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家庭訪問①

 サッカーを続ける宣言をしてから早1ヶ月が経った。

 6月上旬、中間考査と体育祭という行事も終わり、クラス内の雰囲気は期末考査へと移り変ろうとしていた。

 体育祭で意外だったのが、新之助がしれっと応援団に参加していたことだ。

 俺が生徒会の仕事を終えて帰る頃によく会うなと思っていたら、応援団のダンスの練習で残っていたらしい。

 つくづく行動力のある奴だなと思う。


「期末試験は勉強会をやりたい!」


 そんな新之助が帰りのホームルーム終了後、唐突に騒ぎ始めた。

 そんな新之助を見て、俺やニノや梨音や八幡は「またか……」と呆れつつも構ってあげる優しさを見せていく。


「どうした突然」


「中間テストの結果がこの前返されただろ?」


「ああ」


 それぞれの授業で試験の結果を返された。

 俺は元々勉強はできる方なので、各教科70点以上は取れていた。


「俺の点数は知っているか」


「凄い自慢してたよね。赤点取っちまったぜーって」


 梨音の言う通り、何故か赤点を取っておきながら馬鹿自慢していたおかげで知りたくもないのに大まかな点数を知っている。

 全体的に良くなかったはずだ。


「よくもまぁ堂々と見せられるもんだなと感心したよ」


「うるせ! 今回は俺の苦手分野だったんだよ!」


「苦手教科とかではないのね……」


 というかここにいる奴は基本的に新之助を除いて勉強ができる奴が多いな。

 梨音も俺と同じくらいだし、八幡とニノはクラス内でもかなり上位だ。

 浮いてるのは新之助だけか。


「でもサガー君、保健体育は100点満点だったよね」


「は? 何だそのかたより方」


「…………今回の範囲ってアレだったよね」


「性知識に関してね」


「ちょっと冬華! ストレートに言い過ぎ!」


 梨音が少し顔を赤くしながら八幡に噛み付く。

 ピュアかこいつ。


「普通それを自慢するだろ」


「知ってて当然の問題で満点取っても自慢できねーだろ。知識だけじゃなくて経験としても知っとくべきなのに」


「なにそれなんかエロい」


「とにかく! 俺は今回の中間テストを踏まえて勉強を教えてもらいたいわけよ!」


「僕は別に構わないけど、サガー君がそんなこと言うなんて柄じゃないよね」


 ニノもそこそこキツいこと言うな。

 新之助の普段の言動のせいでそんな認識になってるんだろうけども。

 でもニノの言う通り、赤点取って自慢するような奴が急に勉強したいなんて、何か裏があってもおかしくないよな。


「なに企んでるんだ?」


「なんも企んでねーよ! 別にユキセンに『期末もこのままだったらお前、留年も視野に入れとけ』って脅されたわけじゃねーし!」


 お前ホント宇佐木先生と仲良いな。

 ユキセンとか言っても怒られなくなったのは流石だよ。

 継続は力なりみたいなもんだな。


「理由絶対それよね…………。でも私も勉強会には賛成。新之助に教えるって言うのはアレだけど───」


「どれよ」


「国語が苦手だから私も教えて欲しいのよね。ニノは古典できるんでしょ?」


「人並みだけどねー。八幡さんだって点数が取れてないわけじゃないじゃん」


「あと一歩が届かなくって。どうしても古典の点数が低くなりがちなのよね」


「あ〜アレは苦手な人はずっと苦手だよね。難しいと言えば───」


 頭良い二人の会話が止まらんくなってしまった。

 勉強の話でここまで盛り上がれるのも珍しい。

 提案者である新之助が置いてかれてしまっているぞ。


「ところで修斗は生徒会大丈夫なのか?」


「ああ、最近はもうやることはあまりないからな」


 大きめの行事が終わった今、俺達のやる仕事は少ない。

 なので前ほど生徒会室に入り浸ることもなくなった。

 それに加え俺は一月前、神奈月先輩にサッカー続ける事を伝えたため、放課後は基本的にリハビリをするために病院に足繁く通っている。

 神奈月先輩もそれを承知して融通を効かせてくれているのだ。


 当然、すぐに状態が良くなるわけではないが、確実に足の状態はいい方向へと向かっている…………と思うことにする。

 思い込みの力が大事だというのも聞いたことがあるしな。


 そのため新之助の提案した勉強会にも参加することができるというわけだ。


「ねぇ修斗」


「ん?」


「勉強会するならもう一人誘いたいんだけど……良いかな?」


「誰だよ」


 俺の知らない人を連れて来られても正直困る。

 勉強の前に親睦を深めなくちゃならなくなるからな。


「きいなんだけど……」


「前橋? いいけど何で?」


 意外な人物だったな。

 もちろん俺は良いけど、人見知りのアイツが来るか?


「きいのテスト結果見たんだけど…………良くなかったんだよね」


「oh……」


 勉強出来ないアホの子タイプだったか……。

 それも梨音が心配するレベル。

 クラス内でも孤立してそうだし、勉強教えてくれるような友達とかいるのか気になるよ俺。


「知らない人だらけだけど来るって言うと思うか?」


「まぁ……人と関わるのが嫌なわけじゃないから……」


「嫌そうに見えるけどな」


「そんなこと言わないの」


「へいへい。新之助、一人追加でもいいか?」


「女の子なら大歓迎」


「極上の美少女」


「絶対連れてこい」


「きい、やっぱり呼ぶのやめようかな」


 なんでじゃ。

 こんだけ勉強できる奴がいるんだから連れてくるべきだろがい。

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