表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくとお父さん  作者: 青野 乃蒼
第二章
13/29

第十三話 豪友

 スポ少に行けなくなって立ち直れないと思っていたけれど、そんな心配は杞憂に終わった。


 友達と毎日のように遊び、週末は家族で出かけたり野球をしたり。

 楽しい日々を過ごしているうちに、悲しみはきれいさっぱりどこかに消えていた。


 時があっという間に過ぎるとはまさにこのことで、気付けば僕は四年生になっていた。


 クラスが替わり、担任の先生も代わり、みんなうきうきだ。心だけでなく体も弾んでいる。



 四年生になって数日後の朝、僕は教室で始業のチャイムが鳴るのを待っていた。

 すると、前から(れつ)が突進のごとく走ってきて僕の机をバンッと豪快に両手で叩き、大声で言い放つ。


「翔、スポ少入ろうや!」


 あまりに唐突で目を白黒させていたのだが、烈はこちらのことなどお構いなしに話し続ける。


「三年生のときスポ少入ってたんやろ。みんな翔は上手いって言うてるよ。上手いのに野球せんのはもったいない。俺も入ることにしたから、一緒にやろうや」


 烈は一年生からの仲良しで家も近所なので、よく遊んでいる親友だ。

 坊主頭で悪ガキみたいな顔をしているが、悪いことはしない。ただ豪快なのだ。


 一つ気になるのは、なぜだか彼は関西訛りなところがある。


「烈、スポ少入るの?」


「当たり前や。俺野球好きやからな。翔は好きやないの?」


 好きじゃないはずがない。大好きだ。辞めたのだって自分で決めたわけではない。


「好きだよ。烈とよくキャッチボールするじゃん。僕は犬なんじゃないかと思うときがあるけどね」


 烈がゲラゲラ笑う。

 彼はキャッチボールでも常に全力で投げる。ゆえに、球があらぬ方向に飛んでいくことがよくある。

 その度に僕は球を拾いに行くのだ。


「今に見てろ。スポ少で練習してもっと上手くなって、翔が捕れない豪速球をビュンビュン投げるからな」


――今でも十分捕れないんだけどね。


「上手くなれば、もっと野球が楽しくなるだろうね」


「そうやな、でも俺は翔と野球できたらもっと楽しいと思う。みんなだって翔を待ってる。

 だから翔、やろうや」


「僕もそう思うよ。入りたい。だけど……」


 だけど、お父さんが許可してくれるか分からない。だから入るとは言えなかった。


 そんな僕の内情を知る由もない烈は、


「じゃぁ決まりやな。入れよ。じゃあな」 と、捨て台詞を残して教室の外へと走っていった。


 もはや勧誘ではなく強制になっている。それでも嫌な気持ちはしなかった。むしろ嬉しかった。

 みんなが僕を待ってくれている。またみんなと野球ができる。その思いが僕を奮い立たせてくれた。


 お父さんにお願いしよう。



 予鈴のチャイムが鳴った。そう、これは始まりのチャイムだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