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ぼくとお父さん  作者: 青野 乃蒼
最終章

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24/29

第二十四話 覚悟

 あんなに僕のプレーを否定し怒鳴り散らすくせに、お父さんはほとんど欠かさず試合を観に来た。


 僕はスタメンではないし、五年生だから毎回試合に出られるわけではない。

 それなのに、なぜ、お父さんは仕事の合間を縫ってまで観に来るのか。


 僕には分からなかった。というより考えようともしなかった。

 お父さんが試合会場にいることが苦痛で仕方なかった。

 「今日は来るな」と毎回祈るだけだった。


 祈っては落胆し、試合に出ては結果を残せず怒鳴られる。

 それを繰り返しているうちに、僕は五年生としてのプレーを終えていた。


 惨憺(さんたん)たる一年だった。


 お父さんに怒られまいと、「見逃し三振はするな」「バットを振れ」という言いつけを必死で守った。

 

 でもそのせいで、ツーストライクに追い込まると、体が強張り、どんな球も振ってしまうようになった。


 言いつけを守っても、三振だから結局は怒られる。どうやっても怒られる。


 怒られるために野球をやっているもんじゃないか、と思ったこともあった。

 それでも僕は野球をやめなかった。


 野球が好きだから。野球が悪いわけじゃないから。



 明日から僕は新六年生としてプレーすることになる。藤宮スポ少で野球ができるのは残り一年だ。

 何とかしないと。


 でも本当のところは分かっていた。やることは一つしかないと。


 練習のとき、僕は六年生に引けを取らないぐらい上手にプレーできていた。

 だからこそ監督は、僕を使い続けてくれたのだと思う。


 惨憺たる一年だったのは確かだが、一つも結果を残せなかったわけではない。

 数回だが、ヒットを打った。


 そのときの僕は、心がスッキリとしていて爽やかで、体のどこにも余分な力が一切入っていない、リラックスした状態だった。


 練習のときの僕と、試合で結果を出せたときの僕。

 二つの共通点とは何か。



 ――お父さんだ。お父さんがいないときだ。



 薄々気付いてはいたが、やっぱりそうだった。

 お父さんがいなければ、僕はのびのびと野球ができる。


 言うしかない。「来ないで」と。


 でも、そんなこととてもじゃないが言えない。そんな勇気、僕にはない。


 いつもの弱気な自分が顔を出す。けれど、今日はもう一人の自分が助けてくれた。


 僕はいつも流されてきた。怖いものから逃げてきた。

 でも今回は逃げたくない。藤宮スポ少で野球ができるのは今年で最後なんだ。

 みんなと楽しく野球がしたい。もっと試合で活躍したい。


 僕は覚悟を決めた。

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