13話 ~馬鹿と双子のバーガーパーティー~
主人公:鏑木 駱駝。最強と称される魔王と結んだ契約のせいで、恵まれない子供を育てる義務を負ってしまったバカ。かなりのレベルの土魔法を扱うことができ、魔王から贈られた魔法も所持している。
この国で有数の規模を誇る奴隷商の地下室に、ハンバーガーが発するスパイシーなにおいが一気に充満した。
「うあーーー!なにこれなにこれなにこれ、うまそうじゃん!」
「はー、すげーよ、こんなの見たこともないけど絶対美味いって分かるよ、匂いがすごいよ、なにこれ」
テーブルの上に並ぶのはハンバーガー、チーズバーガー、フィッシュバーガー、照り焼きバーガー、チキンカツバーガー、そしてポテト、チキンナゲット、アップルパイ、スムージー、コーラ、メロンソーダ。それらを包む包装にはすべて「Wakdownau」と書かれている。
「お前たちが俺の所に来てくれる前祝いだ。好きなだけ食べてくれよ」
「全部食べても良いのかよ」
赤い髪のザランが言う。
「お前なんかいい奴だな」
赤い髪のマダンが言う。
「さあほら、お前たちも好きなのを好きなだけ食べていいんだぞ。これは絶対に美味いいやつだからな」
青い髪の双子のディーネとニーネ、黄色い髪のウィーリとウィーラにも声を掛ける。
これはさっき言った通りこの6人が来てくれることに対する俺なりの感謝。できるだけみんなと仲良くなっていきたいので、そのためには一緒にご飯を食べるのがいいんじゃないかと思った。
だから老店員に許可を取ってここでちょっとしたパーティーだ。何も奴隷商でやらなくてもいいんじゃないかという気持ちもあるけれど、早い子と仲良くなりたいという気持ちが強かった。
これらはすべて魔法によって生み出しだもの。最初は何してくれてんじゃい、と思っていた魔王キッポウシから贈られた魔法はことのほか役に立っている。
基本的にこういう特殊な魔法というのは、大っぴらに他人には見せない方が良いものだが、家族に相談した結果、これは見せても問題のない魔法だという事になったので、あまり神経質には考えていない。
そうなれば何を一緒に食べるべきだろうと考えた。一緒にご飯を食べて仲良くなるには美味しいものの方が良い。だけどそれは高くてちゃんとした料理というわけではないことは知っている。
これは戦い。
子供達と仲良くなるための戦いなのだ。俺はそのお供として「Wakdownau」を選んだ。世界中で最も愛されているファストフードはこの世界の子供にも絶対に通用するはずだから。
今にも涎を垂らしそうな子供たちの姿を見ればこの勝負はもうすでに勝利宣言してもいい位だ。
「こらお前達、行儀が悪いぞ」
老店員が注意を促す。
そうしたら子供たちは手に取っていたバーガー類を一旦置いて、俺の方を一心に見ている。これはこの世界のマナーで食事を提供してくれた人の言葉を待っているのだ。
「どうぞ召し上がれ」
その言葉と同時に、子供たちは感謝の言葉を言ってから一斉に食べ始めた。
まぎれもなく完璧な勝利。
やはり世界が変わったとしても子供たちは「Wakdownau」が大好きなのだ。一週間何も食べていなかったのかと、思うくらいにものすごい勢いでバーガーを食べ、ポテトを食べ、コーラで流し込んでいる。
「ゴートンさんも遠慮なく食べてくださいね」
老店員にも声を掛ける。
「ありがとうございます。しかし私も初めて見る食べ物なので何を食べて良いものか」
「それだったらその青い紙に包まっているやつは魚を使ったバーガーなのであっさりしていて食べやすいと思いますよ」
「そうですか、それでは私はそれにしましょう」
山盛りになっているバーガーに手を伸ばした。
「………」
うちでメイドとして働いてくれていて、今は有給休暇中のウキナさんは何も言わずともすごい勢いで食べている。ちょっと前に串肉をしこたま食べていたと思ったのに、すごい食欲だ。
「美味しいよサクラさん!」
「ありがとうサクラさん、こんなに美味しいものを食べさせてくれるなんてすごく嬉しい」
子供達がキラキラした目でケチャップを付けた口で次々にお礼を言ってくれる。嬉しい。何というかこの世界に来てこれだけ感謝されたのは初めてだ。
「おお!これは実に美味しいですね」
老店員のゴートンさんは非常に上品にフィッシュバーガーを召し上がっている。
「美味い!」
「おいしー」
皆が見んな美味しいと言って俺のことを笑顔で見てくれる。ただ魔法を使っただけで俺が調理したわけでも何でもないんだけど、嬉しい。
きっと前の世界での人生を含めても、こんなに人の喜んでもらったのは初めてかもしれない。
最初は不審者を見るような目で俺のことを見ていた子供たちは、一気に心を開いてくれて、親戚のお兄さんくらいの感じになっている気がする。
正直言って子供はあまり得意ではないのだけど、それでも喜んでいるのを見ていると嬉しい気持ちになる。
しかもこれで魔王キッポウシとの契約を達成するための条件に一歩近づいた。この調子でいけばすぐに契約違反の時の条件の「猟犬」とやらを放たれなくても済むだろう。
実に満ち足りた気分だ。
俺は照り焼きバーガーを食べる。
美味い。
鼻を抜けていく香りが脳味噌をぐらっと揺らした。
「美味い」
この独特の甘辛い味付けはこの世界では食べたことが無い。前から大好きだったけど、この世界で久しぶりに食べるとやっぱり美味い。
レタスとマヨネーズが口の中に一気にでろんと入り込んできて、クリーミーさの爆発。
「めちゃくちゃ美味い」
ポテトも美味い。先っぽはカリカリで中の辺りはしなっとしていて、シンプルなのになんでこんなに飽きないんだろうか。長靴一杯食べれる気がする。
ナゲットにはマスタードソース、香ばしくて仲フワフワでスパイシーで最高だ。そしてキンキンに冷えたコーラで一気に流し込む、このジャンキーさがたまらない。脳まで届いて来そうな炭酸のパチパチする刺激。
気が付けば子供達と一緒になって競うようにして同じテーブルで一緒に食べていた。気が付けばもう、さっきまでのよそよそしさは無くなっている気がする。
ありがとう「Wakdownau」。
鏑木 駱駝が魔王からもらった魔法。
◎特殊魔法「ハーメルンの指揮者」
自分が味方と認めた相手の身体能力を向上させることができる。また、自分よりも格下の魂を見ることが出来るようになる。
◎特殊魔法「美味しいものは油と糖でできている」
自分がかつて食べたことのある物を魔力によって再現することが出来る。ただしそのカロリーは実物の2倍であるため、食べ過ぎると太る。
◎特殊魔法「バーサーカー」
身体能力と魔力が格段に跳ねあがり強大な力を手にすることが出来る。しかし思考力は格段に落ちるため、自分で自分をコントールできない。さらに戦闘終了後には反動が訪れるため諸刃の剣である。
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