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2 サララちゃんは負けず嫌い

第5作です。作者としては珍しいダメ男主人公ではないお話です。

隙間時間にちょろっと読んで頂ければ幸いです。

なるべく完結するよう頑張ります。

フリューゲル家家族会議


「お前達ばかりに押し付けてすまん。」

「3週間も王城を留守にしたのですからお仕事が溜まってしまうのは当然です、お疲れさまでした。」

王都に行っていた父上が久しぶりに帰って来た。

サララの症状が改善したので溜まっている仕事を片付けるため王都に行っていた。

今は母上と兄上、俺の4人で家族会議。

「聞いていた以上にシロが大きくなったな。」

「はい、食事を全く摂らなかった時でもどんどんと大きくなりました。」

「モモの話では今でも毎日サララの魔素を吸ってくれているようです。」

「食事の代わりに魔素を食べているという訳か。」

「はい。サララが寝込む前はミルクやクッキーも食べていたようですが、寝込んでからの3ヶ月は何も食べずに魔素だけを吸ってくれています。お陰でサララは先月から少しずつ歩けるようになり、今では2階を走っています。」

「サララが走ったという連絡を聞いて私は涙が出た。」

「使用人達も嬉しそうに応援してくれています。サララが元気になったからか、今ではシロも魔素を吸う合間にミルクとクッキーを食べるようになりました。」

「調べてみましたが、魔素だけで成長する動物や魔獣はおりません。可能性として考えられるのは精霊か神獣ですが、どちらも神話や昔話に書かれているだけで姿形は勿論不死鳥以外は名前すら不確かです。」

「どう見ても不死鳥では無いですが、精霊では無さそうですから神獣でしょうね。」

「いずれにせよシロがサララの命を救ったのは確かだ。神獣であろうが何であろうがサララの命の恩人、いや恩猫。決して疎かにするでないぞ。」

「勿論です。」

「ですが、さすがにあそこまで大きくなると目立つと思うのですが。」

兄上の言う通りで、シロは既に大型犬というか仔馬に近い大きさになっている。

廊下を突進する姿には迫力すら感じる。

正面から見ると多少丸顔ではあるが、耳も髭も尻尾も猫。

しかしその大きさは猫と言い張るにはかなり無理がある。

使用人達は小さな時から馴染んでいるので怖がることは無いが、客や出入りの商人達に見られれば大騒ぎとなる。

「ふむ、何か手を考える。暫くは屋敷の2階から出さないようにしてくれ。」



お父さんが戻って来たので、サララちゃんが元気になったお祝いをするらしい。

サララちゃんと2人で毎日2階の廊下を走り回っていたが、階段を降りるのは久しぶり。

サララちゃんもずっと部屋で食事していたので食堂は久しぶり。

吾輩が食堂に入るのは初めて。

大きなテーブルにお父さんお母さん、お兄さん達が並んでいる。

使用人が吾輩を席に案内してくれた。

吾輩の席はサララちゃんの隣、綺麗な布が掛けられた大きな箱が置いてある。

上に乗るとテーブルに上半身が載る高さ。

吾輩の前にもちゃんと料理が用意されていた。

温めたミルクと軽く焙った厚切り肉。

うん、魔力も好きだがミルクと焼いた肉も好き。

良く出来た使用人である、褒めてつかわす。


「サララ、元気になって良かったな。」

「はい、シロのおかげです。」

「そうだな。シロ、サララを救ってくれてありがとう。」

「ナャン。」

褒められたので、前足を突っ張ってちょっと胸を張った。

「シロには感謝しか無いのだが、随分と大きくなってしまったので客が怖がるかもしれない。何とか方策を考えるので暫くは1階には降りないでくれるか?」

「ナャン?」

大きくなったのはダメなの?

耳がフニャァとなったのが自分でも判る。

う~ん、小さくなれば良いのかな。

え~っと、小さくなるにはどうしたらいいのだったかな。

最近は時々何かを思い出すことが有る。

この間は風魔法と言うのを思い出してサララちゃんにも教えてあげた。

小さくなる方法も何となく記憶の片隅にあるような気がする。

え~っと、え~っと。思い出した!


「ナャォニャォ~ン!」

出来た!

見上げるとテーブルの裏側が見える。

「シロ、・・・・。」

サララちゃんが吾輩を見て目を丸くしている。

ちょっと驚いたらしい。

「ナャオ(偉い)?」

耳をピンと立てて尻尾をブンブン振った。

周りを見回すと皆が口を開けたまま吾輩を見つめている。

「シ、シロは小さくも成れるのか?」

お父さんも驚いたらしい。

「ナャア(もちろん)!」

前足を突っ張って胸を張った。

まあ今思い出しただけだけど。

あれ、声も小さい頃に戻っちゃった?

