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聖夜準備④

 生徒会からの帰り道、暗くなった道を梨音と一緒に歩いていた。

 こうして二人で帰るのも久しぶりだ。

 別に毎回一緒に帰っていたわけでもないが、文化祭以降は一度も無かったことを考えると1ヶ月以上ぶりになる。

 自分の歩幅では少し早いので、梨音に合わせて若干ペースを落とす。


「みんなにちゃんと説明できて良かったね」


「良い人ばっかりだよ全く」


「きいも喜んでたし…………そういえば美月には話した?」


「何を?」


「部活に入ること」


 言ってないな……。

 今日は生徒会のこととクリスマスのことばかり考えてたから、そこまで気が回らなかった。

 サッカー部に入ること自体、そんなに多くの人には話してないし。


「桜川のことだから、自分で情報収集して知ってるんじゃないか?」


 新之助が情報横流ししてたりするし。


「それとこれとは別でしょ。あの子が一番修斗がサッカー部に入ることを熱望してたんだから。ちゃんと修斗から教えてあげなさい」


「おかんかよお前は」


「彼女でしょ」


「…………」


「…………」


 梨音は自分で言っておきながら恥ずかしくなったのか、顔を赤くして背けた。


「恥ずかしいなら言うなよ」


「修斗が何も言わないからでしょ! いいから、美月に連絡してあげて!」


「はいはい」


 俺は携帯を取り出して桜川に連絡した。

 時間的には部活が終わっているのか微妙な時間だ。

 もうすぐ全国大会もあるって言ってたし、もしかしたら遅くまでやっているのかもしれない。


『プルルルッ───ガチャ、はいはーい! 桜川です!」


 ワンコールで出るとは。


「俺だよ俺、俺俺」


「詐欺紛いのことしないの」


『高坂っち? 電話なんて珍しいねどうしたの?』


「今大丈夫?」


『大丈夫だよー! ちょうど部活が終わって更衣室に戻ってきたところだったからね。着替えてるとこなんだけど、どうせならビデオ通話にしてあげようか?』


「ぜひ───」


 お願いしますと言おうとしたところで梨音が睨みを聴かせて、もとい睨みを利かせているのが見えた。

 隣にいるのが新之助だったら即答だったんだが嫌われたくないから自制しよう。


「セクハラ裁判が開廷しそうなことは口にしない方がいいぞ。なぜなら俺が裁かれるから」


『えへへ! 冗談に決まってるじゃん!』


「実は桜川に話しておきたいことがあって……」


「なになに? 相談事ならもちろん乗るよ?」


「俺、サッカー部に入ることにしたから」


 ガチャンガタン! と電話越しに大きな音がしたので思わず携帯を耳から遠ざけた。

 強盗でも侵入してきた?


「もしもし、桜川?」


 かなり遠いところから、もうマジムリだの呻く声だの他の女子の心配する声だのが聞こえてきた。

 あれだけ誘ってきていざ入るって言ったら嫌がるってことはないと思うけど……。


「どうしたの?」


「分からん。なんか喋らなくなった」


「ちょっと貸して」


 俺は梨音に携帯を渡した。

 通話を聞いて梨音はすぐに何かを察していた。


「どう?」


「これ限界化してるね」


「は?」


 なんだその日本語。

 知ってる日本語でお願いします。


「分かりやすく頼む」


「えーっとね、要は私が描いた絵を見た新波先輩状態というか……」


「ピンと来たわ」


 なんて分かりやすいんだ。

 なんとかって作品のキャラを見たあの時と同じってわけか。

 ということはつまり、俺がサッカー部に入ることを喜んでくれているって解釈でいいんだよな。


 梨音から携帯を返してもらい、もう一度呼びかけてみた。


「おーい、桜川?」


『…………ごめん、ちょっと興奮して携帯落としてた』


 興奮て。


『本当に? 本当に嘘じゃないよね? 夢じゃないよね?』


「今すぐってわけじゃないよ。来年度の新入生達が入るタイミングぐらい」


『うわぁみんな高坂っちがマジで部活入ってくれるって! えっ? いやほら、私が1学期にストーカーしてた7組の人!』


 やっぱストーカーしてた自覚あんじゃねぇか!

 普通に犯罪だからおおやけに言うなよ!


『嬉しいなぁ、ほんとに嬉しい!』


「そこまで喜ばれるとさすがに照れるな。とにかく、色々世話になった桜川にはちゃんと伝えておきたかったから」


『えへへ〜。そんなにお世話なんてした覚えはないんだけど、高坂っちにそう言って貰えると元気出るなぁ』


「俺こそ桜川からは元気貰えるから話せて良かったよ。じゃあまた今度」


『あ、うん、ありがとー! 直接会ったらまた詳しく聞かせてね!』


「了解」


『バイバーイ!』


 通話を切って梨音を見るとじっとりとした目で何か言いたげな表情をしていた。


「なんだよ」


「別にー? 美月と話す時はなんかテンション高いなーって」


「桜川に引っ張られるんだよ。いつもテンション高いじゃんあいつ」


「気持ちは凄い分かるけどね。美月、明るくて人当たりもいいからみんなからも人気だし」


 なんだなんだ。

 言葉に少し棘を感じる。

 梨音が桜川に電話しろって言ったくせに…………ん? これってあれか? 俺が桜川にいい顔しすぎたからもしかして…………。


「嫉妬してる?」


「す、するわけないでしょそんなことで! 別に私は修斗の彼女になったからって、束縛したりとかそんな面倒な人になんか……」


 付き合ったことで俺達の関係が劇的に変わったわけではない、なんて思っていたけど、梨音はそんな風には思っていないのかも。

 幼馴染から恋人へと変わったことに梨音は特別な想いを持っているのか?

 俺だけでなく梨音もだと思うが、初めてできた関係性にお互いの距離感がまだ掴めていないのかもしれない。

 俺はこれまでと同じ距離を、梨音はさらに一歩踏み込んだ関係性を。

 そのすれ違いが良くないことぐらい、俺にだって理解できる。

 だとすればやる事は一つだ。


「梨音、24日は空いてる?」


「えっ? 空いてるけど……」


「じゃあデートしよう」


「っ!?」


 俺から一歩踏み込んで梨音が考えている関係性に歩み寄ろう。

 それに梨音について一つ分かったことがある。

 梨音は意外と押しに弱い!

 デートプランも確認できたし、スーツで花束持って行きさえしなければ大丈夫だな!

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