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ぼくとお父さん  作者: 青野 乃蒼
第二章

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20/29

第二十話 百見は一感に如かず

読者の皆様へ

拙著をお読み頂き、ありがとうございます。青野です。

また、毎度不定期の更新で申し訳ないのですが、何卒ご容赦頂きたく……。


今後、翔がどう成長していくのか――。

よろしければ、ご一緒に最後までお付き合いください。


それでは、第二十話、どうぞお楽しみください!

 ヘルメットのツバを手先で掴みながら、主審に「お願いします」と一礼。

 砂を払うように足を左右に動かし、ボックス内を軽く整地。

 自分のスタンスに合わせて両足を置き、バットを構える。

 

 これが僕のルーティンだ。


 心のさざなみが徐々に凪いでいくのを感じる。良い状態だ。集中できている。

 考えることを止めて、ピッチャーを見据える。


「プレイ!」


 僕が見据える視線の先には、エースが立っている。立ち姿から漂う貫禄はまさにエース。

 委縮してしまいそうだったが何とか気持ちで撥ねとばした。


 さぁ、かかってこい。



 ピッチャーが振りかぶり、左足を上げた。バットを握る手に力が入る。

 その後は一瞬だった。


「ストライク!」


 振り降ろされた右腕から投じられたストレートは、瞬く間にキャッチャーのミットに吸い込まれた。

 

 本当に一瞬だった。


 エースの投球はこれまでに何回も見ている。

 でもバッターボックスから見るのは初めてで、まさかここまで速いとは思っていなかった。


 気を引き締め直そう。

 一球目のストレートをイメージして、待ち構える。


 先ほどと同じフォームで2球目が投じられる。


 来た! ストレート。イメージ通りのタイミングで勢いよくスイングする。


「ストライク!」


 しかし、わずかにスイングの方が遅く、バットは空を切った。


 くそっ、少し遅かったか。

 でも、この二球でタイミングは掴めた。次こそは必ず捉える。


 目を閉じて、深く息を吸い全てを吐き出す。

 感情をリセットし再びバットを構える。


 エースが投球モーションに入り、流麗なフォームから右腕を振り抜いた。

 僕はイメージ通りにバットを振り抜くはずだった。


「ストライク! バッターアウト!」


 エースの投じた球はイメージとは全くかけ離れたものだった。

 球は右手から離れているはずなのに、僕の手元にはすぐにやってこなかった。


 ――チェンジアップだ。


 完全に裏をかかれた僕は、溜めていた力が一気に抜け、ゆっくりと向かってくる球をただ茫然と眺めることしかできなかった。


 三球三振。完敗だ。


 球がミットに収まったとき、僕は思わず笑ってしまった。

 あまりにも愚かな自分に。

 圧倒的な実力差に。

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