弱点になりますからね。範囲魔法を受けた時は私本体に当たっていますので少しはダメージがありましたよ。あくまで他に比べれば、少し有利という程度ですが」
「なっ」
絶句する藤堂にスッと近寄り足払いを掛けて倒すと、その顔に足を乗せる。なお、足払いと言いつつ藤堂の足は粉砕骨折していた。
「ぐわああああっ」
あまりの激痛に叫ぶ藤堂に向けて、柘榴は踏む力を強くして黙らせる。
「貴方の死は変わりませんが、最後に一つだけ訂正しておきましょう。至高の私を構成するものはミスリルではありません。私を構成する素材はーーー神珍鉄です」
アジアではあまりに有名な武器の素材の名を聞いた藤堂は踏まれて歪んだ顔で、目を見開き口を開こうとする。
「ま、待っーーー」
「解除ー重量ー軽減」
ぐちゃっ
常に柘榴に掛けられている重量軽減の魔術を解いた柘榴の足が、藤堂の頭を砕き地面に沈みこむ。
神珍鉄ーーそれは、西遊記の孫悟空が持つ如意棒の素材である。
柘榴の重量軽減を掛けていない本来の重量ーー24t
「しかし、A級でこの程度ですか。そう簡単にあれらが地上に出るとも思えませんが……その時は……」
思案気な柘榴の独白は初冬の夜に溶けていった。
西遊記の如意棒は8tあるそうですね。柘榴は如意棒3本分です。
私の文章力不足で入れられませんでしたが、ナイフを使っているのは木葉の戦闘スタイルをどうするか試すためです。
次回は木曜日7時です。




