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1 肉球は至高である

作者名を免独斎頼運に変更して新作、SSランク冒険者のお仕事は下着の洗濯です ~討伐依頼? そんなものありません~の投稿を開始しました。

今迄の作品は全て改訂予定なので、未完作品の完結も後日となります。

申し訳ありません。

吾輩は猫である。

名前はまだない。


すいません、恰好付けました。

名前はシロ、先週名前を付けて貰いました。

「シロ~ぅ。」

今吾輩を抱いて苦しそうにしている女の子、サララちゃんが飼い主です。

先週お庭で拾って貰いました。


「・・・う~む。」

治癒師とかいう爺さんが難しそうな顔をしています。

「やはり魔素中毒か?」

小さな声で心配そうに聞いたのはサララちゃんのお父さん。

「はい、残念ながら。兆候が出て2年、色々と手は尽くしたのですが発症を抑えられませんでした。」

「・・・。」

お父さんが拳を握りしめている。

「ううっ。」

唇を噛んで涙を堪えているのはサララちゃんのお母さん。

「「母上。」」

お母さんを支えているのはお兄さん達。

今にも泣き出しそうな顔。

サララちゃんは重い病気?

5日前からベッドで寝たままです。


「溜まっている魔素を体の外に出すのが一番ですが、私が教えた魔纏いと生活魔法では魔素の蓄積に追いつきません。多少効果があるとされる吸魔草も今の季節は採れませんので、栄養のある食事をして体の成長が魔素の増大を上回る事を願いましょう。それで回復した例も文献にはあります。」

あれ、魔素を体の外に出せばサララちゃんが元気になるの?

魔素って体の中にある魔力の事だよね。

「それは200年程前の英霊王だけだ。何とか吸魔草を探してみる。」

サララちゃんの両親達が治癒師とかいう爺さんと一緒に部屋から出て行った。

「あとどれくらい持つ?」

部屋の外でお父さん達がヒソヒソ話をしている。

吾輩の耳には丸聞こえ。

猫の聴力は凄いんだぞ。

「・・・恐らく2週間、お嬢様が頑張ればぎりぎり1ヶ月です。」

「・・・そうか。」

「・・・・。」

魔力を吸いだせば良いんだよね。

「ンミャ~。」

「シ・ロ、・・・。」

「ナャ。」

横から手を伸ばしてサララちゃんの首筋に肉球を当てる。

「ンナャ~ナャ~(頂きます)。」

ミルクもお菓子も好きだけど、一番の好物はサララちゃんの魔力。

まだ生まれたばかりだから少ししか食べられないけど、サララちゃんが元気になるなら頑張って食べる。

肉球からサララちゃんの魔力が流れ込んで来る。

苦しそうだったサララちゃんの顔が少しだけ穏やかになった。

「ミャファッ。」

・・・・、だめ。もう食べられない。

いつもの5倍は食べたけど、お腹が一杯になってしまった。


「お・み・ず・。」

「はい。」

モモがサララちゃんにお水を飲ませてあげる。

少しだけ元気になったらしい。

モモはサララちゃん付の侍女。

と言ってもモモもまだ7歳、小さいので半分はサララちゃんの話し相手。

いつもサララちゃんと一緒にいて吾輩にミルクやお菓子をくれる良い人。



治癒師とかいう爺さんが来てから10日が経った。

サララちゃんはまだベッドの上だけど、食事も少しだけ食べられるようになって来た。

吾輩?

少し太ったかな。


「症状が改善というか殆ど発症前の状態に戻っています。奇跡としか思えません。」

治癒師の爺さんが驚いている。

「シロがにくきゅうをあててくれると、とってもらくになるの。」

サララちゃんの声も少し元気そう。

「猫の肉球か。肉球に魔力を吸う力があるとすれば大発見だ。やって見せて貰えるか?」

治癒時の爺さんは興味津々。

「うん。シロ、おねがい。」

「ナャ~。」

サララちゃんの首筋に肉球を当てる。

サービスで魔力循環の加速もトッピング。

循環速度を早くすると吸い出せる量が増える。

約1時間、指先や足に残っている黒ずみが少し薄くなった?

「ミャファッ。」

・・・・、だめ。もう食べられない。

「成程、肉球が魔素を吸っているようだ。これは凄い発見じゃ。」

爺さんは嬉しそう。

ちなみに『肉球の癒し効果』という論文が発表されたのはそれから4年後。

癒し効果はあったらしいが魔素中毒への効果は確認できなかったらしい。

爺さんの家は猫だらけになって猫屋敷と呼ばれたそうだ。



サララちゃんが歩けるようになった。

まだ時々ふらつくので階段は禁止だが2階の散歩は許可が出た。

大きな家なので2階も広い。

「フンフンフン♬」

「ナャンナャニャン♬」

2人が並んで廊下を歩くと使用人達が笑顔で道を空けてくれる。

使用人が増えた?

吾輩は耳が良いので使用人達の声が聞こえる。

散歩の時間に廊下にいる使用人の数が増えているのはサララちゃんが元気になって嬉しいらしい。

使用人達がサララちゃんの歩く姿を愛でるのは常識と話していた。

みんな笑顔だから常識というものは良い物だ。



魔力が多すぎるなら自分で放出する方法を覚えた方が良い。

何かいい方法はないだろうか、考えていたら思い出した。

魔力を体全体に纏わせればいい。

力が強くなるから歩いてもフラフラしない筈。

「ナァニャン。」

「どうしたの?」

サララちゃんの掌に肉球を押し当てて魔力を吸い出しながらサララちゃんの全身に広げる。

「ナァニャ(真似して)。」

「ちゆしさんにおしえてもらったのにてる? じゅもんないの? もっかい。」

もう一度サララちゃんの魔力を吸いだしながら全身に広げる。

「うん、サララがする。」

サララちゃんが掌に魔力を集める。

うん、そんな感じ。

「エヘヘ。」

呪文無しで魔力を扱えたことが嬉しいらしい。


魔力を全身に広げ始めた。

ちょっと違うけど、魔力を体の外に広げる感じが覚えられればいい。

「う~ん、むずかしい。」

「ナニャ。」

サララちゃんの首筋に肉球を当てて首から全身に魔力を広げた。

「くびでもいいの?」

今度は足首に肉球を当てて足首から魔力を吸いだした。

「すごい。」

本当は全身から同時に出す方が早いし効果も高いが今は魔力を出すことに慣れればいい。

無理をさせてはいけない。

吾輩は常識を弁えた猫なのだ。


「フ~ンフフンフフ~ン♬」

「ナャンナャ~ニャン♬」

魔纏いを使いこなせるようになったサララちゃんが楽しそうに2階を走る。

吾輩も負けじと走る。

「ナニャンニャ(勝った)。」

「プウッ、もっかい。」

サララちゃんは負けず嫌い。

モモによると体が弱かったサララちゃんは今まで走ることが出来なかったらしい。

吾輩は生れた時から走っているのだ。

走り始めたばかりのサララちゃんに負ける筈がない。

使用人達が嬉しそうにサララちゃんの走る姿を見ている。

時々お母さんやお兄さんとも出会うがみんな嬉しそうにサララちゃんを眺めていた。


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