表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

深夜のカーラジオ

作者: 英U-1

はじめまして英U-1(はなぶさゆういち)と申します。

短編初挑戦の作品になります。

皆様に嫌な気持ちになって涼んで頂けますと幸いです

どうぞよろしくお願いいたします。

これは友人のAさんから聞いたお話です。


Aさんは都内で軽貨物配達のお仕事をしています。


Aさんの職場は少し特殊でして、


軽貨物配達のお仕事というと


普通の宅急便屋さんのように人が働く昼間のお仕事をイメージされると思うのですが


深夜0時をまわったあたりが仕事のピーク時間になるお仕事でした。


テレビアニメーション関係の会社さんと取引が主だったようで


普段から東京の練馬区近辺から立川市や埼玉県所沢市近辺の


都内でも西側およびその近隣地区をよく走っていたそうです。


夜9時から業務開始してAM5時に終業という昼夜逆転生活を送っていて


私もよく翌日が休みの日の夜に吉祥寺駅でAさんと合流し、始発まで二人で飲んでいたのを思い出します。



さて、これはAさんがその仕事についてしばらくした頃の話です。


Aさんは一晩に10件ほどの案件を受け持っていたのですが


その日は埼玉県の東所沢に住むY様のお宅まで荷物を回収に行くという便があったそうです。


そのY様のお宅への便は週に2~3回あるそうなのですが


拠点である取引先の会社が阿佐ヶ谷にあったため片道1時間ほどかかる道のりです。


そのお宅は時間指定が0時以降と遅めであったため


時間指定のない便を先にこなし最後にY様宅へ向かうことになりました。


Y様は少し厄介な方で、集荷予定時刻を決めたとしても予定通り荷物が準備できず


1時間から2時間ほど時間のずれが発生してしまうタイプの方でした。


なので日によって違いはありますが一日の終わりに


遠方のY様宅へ向かうルートが一番効率が良かったのです。


事件が起こったのは夏休みシーズンを直前に控えた梅雨明け直後の頃でした。


その年は例年よりも平均気温が高く


高温注意報が連日発令されるような夏で


東京独特の湿度も相まってうだるような暑さが続いておりました。


Aさんは西国分寺駅付近の会社さんを終点にその日の宅配業務が落ち着き、


残るは東所沢市にあるY様宅へ向かうのみとなりました。


食事休憩を簡単にコンビニで済ませると


時間はAMの1時半を回りその日のY様回収予定時間のAM2時到着に丁度良いタイミング。


東所沢へ向かうことにしたそうです。


車のエンジンをかけるとスピーカーからAさんの大好きなラジオ番組が流れていました。


TB〇のチャンネルからは超人気パーソナリティの深夜ラジオの帝王が流行りの楽曲を紹介するところでした。


Aさんの乗った車は陽気なラップ調の音楽を流しながら、


車通りの少なくなった国分寺街道を北上し、東所沢へと車を走らせたのです。



西部新宿線の踏切を越え東村山駅の横を通りすぎ、所沢市の手前まで来たところで


Aさんへ電話がかかってきました。


Aさんは車を路肩に止めラジオの音声を消すと電話をとりました。


取引先の方からのお電話だったそうです。


「すいませんYさんから連絡があったのですが一時間ほどアップが遅れそうなのでご連絡と


 追加で東大和市に一件回収がでたのでそちらの回収をお願いしてもいいですか?」


追加の発注相談の連絡でした。


「わかりました。回収先の住所はLINEで送っておいてください」


Aさんは電話を切ると


「またか…Yさんには困ったもんだなぁ」


と思ったそうです。


アニメーション制作関連の軽貨物輸送のお仕事は


仕事始めにだいたいの便が発注されるのですが


取引している会社のお仕事状況によって、


突発的に受けた発注が中止となったり


別の便が追加となったりするそうで、


Aさんは慣れた様子で


自身の会社の上司へと連絡を入れました。


「追加便が出たので先に東大和市へ回ったのち東所沢のYさん宅へ向かいます。」


「了解です。ご安全に。あっ。多摩湖のあたりを通るなら気を付けてね」


所沢市から東大和市方面に抜けるルートで


多摩湖を渡る街道があります。西武球場の横を通り抜けるルートで


Aさんや社員さんたちは仕事上のルートでよく使用していました。


橋の道幅も狭く街灯も少ないうえ夜中となると車通りも無いので


裏道としては有効でしたがほかの道路と比べると危険かなという認識だったそうです。


なので多摩湖を通るルートを使用することは会社からあまり推奨されてはいませんでした。


「わかりました」


とAさんは上司への報告を終えると東大和市へ向けて車を走らせます。


Aさんは非推奨とはいえよく多摩湖を通るルートを使用するのが習慣化していたため


その日も特になにも考えず多摩湖を経由するルートを選びました。


所沢市内を抜け西武新宿線沿の道を走り西部球場の横を通りすぎた頃



「ぎぃいいぃぃぃぃぃぃいえぇええっ!!!!!」


突如Aさんの車から異音が発生しました。


「え????」


普段では車からは絶対に発生しない奇怪で耳障りな音がAさんの耳を直撃します。


「故障か?!」


とAさんはとっさに思ったそうです。


突然のことにもAさんは冷静にハザードを炊くと路肩に停車しエンジンを切り


ボンネットを開けスマホのライトで点検をしていきます。


とくに煙もあがっておらず


足回りも異常は見られません


突然の音に驚きつつ心臓の音がバクバクとAさんの耳を打ちます。


時間も深夜を回ってしまっては暗くて修理もできません。


ひとまず仕事が終わりしだい会社に報告をして車の点検修理を行う準備をしなければなりません。


