第103話 ゴーレムの主、日常を過ごす
ご来店いただき誠にありがとうございます。
木葉の高校を大山高校から山神高校に変更しました。
新学年になり朝はいつものごとく柘榴に起こされた木葉は迎えに来た依和那と登校していた。今日からセレスタも編入だが手続きがあるので先に行っている。
名古屋第1ダンジョンの探索の後、すぐにハリス達は帰国していった。その際に人の見た目のヨダがどう入国するかで困ったという一幕があったが、とある格闘漫画をヨダに読ませて解決した。
即ち海上を走って行く。
その様子を木葉達と筋肉達はポカーンとして眺めていた。
ヨダの姿が見えなくなってから空港に向かってハリス達を見送った。その後ヨダは途中で道に迷ったが無事に合流できたのはいいが、あちらのギルドにばれたせいで色々聴取されて大変らしい。
「なんかそわそわしてるわね。デートは今週末なのに今から気にしてるの?」
「それだけじゃないけどね。それに、あれってデートじゃないと思うんだけど」
そう言って木葉は柘榴のお願いを聞いた時のことを思い出した。
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ひっくり返った蛙のようになった喪女が転がっているリビングで、木葉は赤い顔をして柘榴と向かい合う。
「デ、デ、デ、デートってどういうこと」
どもり過ぎてピンクの悪魔の敵役のようになっているが何とか言い切って柘榴の様子を覗う。
「それは…ですね、マスターの私服がダサいのです」
「へ?」
立髪のような花びらが生えた豚がプリントされたスウェットを着た木葉の目が点になった。
「以前の生活から節約が身についているのでしょうが、貰い物や着られなくなった部分だけ捨てた残り物との組み合わせが合ってないせいでダサいのです」
「「「ああ~~~」」」
それには復活した都斗も含めた3人も同意する。
皆探索者なので普段はばっちりメイクやファッションを決める方ではないが、オフの時はやはりそれなりにおしゃれをする。
しかし、木葉にはそれすらない。辛うじて肌ケアをしている程度で、服装もあるものでマシな組み合わせをしているだけだ。
「今は余裕もあるのですから見繕いましょう」
「そういえば柘榴がかなりお金を稼いでるって健が言ってた」
「ええ、これだけ有ります」
そう言って柘榴はノートパソコンを取り出して帳簿を開いて皆に向けた。
「え゛え゛っ」
そこには10桁の数字が表示されていた。
「まだ売掛金が残っていますので次回の入金には更に増えるでしょう」
「お゛お゛っ」
「マスター、さっきから乙女が出してはいけない声が」
探索者界隈の製品は単価が高い。それが、世界規模での取引になっているのだ。しかも、柘榴側には手持ちの放出や技能だけでほぼ原価が存在せずほぼマルッと収入になっているためこのようなことになっていた。
「お、お母さんにそうだ……」
「佳未亜に預けようとしたら倒れて心臓が止まりました」
「おかあさーーーーんっ!?」
「蘇生はしたのですが資産の記憶は消えていました」
逃げ場を失った木葉はあうあうしていたが、その手を取って目を合わせる。
「ですので、これまで頑張ったマスターに報われる喜びを教えさせてください」
「う、うん」
3等身ながらイケメンなセリフを吐く柘榴に観念して木葉は頷いた。
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「ただのお買い物のような?」
「そこらへんは当人達の気持ち次第ってところじゃない?」
依和那はうーんと首を捻っている親友を見て肩を竦めて苦笑する。
そんな雑談をしながら通学路を歩いていると、山神高校の校舎が見えて来た。
他の生徒達に紛れて校門をくぐるとクラス発表が飾られている掲示板の前に行く。
「み、見えないよ」
背の低い木葉は生徒達で塞がれてしまいダンシングフラワーのような動きで何とか見ようとする。
「木葉とわたしは同じクラスね」
「ほんとっ!」
「ええ、それじゃあ行きましょうか」
「うんっ」
木葉達は何度か配信に映ってしまったせいでそれなりに有名人なので、近づきたいと思う生徒もいたがなんとなく2人の空気に入れなくて大人しく見送っていた。
