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新生瑞都高校①

【高坂修斗目線】


 12月末から年始に掛けて行われた全国高校サッカー選手権において、我らが瑞都みずと高校はベスト16で幕を閉じた。

 プレミアリーグにも所属している青森光聖学園に敗北し、その青森光聖学園は高校サッカーの頂点に立っていた。

 どうやら二連覇になるらしい。


 大会後に改めて俺は狩野隼人に会いに行った。


「残念でしたね先輩」


「伊達に高校界の王者やってねーわあいつら。個々のレベルもそうだが、気持ちの強さが半端じゃなかった。死に物狂いというか」


 試合は0ー2。

 相手は徹底した狩野潰しに来ており、エースを封じられた瑞都は相手の攻勢に耐えることができずに敗北を喫した。


「怪我の方はどうなんだ高坂」


「問題ありません。今のところ支障はないですね」


「頼むぜ高坂。今年のサッカー部のレギュラーはほとんどが俺達3年の代だった。ひじりのやつを始めとした実力のあるやつが揃っていたのが俺にとっての幸運だった」


「それはつまり……1年や2年の戦力には不安があると?」


「早い話がそうだな。だから……お前がサッカー部を引っ張っていってくれ」


 ユース出身で外国のプロチーム契約が決まっている狩野先輩がここまで部活を心配するようになるなんてな。

 人はどう変わるか分からないもんだ。

 それは俺自信にも言えることだけど。


「流石に俺一人ではどうこうできませんよ。それに俺は途中参加の外様です。まずはみんなの信頼を勝ち取るところから始めないと」


「できんだろ。お前なら」


「こう見えて人見知りのコミュ障でして……」


「プレーで黙らせろ」


「無理おっしゃる」


 狩野先輩は鼻で笑った後、俺の肩を一度叩いて離れていった。

 狩野先輩には言わなかったが、戦力に関してはおそらくなんとかなるはずだ。

 来年入ってくる新一年生達。

 俺と一緒に東京ヴァリアブルを打倒してくれる仲間達が。




 4月。

 神奈月先輩や狩野が卒業し、新しく新1年生が入学してきた。

 梨音と一緒に登校したあの時から1年、早いようで長かった1年だった。

 隣には変わらず梨音がいたが、その関係性も俺の今後の人生の歩み方もあの頃とは大きく異なっている。


 大きな掲示板に貼られたクラス表を確認すると、残念ながら梨音とはクラスが別れてしまっていた。


「俺が3組……梨音は1組か」


「残念。腐れ縁が切れちゃったね」


「腐らすなよ。新鮮な縁であれ……って1年前もやったよなこのやり取り」


「そうだね。懐かしいなぁ……」


 他のメンバーを見ると早々に目が付いた奴がいた。

 新之助、同じクラスじゃねーか。

 またやかましいやつが一緒になってしまったな。

 それに八幡も一緒か。結構固まったな。


「佐川君も冬華も一緒じゃない。いいな〜3組」


「でも梨音だって前橋と一緒じゃん」


「え? ほんとだやったぁ」


「ニノは…………隣の4組か。桜川も4組だし、また隣のクラスかよアイツは」


 さすがに部活に入るわけだし頻繁に顔を出してくるようなことはもうしないだろうけども。

 トラウマになっちゃってるよ俺。


 梨音と分かれて教室に向かい、席次を確認したところで後ろの席に座っているやつを見て頭を抱えた。


「なんでお前はまた俺の後ろなんだ」


「仕方ねーだろ兄弟。苗字が近いんだからよ」


 そう言ってニヒルに笑う新之助がいた。


「お前と兄弟とか冗談よしこちゃん。こんな不出来な弟はいらない」


「なんで俺が弟なんだよ。修斗が弟に決まってんだろ。俺はそもそもお兄ちゃん属性だぞ」


「雫ちゃん言ってたよ。世話の焼ける兄で本当に歳上か分からないって」


「雫がそんなこと言うわけないだろ! …………言ってないよな?」


 ちょっと不安になるなよ冗談だよ。


「なんでさっそく喧嘩してるのよ……」


 新之助と言い争っていると、登校したばかりの八幡が呆れたように話しかけた。


「八幡聞いてくれよ! 雫が俺のことを頼りにならないポンコツクソ兄貴って言ってたって修斗が!」


「そこまで言ってねぇ」


「言ってないよな!」


「うーん……」


 少し考えるように頭を捻る八幡。

 というか八幡にそれを聞いてどうするんだ。


「この前、家にお邪魔した時は雫ちゃん、世話が焼ける兄ぐらいしか言ってなかったけど」


 言ってんのかよ。

 冗談で言ったことがマジだったよ。


 あれ、ちょっと待て……。


「…………この前家にお邪魔した?」


「え? …………あっ」


 なんだその口滑らしちゃったみたいな顔。

 お前らまさか……!


「違う違う! 高坂の考えてるようなことじゃないわよ!?」


「そうだぞ修斗。八幡はな、雫のために受験勉強を教えてくれていたから俺の家でお礼も兼ねて合格祝いをやったってだけだ」


 いやでもそれは…………新之助こいつ、八幡の気持ち分かってんのかな。

 俺がどうこう言える立場じゃないのは分かってるんだけどね。

 俺も梨音の気持ちとか全然理解できてなかったし……。


「合格祝いってことは、雫ちゃん瑞都高生になったの?」


「そうなんだよ! いやぁ兄妹揃って同じ高校ってのは感慨深いものだなぁ」


 兄妹揃って私立っていうのも結構凄くないか?

 いくら瑞都高校がスポーツの強い学校だとはいえ、公立よりも私立の方が学費かかるよな。

 それを二人とも第一志望で入れるってことは新之助の家、もしかしてニノほどではないにしろ裕福な家庭か?

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