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神上涼介②

【神上涼介目線】


 高円宮杯プレミアリーグが終了した。

 俺達は全勝で優勝、そしてプレミアリーグファイナルにおいてテオダール神戸を下し日本一となった。最終順位は、


 1位 東京ヴァリアブルユース

 2位 FC横浜レグノスユース

 3位 私立青森光聖学園

 4位 川崎アルカンテラユース

 5位 市立いちりつ陸橋りくはし高校

 6位 鹿島オルディーズユース

 7位 名古屋クラウディアUー18

 8位 私立白龍(はくりゅう)大学附属高校

 9位 浦和ガンズUー18

 10位 町田FCセクトアUー18

 11位 平屋たいらや高校

 12位 前橋まえばし東栄とうえい高校


 となった。


 今のヴァリアブルユースが他とは群を抜いて強いこと自体は俺自信も理解していた。

 それは俺達の誰かが日本代表やトップチーム招集で抜けることが多いにも関わらず、残っているメンバーでも勝ち星を挙げていることが何よりの証拠だ。


 試合や勝負に勝つ事は楽しい。

 だが人には慣れというものが存在する。

 正直に言うと退屈だった。

 トップチームでの経験を踏まえてユースに戻って試合をしても、対峙した瞬間に敵の闘志が消えているのが分かる。

 まるで俺に抜かれるのが当たり前で、取れれば幸運だとでも思っているのかのようだ。

 どうしても物足りなさというものが拭えない。


 そんな折、俺と優夜と流星は監督に呼ばれた。

 話の内容は外国のクラブチームからいくつか打診が来ているというものだった。それにはもちろんクシャスラFCも含まれている。要は海外移籍のことだ。

 返答は今年度末で構わないと言われ、俺達は誰もいない教室へと戻って言われたことについて話し合うことにした。


「海外の話やて。なんややっとかいなてオモタけどな」


「二人はどうするつもりなんだ?」


 俺が二人に聞いた。


「俺は別にアリやと思うで。いずれ海外挑戦はするつもりやったんやし、早い方がええやろ」


「俺は……まだ決めかねる。トップチーム昇格なら分かるが……まだやり残したことがある」


 優夜と流星で意見が分かれた。

 優夜は元より海外挑戦には乗り気だった。


「ヒヨってんか流星」


「ヒヨってるわけじゃない。俺はただ海外では納豆が食べれなくなるかもしれないことに戦々恐々としているだけだ」


「真面目な顔して何言うてんねん……。涼介はどうするつもりや」


 このまま国内に残っていても俺自身のモチベが上がらなければ、いずれ頭打ちになる恐れがある。

 気持ちの強さは成長率に繋がる。

 移籍するクラブにもよるが、上を見るならば早めに移籍するのもアリなのかもしれないな。


「俺は───」


 答えようとしたところで教室の扉がガラガラと開いた。

 入ってきたのは鷺宮だった。


「あら、トップ3がお揃いで良いところに」


「なんや鷺宮やないか。まだおったんかい」


 鷺宮が近くの机に腰掛けた。

 椅子を使えばいいのに、はしたないな。


「良いところっていうのはどういう意味だ?」


「貴方達が興味あるであろうニュースを持ってきたのよ」


「言うてみいや。その代わりおもんなかったらタダじゃ───」


「修斗が来年、高校のサッカー部に入部するそうよ」


「ついに来たか!」


 俺は思わず席を立ち上がった。

 俺と同じように優夜と流星の表情も驚きの表情へと変わっていた。


 にしても部活だって?

 入るとするならユースだと踏んでいたが……。高校の部活とはいえ、俺にあれだけの決意表明をしたんだ。お遊びで入ったわけではあるまい。

 ともすれば…………強豪校に転入するような形か?


「高校はどこなんだ?」


「修斗が今通っているところよ。私もいた瑞都高校」


「雑魚いとこやないか!」


 優夜の言い方はともかく、確かに瑞都高校は春に戦ったことがあったが大したチームではなかった。

 スタイルこそ似ていたが、その練度はヴァリアブルとは比べるまでもなかった。


「けっ、修斗は結局諦めてるんちゃうか。一線に復帰することは」


「そんなはずはないと思うが……。だが修斗が部活に入ったということは今後、俺達と戦うことはなさそうだな」


 修斗がサッカーを再開してくれることは僥倖だったが、残りの高校生活で関わらないのであれば、海外に行こうとも同じことか。


「そうでもないわよ。今年の瑞都高校、関東1部のプリンスリーグへ昇格を決めているの。これがどういう意味か分かるかしら」


「あん? それがなんやっちゅう───」


「再来年、プレミアリーグに来る可能性が?」


 流星の言葉にハッとした。

 来年のプリンスリーグで勝ち抜き、プレーオフに勝利すればプレミアリーグへと上がってくる。

 そして俺達ヴァリアブルと対決へ───。

 想像しただけで身震いが起きた。

 修斗がユースではなく部活を選んだ理由は分からないが、俺達との戦いを捨てたわけではなかったのだ。


「それだけじゃないわ。プリンスリーグにはヴァリアブルのBチームもある。修斗がどこまでやれるのか見ることもできるわよ」


「…………優夜、流星」


「なんやねん」


「なんだ」


 俺達の世代を象徴する本物の天才、高坂修斗。

 修斗と今のこのヴァリアブルで戦うチャンスがあるのなら、それが俺にとっての最優先だ。

 少なくとも、来年の瑞都高校の結果までは待つ。


「二人の力を俺に貸してくれ。海外挑戦は一旦お預けだ」


「涼介が頼み事するなんて珍しいやん。言われんでもやったるわ」


「やり残した事があると言っただろう。目処が付きそうだ」


 優夜も流星も俺の話に乗ってきてくれた。

 修斗のシンパでもある流星はともかく、優夜はなんだかんだ言いつつも修斗のことを気にしている。

 こういうのなんて言うんだったか。


 ともかく、今後の俺自身のモチベとしてもだいぶ上がるトップニュースだ。

 来年以降の楽しみがまた見つかったな。

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