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箱庭

私が悪魔だと、気が付かなければよかった。

それか、彼を好きにならなければよかった。


**************************


そこには何でもあった。

楽しいオモチャも、お腹いっぱいになるくらいのご飯も、自分を愛してくれる人も、お金だってあった。

だけど、そうして満たされた生活がいつだって正しいとは限らないのだった。


「ロンドさん。私これわからない」


「火織ちゃん。こりゃまた難しい本を読んでるんだね。どれどれ。ほほう、こりゃ地学の本だね。腕が鳴るってもんさね」


少女にとってそこは、当たり前の場所だった。家の中心には直径十メートルはあろうかというほどの木。それを取り囲むようにドーナツ状の家が建っている。そして円形になった壁には無数の本が刺さっていて、ようやっと言葉がわかってきた少女にとっては宝の山なのだった。


少女の知識欲はすさまじく、それはこの山で一番の物知りと名高い「天才ロンド博士」をも驚かせるほどだった。ロンド博士は、この山にこもって、「研究」というものをしている。

少女は博士の「研究」というものが気になって、夜更かしをしたことがあったが、博士は背中にも目がついているらしく、首根っこを掴まれてそのままベッドに投げ飛ばされてしまった。いつもなら「何でそんなことするのよ!」なんて言っていたものだが、その時の博士の表情を見れば、そんな反骨心は消え失せるのだった。


それ以来、少女にとっての博士は「研究」という謎のものをしている人となった。

それ以上でも以下でもない。


博士は、悲しい顔をしていた。


「そろそろご飯にしようか。今日は何食べたい?」

少女はこの質問が嫌いだった。食べたいモノなんていくらでもあるのに、わざわざ選ばせるなんて面倒だ。くらいに思っていたからだ。カレーもいいし、ラーメンでもいいな。でもピザとかも捨てがたい……。

「じゃあ、ホワイトシチューがいいな。フランスパンもつけて!」

少女が腕をぶんぶんと振って催促をすると、

「ようし。博士頑張っちゃおうかな」

と言って腕まくりをするのだった。博士の得意料理、ホワイトシチュー。あのほっとする味が少女はとても好きなのだった。心の寒さが、和らぐような気がしていたから。そしてその寒さはきっと愛情という炎を一番欲しているのかもしれない。




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