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第三話 学年の壁
なぜか、お母さんは僕の表情を見て一段と顔を綻ばせる。
こうなることを予想していたのかもしれない。
「あの野球チームは、三年生になってからじゃないと入れないのよ。だから翔ちゃんは、もう少し辛抱しないとね」
『しんぼう』の意味が分からなかったが、どうやら野球チームにはまだ入れないらしい。
「嫌だ! 僕は野球がしたい! 入りたい入りたい入りたい!」
大好きなお母さんを困らせたくはないが、どうしても言ってしまう。
眉が八の字に曲がったお母さんは、お米を洗う手を止め濡れた手をタオルで拭くと、僕のそばまでやってきた。膝を曲げて僕と顔の位置が同じ高さになる。
「今は入れないかもしれないけど、野球ができないわけじゃないんだよ? お父さんやお母さんがいるんだから、また公園に行って野球しよう。ね?」
「うん……。分かった。早く三年生になりたいな。」
「翔ちゃんは偉いね。ご褒美に今日の晩御飯はハンバーグにしてあげる」
正直納得はしていない。
でも、これ以上お母さんを困らせたくはなかったし、『ハンバーグ』の甘い誘惑を前にしては、引き下がるしかなかった。




