表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/218

鷺宮=アーデルハイト=弥守④

 ヴァリアブルの選手がアップを始めた。

 瑞都高校の練習風景を見た限りでは、ヴァリアブルのBチームの方が圧倒的に戦力が上だった。

 ドイツでパパの仕事を手伝わされて色んな選手を見てきたけど、今後の成長次第で化けると思わされたのはヴァリアブルの選手がダントツで多かった。


 私の中のナンバー1はもちろん修斗だけど、それに僅差で次いでいるのは神上だった。

 あの個人技には私でなくとも衝撃を受けさせられるし、なによりキャプテンシーがある。

 クセのあるヴァリアブル世代をまとめてきたからか、責任感があり、試合外での監督やコーチ、取材陣からの評価が高い。

 修斗に唯一足りていないものとも言える。


 そして城ヶ崎。

 既に同世代でトップとも言えるフィジカルの持ち主。

 強靭な体と同時にブレることのない体幹から繰り出されるシュートはまるでスウェーデン代表のイブラヒモビッチを彷彿とさせる。


 この反則的な二人がFWに存在している時点で瑞都高校の勝ち目はほぼ0に近いと言っても過言じゃない。

 プロではそんなことはないが、高校サッカーではそれほどワンマンチームが強いと見ている。

 その二人に加えて荒井、台徳丸、友ノ瀬、狭間、大門と他のクラブチームでは間違いなく注目株となる選手がこの世代には揃っている。

 だから瑞都高校が勝つ可能性は0に近いのではなく、0ね。

 それが分かっていながら大会前の大事な時期に練習試合を組ませてもらって。

 申し訳ないけど修斗のために瑞都高校のサッカー部には犠牲になってもらう。

 恨むならワンチャンあると思って許可した監督さんを恨んでね。



 試合が始まり、1点目が決まるとその後は瑞都高校の守備がガタガタになってしまった。

 結果、前半だけで6ー0。

 ベンチへと引き上げる瑞都高校の選手の大半が心を折られた表情をしていた。

 きっと狩野隼人が入って今年こそは全国大会に行けると思ってたのね。

 実際行けたと思うよ、レギュラーメンバーは悪くない素質を持ってると思う。

 でもごめんね、貴方達が相手したのはユース、高校の全てを含めたチームのトップだから。


「こんなのってあんまりだよ……先輩達が築き上げてきたものが全部、まるで無かったことのように叩き壊されて……! それほどまでに実力差があるの……?」


「瑞都高校は決して弱くない。だけど、今のヴァリアブルとはレベルが違いすぎる。試合を組むにはあまりも早計で、練習にもならなかったな」


 修斗も同じ感想だったみたいだ。


「修斗、今の試合を見て何か思うところはあった? 例えばもう一度ヴァリアブルに入りたいとか……」


 私はこのタイミングで一歩踏み込んだ質問をしてみた。

 当時よりもレベルアップをした選手達を見て、修斗の中で何かが変わってくれているのではないかと。


「刺激は受けたよ。でもヴァリアブルが俺を取るわけがないだろう。一度放出した手前、格好がつかないしそもそも足の問題が何も解決してないからな」


「医者には何て言われてるの?」


「完治には時間が必要……だとよ。それがいつになるかは分からないみたいだ。一生治らないかもしれないし、1年……2年で治るかもしれない」


 やる気はない、とは答えなかった。

 それはつまり。


「ふ〜ん…………。じゃあ気持ちの上ではサッカーを続けたいってことよね……」


 それが聞けただけでも私にとっては充分だった。

 私が調べた中ではサッカーを続ける気がそもそも無いという話だったのが、今では怪我さえどうにかできればやりたいという気持ちになってる。

 いける。

 これはいけるわね。

 怪我の部分はリハビリを続ければ可能性は全然あるわけだし、ヴァリアブルの出戻りに関しては入団テストを受ければ修斗なら間違いなく受かるし問題ない。


 後一押し。

 本人が自主的にサッカーを続けると言う一押しが必要。

 とすれば…………やっぱりあの人が適任な気がする。


 私は修斗の恩師とも呼べる人物、赤坂あかさかれん監督に接触してそれとなく修斗が練習している公園を教えた。

 この人ならきっと修斗にとって良い刺激になるだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