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新聞作成④

「ちち違うよ若元、本当に事故なの」


 前橋は急いで俺の上から移動すると、いまだ落ち着きがないように弁明した。

 なんとなく、何も悪いことはしていないと言い張れるのだがとりあえず俺は正座の形になった。


「そうなの?」


「なぜ前橋が話すとすぐに信じるんだ」


「日頃の行いってやつじゃないかい?」


 部屋を覗き込むようにして神奈月先輩が言った。


「それならなおさら信用してもらえるはずなんですが」


「疑いなく言い切る自信、私も見習うところがあるね」


「そんなところ見習わなくていいんですよ。問題点はこんな個室で二人がくっついていたというところにあります。きいは事故だって言ってますけど…………修斗に脅されている可能性も」


 おいおい想像力豊かすぎるだろ。

 あれか、梨音のシナリオでは俺が前橋を襲ったという考えにでもなっているのか。

 だとしたら俺が前橋の上になってるのが普通じゃね?


「大鳥先輩助けてください。女子によって社会的に殺されかけてます」


「君はまともだと思っていたのにこんな問題事を起こすなんて…………ああ……思い出したくない過去の記憶が……!」


「大鳥先輩? ちょっと大鳥先輩?」


 急にどうしたあの人は。

 変なトラウマスイッチでも押したか?


「あの時もそうだ……諌貫いさぬき先輩があんなこと言い始めるもんだから僕はあんな目に……!」


「大鳥先輩がバグったんですけど」


「去年も定期的にあったから気にしないで大丈夫だよ〜」


 定期的にあったのか……大鳥先輩も苦労してんな。


「わ、私がバランス崩して高坂に倒れ込んじゃっただけだから……本当に高坂は悪くなくて、その……!」


「冗談だよ、ごめんねきい。たぶんそんなことだろうな〜とは思ったんだけど、修斗を少し懲らしめなきゃと思って」


「え、何で? 何で俺懲らしめられなきゃいけないの?」


 いよいよ前橋が泣きそうな顔で訴え始めたので梨音が慌てて訂正したが、その訂正の仕方に俺は納得していないぞ。


「そもそもサッカー馬鹿の修斗が、可愛いきい相手にどうこうできると思ってないしね」


「おっと今の発言はイエローカードが出るぞお前」


 累積2枚でレッドカードだが、過去の発言を含めると累積100枚ぐらいに達しているはずなので強制退場してもらってどうぞ。

 だいたい女子を手玉に取る事ぐらい、ドリブルするよりも簡単だっつーのナメんな。


「つまりこれまでのリオの態度はシミュレーションだったわけだね」


「上手いこと言いますね会長」


 大鳥先輩、しれっと元に戻ってるよ。

 さっきまでの俺の右腕が疼くぜ……! みたいなキャラはもう終わったんか。


「とりあえずキイとシュートの件は事故だったということで、野次馬気分のみんなは仕事に戻ろうか」


「俺が汚名着せられただけで終わったんだが」


 これが本当に最適解な落とし所なのだろうか。

 何一つ悪くない俺が悪者に仕立て上げられかけただけなんだが。

 謝罪の一つもあってもいいと思うんだが。


「…………ご、ごめんね高坂」


「気にすんなって!」


 前橋に謝られたらそりゃ許すよ!

 前橋もある意味被害者みたいなもんだからな!

 本当に謝罪すべき人物は他にいるわけで。


「なーに? その謝罪の一言もあってしかるべきだろみたいな目」


「全部自覚あんじゃねーか」


「ちなみに新聞はどこまで進んだの?」


 話逸らしやがったな…………まぁいいだろう。

 今はこんな不毛なやり取りよりも建設的な話をした方が効率が良い。

 今回の件はいつか身体で支払ってもらうぜ。


「簡単なレイアウトと書き込む内容、今はその内容を前橋に代打ちしてもらってる段階だ。4項目の内の一つ目ってところだな。梨音は?」


「私はみんなをデフォルメちっくに描いたぐらいかな。細かい部分は神奈月先輩に見てもらって……って感じで」


「俺も一度見てもらうか……」


 恐らく最初はダメ出しを多くされるだろう。

 それでもトライアンドエラーだ。

 何度も挑戦して精査して、生徒の前に出しても恥ずかしくないような生徒会新聞を作ってみせる。

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