ボンネットを閉め運転席に座るとAさんは社長へ報告の電話を掛けますが


社長も作業で忙しいのか電話がつながらないためひとまず会社のLINEグループに報告を投げたAさんは


再度エンジンをかけてみることにしました。


車にキーを指し、エンジンを回します


「ズキュキュキュキュキュ」


「ズキュキュキュキュキュ」


Aさんが車を停めた場所は


多摩湖を渡る橋の丁度手前の雑木林の横だったそうです。


セルモーターが回る音が雑木林と湖に響くだけでエンジンは一向にかかりません


異音がしたとはいえエンジンが再度かからないとなるとこれはいよいよ故障かもしれない。


車が動かないためロードサービスの段取りをしつつ会社に救援を求めないといけません。


今の職場に就職して数年たったAさんでしたが


「なかなか無いトラブルだったためかかなり焦ってしまった」


と言っていました。


エンジンがかからないからといってセルモーターを回し続けると


バッテリー上りの原因になります。


ロードサービスを呼ぼうと車内灯をつけ


ダッシュボードの中にあるはずの保険証券を探すことにしました。


電波が悪いのかラジオからは深夜ラジオの帝王がノイズ交じりの中


視聴者からのメールを読み上げていました。


『次のメール行ってみましょう。東京都○○市在住のaさんからの投稿です』


同じ市内に住んでいて同じ苗字の人が自分が好きなラジオ放送に投稿なんて珍しい


と緊急時の中だったからか妙に親近感を覚えたそうです。


『つい先日の事ですが、運転中に車が故障したんです』


ラジオの帝王はノイズ交じりにaさんからの投稿を読み上げていきます。


「へえ、似たような境遇の人もいるんだなぁ」


Aさんは保険証券を探しますがみつかりません。


『場所は多摩湖のあたりだったのですが』


ガリガリと声にノイズが混ざり、ますます聞き取り辛くなります。


「奇遇なこともあるなぁ」


『夜道をドライブしてるさなかブレーキが壊れて速度が落とせずガードレールに衝突しましてね』


ぞわぞわ!


とAさんの体におぞけが走りました。


全身の毛が逆立つような感覚を覚え耳鳴りがキーンと走ります。


このラジオは一体何を放送しているのだろう?


『ガードレールを突き破って林に突っ込んだ時に木の枝が僕の胸に突き刺さったんです』


ザーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ラジオからノイズしか聞こえなくなり


Aさんの体は金縛りにあったようにぴたっと動けなくなりました。


動けない自分の目線の先にある雑木林の手前には


規制線の黄色いナイロンテープが巻かれた壊れたガードレールがありました


ご存じの方もいるかと思いますが


ラジオの帝王はラジオで怪談を語るのは嫌いで


自分の番組で取り上げるような事はありません。


いつも聞こえてくる軽快なBGMもなく


笑い声を入れているディレクターの息遣いも聞こえません


ラジオから聞こえてきた番組は一体なんの番組だろう?


今日のゲストは俳優の○○だったはずだがそのゲストもしゃべっているようすが無い


そもそも電話の後、私はラジオのスイッチをいつオンにしたのだろう?


この投稿者aというのはいったい…


すると


ガシリ


と突然背後から何者かに両肩をつかまれ


Aさんの耳元で


「んーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」


と大声で唸られたそうです。


あまりの恐怖にAさんは目の前が真っ白になると


そのまま気を失ってしまいました。


Aさんが気が付くとそこは西部球場付近のコンビニにある駐車場でした。


目の前をトラックからおろした荷物を台車を店内に押していく人が見えます。


Aさんはだいぶ混乱し息を整えるのに苦労したそうです。


車のラジオからは深夜ラジオの帝王が俳優の○○と放映中の映画の話題で盛り上がっている声が聞こえてきました。


エンジンは問題なく回っており、通気口からはエアコンの涼しい空気がAさんに当たっていました。


Aさんがスマホを取ると先ほど故障の連絡のために社長へかけたはずの電話の履歴や


LINEのグループへ打ち込んだ車の故障の連絡はすべてありませんでした。


すると東大和市への回収先の住所がポロンと入ります。


どうやらAさんは夢をみていたようです。


Aさんはホッとおちつくと


タバコに火をつけ


ドリンクホルダーにさしっぱなしにしておいた缶コーヒーを一口飲みました。


とても怖い得体のしれないような夢だった。


運転中に眠気に襲われて無意識に最寄りの駐車場に止めたのだろう


時間も10分程度しかたってないし気を取り直して仕事に戻らなければ


意識がもうろうとしているなか良く無事だったなぁと自分で自分を納得させるかのように思考を巡らせました。


まるで本当にあった出来事のようだったなぁと


まだ触られた感触が残る両肩を触ると


べっとりとした泥がついていたそうです。


これがAさんが最近体験した不思議な話です。


如何でしたでしょうか?

宜しければ感想や評価など頂けると嬉しいです。

描きためておらず空いた時間に少しづつ書いています。

また更新できましたらなにとぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 怖かったです。 Aさんの体験談=無事に生還と思って安心というは油断して読んでました。 夢落ちで終わせないところが更に怖かったです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