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推薦基準②

「いいんですか? そんな簡単に決めてしまって」


「いいのいいの。変な人が広報に立候補するより、若元さんみたいな人に決まってた方がありがたいもの」


 変な人代表みたいな人が何を。


「っと、これで高坂君の用件は終わったわけだよね? そしたら今度は私の用件だ」


「先輩からも何かあるんですか?」


「もちろん。個人的に昼休みに来た理由は自分の用件を済ませるためなのが目的だからね」


 元々神奈月先輩からも話があったのか。

 そりゃお互いにとって丁度良かったわけだ。


「私がいても大丈夫な話ですか?」


「もちろん。むしろ広報になるのであれば若元さんにも聞いておいて欲しい話だよ。高坂君は昨日、私が他校のところに行っていたのはキイから聞いているよね?」


「はい」


「ウチの生徒会は毎年、他校の生徒会と意見交換を組み交わす交流会が開かれてるんだ。漆間うるしま大学附属高等学校って知ってるかい?」


 漆間大学附属高等学校……?

 この辺りにある学校じゃなさそうだな。

 大学ってついてるし私立だとは思うが。


「知らなそうだね。まぁここから3駅ぐらい離れてるから仕方ないとは思うよ。昨日、私はそこに行って新生徒会長と話してきた。向こうはこっちよりも選挙が早くてね」


 それで昨日はいなかったのか。

 新しい会長と顔合わせとかそういうことか?


「それで毎年の交流会なんだけど、ただ普通に話していてもつまらないだろ? だから私達は毎年、生徒会同士でスポーツ対決をしてるんだよ。もちろん罰ゲームありでね」


 神奈月先輩がニヤリと笑った。

 罰ゲームあり、というところに楽しさを見出しているんだろう。

 悪い笑みしてる。


「今年もそれをやるんですか?」


「もちろん。そこで、今年は何をやるかという話になったんだけど…………高坂君はサッカーで有名だったって話してたよね?」


「あー…………まぁそうですね」


 なるほど。

 俺がサッカーをやっていたから、俺の力を借りて相手の生徒会をボコして罰ゲームさせたいと……。


 結局そういうことか。


 道理でおかしいと思ったんだよな。

 生徒指導してるからって普通、生徒会に勧誘しようと思わないもんな。

 神奈月先輩は計算高そうな人だし、大鳥先輩も生徒会に入るのにはよく考えた方がいいと釘を刺してきていた。

 最初から、向こうの生徒会に勝つために俺を誘っていたわけか。


 だったら生憎だったな。

 俺はサッカーできないぜ。


「申し訳ないですけど、前にも話した通り俺は怪我してサッカーをやめたんです。先輩の力にはなれませんよ」


「え? ああうん。もちろん忘れてないよ。だからサッカーをやろうとは思ってないよ。人数も足りないしね」


 そう言ってアハハと先輩が笑った。


 サッカーはやらないのか?

 じゃあ…………何が目的だ?


「高坂君はサッカーをやれなくなったと話していたけど、まだサッカーもやりたいと話していただろ?」


「そう……ですね」


 前に質問された時、俺は『はい』と即答していた。

 そのことを先輩は言っているんだろう。


「軽く走ったりすることもできると話していた。だから私は思ったんだ。サッカーじゃなくても、フットサルなら高坂君にもできるんじゃないかって」


 フットサル……?

 確か5対5で行うサッカーのミニゲーム版みたいなやつか……?


「人数は生徒会の人数に合った5人と5人。生徒会の活動を知ってもらうために何か体験できるものがないかと思っていたところに交流会のことを思い出してね、フットサルなら怪我した足にそれほど負担をかけなくても出来るんじゃないかと思って、昨日話をしに行ったんだ。向こうも快く承諾してくれたよ」


「それじゃあ神奈月先輩は……修斗のために企画を立ててくれたってことですか?」


「もちろん! 言っただろ? 生徒がより良い学校生活を送れるようにするのが生徒会の仕事だと。私はそこの生徒会長様だよ!」


 神奈月先輩は笑いながら自信満々にピースをした。


 完全に俺の早とちりだった。

 神奈月先輩は俺がサッカーをやりたいという話を聞いてから、ずっと俺のために企画を考えてくれていた。

 俺を庶務に推薦したいという理由が結局本気なのか分からないけど、この人が俺のために何かをしてくれたというのは事実だ。


 めちゃくちゃ良い人じゃないか……!


「もちろんやってみて怪我が痛むようだったら休んでくれて構わない。嬉しいことに、広報候補の若元さんを含めれば、ウチは6人になるからね!」


「えっ! 私、運動あまり得意じゃないんですけど……」


「大丈夫だよ! 私がなんとかするから!」


「…………修斗! わ、私ももしもの時は頑張るからフットサル、試してみない?」


 梨音も俺のことを気遣ってくれて…………っとに、こんなの断れるわけないじゃん。

 むしろ、盲点だったフットサルという案に、俺の心は少し湧き上がっている。

 ボールを蹴ることができる環境が、サッカー以外にもあるんじゃないかと。


「…………是非、お願いします!」

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