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鷺宮=アーデルハイト=弥守③

「分かった? サッカーが出来なくとも修斗は色んな人に必要とされているのよ」


「鷺宮の言う通り、人の価値は一つだけじゃないぞ優夜」


「はっ、まぁええわ。悪いが修斗、俺達はもうあの頃とは違う。例えお前が今からサッカーに復帰しようが、もう間に合わへん。この試合でそれを証明させたる」


 私の言ったことに納得はしていないものの、城ヶ崎は修斗に対して捨て台詞を吐くとグラウンドの方へ向かって行ってしまった。

 ふん、まだまだ子供ね。


「修斗どうだった!? 私の援護射撃!」


「あ、ああ。助かったよ」


 助かったと言いつつも修斗の顔が若干引きつっているのはどうしてだろう。

 そんなに私の援護射撃に感動したのかしら。


「修斗、優夜のことは気にするな。アイツはライバル視していた修斗がサッカーを辞めて、そのまま勝ち逃げされたと思っているんだ。ああ見えて、当時修斗が怪我をさせられた時に誰よりも相手にキレていたのはアイツだからな」


「ある意味純粋なだけ、か……。試合、頑張れよ。俺も見てるからさ」


「ああ。お前にガッカリされないようにするよ」


 神上と修斗が握手を交わしていた。

 城ヶ崎はともかく、神上は修斗がサッカーを続けるのに協力的だから今後も使えるね。

 修斗は神上と一番仲が良さそうに見えるし。


 城ヶ崎に続いて神上もグラウンドに向かった後で、私はしれっと修斗に尋ねた。


「試合、見るの?」


「そのために来たからな」


 私は心の中で一回転ジャンプをした。

 どうやら修斗はここでヴァリアブルが試合をすることを誰かから既に聞いていたみたいだ。

 どこかの誰か知らないけど伝えた人ナイス!

 たぶん神上や城ヶ崎と会うつもりは無かったみたいだけど。


 修斗と二人で試合を見れると思っていたが、グラウンド横のネット裏に着くと女の子が修斗を手招きしていた。

 クラスでは見たことがないから違うクラスの女の子かな、生徒会にもいないはずだし……。


「あっ、高坂っちー…………と、どなた?」


「休学明けで昨日から学校に来た……」


「鷺宮=アーデルハイト=弥守よ」


 どなたと聞きたいのはこちらの方だけど。

 まったく、修斗は女の子とばかり知り合って、そんなことにうつつを抜ぐらいならサッカーのことをもっと考えて欲しいよ。


「桜川美月です! もしかしてハーフさん!? 宮っちって呼んでいい??」


「好きにすれば」


 凄いグイグイ来る。

 あんまりこういう子は得意じゃないけど……でもここで待っていたということは修斗に試合があることを伝えたのはこの子なのよね。

 なら仕方ない。

 ファインプレーに免じて、仲良くしといてあげる。


「ま〜た高坂っちは綺麗な女の子連れて〜、梨音っちが怒るよ〜」


「別に何人も連れて歩いてねーよ。それに何で梨音の名前が出るんだ」


「何でって……そりゃあ、ねぇ?」


「梨音っちに前橋っちに宮っち、あと神奈月先輩とかもそうだよね。いやぁ可愛い女の子達からモテモテですなぁ」


「つーかその括くくりなら桜川も入ってんだろ」


「ええっ!? いやいやいや、私はほら、可愛いくはないから……」


「いや、側はたから見たら充分可愛いだろ」


「へぇ!?」


「サッカーやってたからか引き締まった体に、適度に焼けてる健康的な日焼け肌、ショートカットの髪型はいかにもスポーツやってますって感じで似合ってるしな」


「あわわわわ……! そ、それ以上は、ストップで!」


「はぁ? お前が話し始めたんだろ」


「いやもうホント……これ以上はお腹一杯というか…………恥ずかしすぎて気絶しそうというか……!」


 何を見せられているんだろう。

 や、別に修斗がこれでサッカーを続けるキッカケになるなら全然いちゃついていても構わないんだよ?

 でもこれは関係ないよね。

 ただいちゃついているだけよね。

 今の修斗に価値はないから他の女の子と仲良くしてようが別に気にしないけど、でもここまで除け者にされるのもちょっと、ね?


「…………修斗」


「うわビックリした! 急に腰をつつくな弥守」


「あんまり見せつけられるのも癪だったから」


「何だそれ」


 修斗はサッカーのことだけ考えていればいいのよ。

 そこに私の存在が無くても構わない。

 あの時の煌めきを修斗が取り戻してくれるのなら、私はあらゆる障害物を壊してみせる。

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