2人が教室に入ると進級しても同じクラスになった友人達が集まってきた。
「木葉、姫宮さん。同じクラスねっ」
「配信見たよ。マジすごかったじゃん!」
「木葉撫でらんなくて寂しかったし撫でさせて~」
「今日からセレスタさん来るってマ?」
「今度、合同でダンジョン行かない?」
木葉は人懐っこいし依和那もしっかり者で頼られることが多いので学校内で交友関係は広い方だ。その為、元クラスメイトもそうじゃない生徒も気楽に木葉達に声を掛けてくる。
生徒達にも探索者をしている者はそれなりにいたりするので、今の木葉達は親しみだけじゃなく尊敬や憧れの視線も混じっていて少しくすぐったかった。あと、実は2人共密かに男子人気があったりするが、間に挟まれようという者は裏で謎のマスクを被った生徒達に処理されていたりする。木葉は全く気付いていないが依和那はなんとなく気づいていた。
久しぶりに会う友人達とわいわい話していたら無精ひげを生やした学年主任が扉を開けて教室に入り教壇に立った。
「席に着けよ~。俺がこの2年1組の担任を務めることになった日暮だ。よろしくな」
バリバリ指導する方ではなく、どちらかというと見た目通り緩い方である日暮が担任になったことに生徒達は歓迎の雰囲気を漂わせる。特に進学校という訳でもない山神高校では風紀も緩めが喜ばれている。
「さってっと。俺の挨拶なんぞはいいとして、まあ噂になってたから知ってるやつもいると思うが今日からこのクラスに転校生が1人入ることになった。お前ら変なことすんなよ。特におかしなマスク被ってるやつらな」
日暮の注意に心当たりのある生徒は目を泳がせていてバレバレであったが苦笑で流して件の転校生を呼ぶ。
「待たせたな。入って自己紹介をしてくれ」
教室のドアが開くと山神高校の制服を着たエルフが無機物に愛を囁いている日常など欠片も感じさせず清楚さを感じさせる足取りで教壇の前に立つ。
「初めまして。わたクしはセレスタ=ストアラスですわ。趣味は配信ト魔銃のお手入れ。これから仲良くしていただけましたら嬉しイですわ」
「「「「!?」」」」
セレスタの性癖自体はかつて配信で紹介された際に暴露されていたので驚きは少ないが、やはり見た目とのギャップで脳が混乱して誰からも声が上がらない。
「あら?」
クラスメイト達の反応にセレスタが不安を感じ始めた時、誰からともなく呻くような声が漏れる。
「う………」
「う?」
「うおおおおおおおおっ」「やっほいやっほい!」「美少女!金髪!エルフ!」「本物だ!楽園は此処に
あったんだ!」「これで勝つる」
クラスメイト達が唐突に暴走を初めてセレスタは目をぱちくりさせているが、木葉と依和那は仲間がクラスに受け入れられそうなことに安堵していた。
そして、休み時間はお約束のごとくセレスタの周りに人が集まり他クラス他学年からも一目見ようと訪れる者が溢れかえっていた。
「美少女でエルフだもんね。でも、みんな忘れてるよ!もう異世界人はセレスタだけじゃないんだよ!」
セレスタがちょっと困っているのを見て取った木葉が先日発表された川崎ダンジョンの人魚族を引き合いに出して気を逸らそうとするが、一斉にスンとした顔を向けられてたじろぐ。
「人魚族って咲乃。あれ、腕の生えたタ〇ノくんじゃねえか」
ぐうの音も出ずに木葉は崩れおちた。
「柘榴によると1割くらいは人間と魚が半々のタイプもいるらしいわよ」
仕方なしに依和那が助けを出すと、柘榴情報と聞いて興味を向ける者もいたが遠くの人魚姫より近くの妖精姫ということであまり効果はなかった。まあ、仕方がないかとセレスタにごめんの意思をジェスチャーで示すと苦笑が返ってきた。
セレスタの存在が世に出回ってからは外を出歩くと注目されたり人が集まったりして、時には犯罪まがいのことをしようとする者もいるので生徒達の行動などまだ大人しい方である。もっとも、タチの悪い相手はより暴虐な存在によって消されているので概ね平穏ではあったが。
こうして木葉の新学年は始まった。
主人公がちやほやされないのでこっちをちやほや。
(言うほどちやほやされてない?)
別の連載を始めました。
そこまで長くならない予定です。
こちらの連載に影響しない程度で更新をしたいと思います。