「お父様、この大きさならおそとであそんでいい?」

「お、おう。」

お父さんが目をパチパチさせている。

「シロは凄いな。」

「ああ、こんなに驚いたのは初めてだ。」

お兄さん達は満面の笑顔、喜んでる?

ともあれこの屋敷内なら庭も自由に歩き回って良い事になった。



はあ、はあ、はあ、はあ。

「ミャン、ミャン、ミャン。」

はあ、はあ、はあ、はあ。

「ミャン、ミャン、ミャン。」

サララちゃんは体力づくり中。

小型犬くらいに小さくなった吾輩と一緒に屋敷の庭を走っている。

生れた時から体が弱く、全く運動出来なかったサララちゃんは体が動かせるのが嬉しいらしい。

笑顔全開で庭を走り回っている。

走り終えたら剣術の稽古。

お兄さん達が剣術を教えてくれる。

お兄さん達もサララちゃんの笑顔が嬉しいらしく毎日運動に付き合ってくれている。

稽古が終わったら朝食。

午前中はお兄さん達と一緒に家庭教師のおっちゃんにお勉強を教えて貰う。

サララちゃんは笑顔。

お兄さん達と一緒にお勉強するのが嬉しいらしい。

午後になるとお兄さん達は実務研修を兼ねて領地経営のお手伝い。

サララちゃんはまだ小さいので自由時間。

吾輩とのふれあい時間。



今日は屋敷にある大きな木で遊んでいる。

「ミャア!」

颯爽と駆け上がって木の枝で胸を張る。

「やあ!」

サララちゃんも大きな幹を駆け上がる。

「どうよ!」

サララちゃんも胸を張る。

1か月前までは全然登れなかったのに今では軽々と登って来る。

「グニャニャ(くそっ)。」

治癒師の爺さんに教わった中途半端な術式でなく、吾輩が教えた効率的に魔力を纏わせる方法を会得してからは走るのもめっちゃ早くなったし木登りも上手くなった。

サララちゃんは魔術式を会得するのが得意。

吾輩が枝の上から飛び降りて走る。

サララちゃんも軽々と飛び降りて付いて来る。

速度を上げる。

サララちゃんは余裕でついて来る。

「ニャハァ、ニャハァ。」

息が上がった。

体を小さくしているので早く走るのは苦手。

40㎝の体では幾ら頑張っても魔力を纏わせたサララちゃんには敵わない。

魔纏いすれば勝てるけど、サララちゃんに禁止された。

勝ち目のない勝負はしないのがサララちゃんの常識らしい。

判らぬ。

「勝った~!」

「フニュニュ(負けた)。」

二度と病気にならないようにサララちゃんの魔力循環を速め、毎晩寝る前に魔力を吸い出していたらサララちゃんの魔力が凄く大きくなり、魔力纏いの効果もめっちゃ高くなった。

「風刃乗り!」

いつものおねだり。

勝ったご褒美はサララちゃんが大好きな風刃乗り。

「ミャアミャア(はいはい)。」

速度の遅い大きな風刃を撃つ。

「はっ!」

サララちゃんが風刃に飛び乗り、体重移動を使って右に左にと器用に庭木を避けながら空中散歩を楽しんでいる。

100m程で風刃が消えると同時に綺麗に着地する。

両手を広げ、得意の着地ポーズ。

サララちゃん最近のお気に入り、空中風刃乗り。

吾輩も風刃に乗って追いかける。

後ろに撃った風刃のコースを変え、吾輩の近くに寄せて飛び乗る得意技。

サララちゃんも風刃を使えるが、風刃乗り用の遅い大型風刃はまだ出来ない。

「ミャアミャア(どうだ)。」

「ムヌヌ。頑張って練習するもん!」

サララちゃんは負けず嫌い。

吾輩はサララちゃんの悔しそうな顔を見るのが好き。

ただ何をやってもすぐに出来るようになるので次々と新しい技を思い出さなくてはならない。

このままでは師匠としての面目が保てないから吾輩も必死だ。

昔はもっと色々な事が出来ていたような気がするが、少しずつしか思い出せないのが歯がゆい。



「ミャアミャア(どうだ)。」

「ぐぬぬ。」

空中で体を捻っての着地は常識なのにサララちゃんは苦手。

何度も練習して漸く1回転捻り降りが出来るようになった。

屋敷には大きな木が沢山あるし、木の下には草が生えている。

魔纏いしているので失敗しても安全。

敵に弾き飛ばされた時、背中から地面や壁に激突すると怪我をする。

空中で自分の状態を把握して姿勢制御しながら足から着地するのは世界の常識。

吾輩は物心ついた時から簡単に出来たぞ。

頑張って練習しているサララちゃんをちょっと上から目線で眺めていた。


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