最弱の殺し屋
始祖吸血鬼まだまだ序盤だけど投稿します。
両立頑張ります………
2021/09/16追記/名前の描写を追加しました。
……殺し屋。それは、依頼で指定された人を殺めることで収入を得て生活する、闇の職業。
その殺し屋の世界には、明確に強さの序列が存在する。序列が上であればあるほど、依頼はきやすく、報酬も多い。当たり前だよな、殺し屋として強いんだからよ。
……逆もある。序列が下であればあるほど依頼はきにくいし、きても報酬は少ない。
そして俺魔月凰牙は、そんな序列の一番下……つまり、一番弱い殺し屋……最弱の殺し屋ってことだ。
そんな俺に、今日は珍しく違法取引をしている小さな組織を壊滅させてくれと言う依頼が来た。
普段は、学校に潜入してヤンキーに復讐だの、ストーカーになった恋人を闇に葬ってほしいだの、ほとんど私情が絡んでいる依頼だ。
そんな依頼が多かっただけに、俺は、久しぶりにワクワクしていた。
依頼人からは小さな組織とは聞いているが、本当に小さいのなら違法取引を行うことができるかすらもう危うい。そうなってくると、バックにデカい組織が絡んでいることになる……。本来なら、こういう依頼は序列上位の奴らに回すべきだろうに……ま、こういう仕事が来るだけありがたいから、文句は言わないでおくか。
んな事を道を歩きながらブツブツ脳内で言っていたら、情報の場所に着いた。
そこは、コンクリートで出来た推定五階建てぐらいの灰色の縦長ビルだ。側から見ればただの事務所に見えるな。違法性なんて何もなさそうだ……だが。このビルは、不審な点もいくつかある。まず、窓が少ない。その上、中が見えないようにカーテンが閉められている。この時点で怪しさ満点だ。次に、ただの事務所にしちゃ、厳重すぎる施錠具合。入り口らしき扉は、あれは……カードと指紋認証にパスワードか……いや、セキリュティ高すぎな。普通の事務所のセキリュティは、精々カードか指紋認証とパスワードのどっちかだろ。
……はぁ。これ、本当に小さい組織なのかよ?今の小さい組織ってのは、ここまで水準が上がっているのか……?
俺は依頼人からの情報に脳内で文句を言いつつ、こう呟いた。
「事務所内に『転移』」
呟いた瞬間視界が一瞬閃光に包まれ、光が消えて目に映ったのは、透明な小さい袋に入った白い粉を、受け渡ししている現場だった……!
……あ、ヤベ。
まあ、当然その現場が俺から見えるということは、相手からも俺が見えるわけで。俺は、すぐに見つかった。
取引をしていたのは、依頼人の情報通り、黒いハット帽に黒服黒ズボンを着た、推定身長170cmの男と、いかにもグレてますよって金色の髪をしている若い男……大学生ぐらいか?だった。
見つかっても俺が呑気に相手を観察しているのには、理由がある。
コイツらが俺よりも弱いからだ。
俺は確かに最弱の殺し屋だ。だがな、最弱でも殺し屋である以上、一般人よりは遥かに強いんだよ。
俺が観察した限りじゃ、生きるか死ぬかの死線を、コイツらは経験したことが無い。俺は、いくつもの死線を乗り越えてここにいる。……つまり、俺にとっちゃコイツらは赤子同然ってわけだ。最弱でも殺し屋なんだよ、俺は。
……さて、さっさと依頼を終わらせるか。
俺に気づいた金髪の男が俺に近づき殴りかかる……が、俺はそれを右手で軽々と受け止める。
「なっ!?」
金髪が驚きの声を上げるが、気にせず金髪の腹に左足で蹴りを入れ、その勢いを利用して黒ハットに近づく。黒ハットは、空中から近づいてくる俺に銃……ピストルだな、を向けてくる。が、その程度で俺は怯まない。
俺は黒ハットの背後に『転移』して、黒ハットを殴って気絶させた。
「……一丁上がり」
……さて、食事といきますか。
依頼人からは、ターゲット達を「好きにしていい」と言われているからな。好きにさせてもらうぜ。
まずは……若くて美味そうな金髪からにするか。
俺は食事の順番を決め、金髪に近づく。
金髪は、俺に腹を蹴られて気絶していた。
……あの程度で気絶するのかよ、弱いな。……まあいい。
俺は、スッと金髪の額に手をかざす。すると、手をかざしたところが眩く光り、数秒するとその光が消える。と同時に、金髪は干上がっていた。
若いくせににげぇ……。んだよ、ぜんっぜん美味くねぇ……。
血液も、魂も、どっちも不味かったぞ、この金髪。どんな生き方をしたら、魂まで苦くなるんだよ!
