現実世界における極近未来の動力〜その3〜BEVは普及できない
EU(ヨーロッパ連合)でエンジン動力の自動車の販売を禁止する、としていたが、その期限が延長された。BEV(バッテリー式電動車)の普及が進んでいないことが理由らしい。東京モビリティショーが開催された影響もあってか、日本のメーカーの開発状況や国内での普及についての記事も見かける頻度が増えたように思う。
国内での普及が進んでいないのは、普及を促進する制度が未整備だからとか、国内メーカーがハイブリッド技術に固執したせいで中国企業に遅れを取っているだとか、様々に書かれている。だが、それら考察に「問題点は本当にそこか?」とイマイチしっくりきていない自分がいる。
そもそも、欧州でも北米でもBEVの普及は停滞しつつある。テスラ社の株価が下落したのがその証拠。「日本だから普及しない」のでは無いのだ。
何故BEVの普及は停滞しているのか?
その理由は住宅事情にある、と考える。
日本国内において購買力が高い(と思われる)人たちが、どのような住居に居住しているか、というと「タワマン(タワー型マンション)」ではないだろうか? 郊外や地方都市などで、車を必要とする子育て世代が主に居住しているのは賃貸マンションやアパート、公営住宅などではないだろうか?
乗用車を欲する人たちは、その大半が固有のガレージの無い「集合住宅」に居住している。その人たちが駐車しているのは、立体駐車場や、月極駐車場などの青空駐車場である。BEVの売りである「給油不要で帰宅したらコンセントを挿して充電するだけ」はこの場合アピールポイントにならない。それどころか「ウチじゃ無理だね」と決定的ネガティブ要素になる。
おそらく日本のメーカーはこのことに気付いていたから、BEV一辺倒な欧州の方針を知りつつも、様々な方向性を模索していたのではないか?(自動車の開発者にだってアパート暮らしの人はそれなりに多いだろうし)
むしろ欧州でそこを考慮されずBEVに一気に流れが偏ったことに疑念をもってしまう。実用性・実効性からではなく、何らかの政治的な思惑では?...と素人の妄想に燃料投下されるくらいには不自然だ。欧州にだって集合住宅に居住する人はたくさんいるだろうに。
[購買層となる人たちの多くは集合住宅に居住している]→[ガレージが無い]→[自宅で充電出来ない]→[BEVは購入候補から外れる]
というのがBEVの普及停滞の根本原因ではないか?
そしてこれは日本だけにとどまらず、欧州でも北米でも、BEV普及停滞の理由の1つではないか?
...と考えるのだ、素人なりに。
では、そこをあえて普及させる手立てがあるのか?全てBEVにする未来はあり得るのか?
おそらくは無い、と思われる。
高級マンションならば各々の駐車スペースに充電ポートを設置した駐車場を造ることも可能かもしれない。だが、アパートや公営住宅の駐車場で同様の設備を設けるのは無理があるだろう。ましてや月極駐車場では尚更。
そういうわけで、全面的にBEVに移行する、という未来は無いと思われる。
日本のメーカーには今後も「BEVも造りますよ。でも他の方向性も模索しますよ」という姿勢を貫いて、より現実に即した動力システムを開発してほしい。
個人的には、やっぱり水素エンジンに期待したい。レシプロエンジンもだけど、ロータリーエンジンにもワクワクしますよね?