ヤクをやっていたから、血液が苦いのは我慢する。だが……なんで魂まで不味いんだよ!?ヤクをやっただけじゃ、魂まで苦くならねぇぞ!?
後で輸血パックを口直しに買うか……
気を取り直して、次は黒ハットか。
俺は黒ハットに近づき、金髪と同じように手をかざす。すると眩しく光り、光が消えると、金髪と同じように黒ハットも干上がっていた。
……うっめぇ!久しぶりにこんなに美味いの喰ったかもな。
金髪とは大違い。この黒ハットは、物凄く美味だった。……まあ、輸血パックは買うが。
「さて、これで依頼完了か。」
俺は、干上がった金髪と黒ハットを見てそう呟く。
干上がったあの二人が起きることは、二度とない。当たり前だ。俺に魂と血液を喰われたんだからな。
あー、そうだ。早く発見されるようにしねぇとな。
「『ブレイク:セキリュティ』」
俺がそう呟くと、電子機器が壊れていくような音が事務所内に響く。まあ、セキリュティぶっ壊したからな。事務所内に響いているこの音は、外まで聞こえているはずだ。これで、人が来るだろうな。
さて、見つかる前に退散しますか。
「俺の家のリビングに『転移』」
そう呟くと、視界が一瞬閃光に包まれ、光が収まり目を開けると、そこはよく知る俺の家のリビングだった。
ほんと、便利だよな〜転移って。今は行き先を口に出してるが、脳内で強く念じれば口に出す必要もない。つまり、厄介なやつに追われても、逃げる場所を明かすことなく消えることができるわけだ。
さて……
俺はスマホを取り出し、依頼人に連絡するためのメールを打ち始める。……らいん?それは線なのか?それとも、食いもんなのか?
――数分後
「依頼完了のメール、確認しました。これは今回の報酬です。あなたの銀行口座に振り込んでおきます」
依頼人から届いた確認しましたメールには、そう書かれていた。どうせ、数千円だろうと思ったのだが……
「は?十万?」
思わず、声に出た。
メールに書かれている振込金額に、十万とあったのだ。
「夢じゃないよな?」
俺は、自分の頬を思いっきり叩く。
いっってえ!
痛かった。それはもう、凄く痛かった。
……夢じゃ、ないらしい。
まさか、あの情報が漏れて……?いや、それはあり得ねぇハズだ……俺の能力で、情報を書き換えてんだから。この書き換えを破れんのは、殺し屋仲間で戦友のアイツぐらいだ。普通の人間には破れねぇ……。
まあ、今はいいか……。
俺は、久しぶりの大金報酬に数分間驚愕したままだったが、報酬は報酬だ。ありがたく使わせてもらう。
貰った報酬で輸血パックと……ファミレスにでも行くか。最近流行りのたぴおか?とやらを買ってみるのもありだな……。
貰った報酬を何に使うか考えながら、俺はウキウキで家を出るのだった……
殺し屋をテーマにした物語は初めてだったんですが、どうだったでしょうか?
それと、戦闘描写、背景描写、人物描写など、改善点があればいつでも言ってください。
それでは、また次のお話で……