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エピローグ

『テンテケテンテン♪テンテケテ───ピッ』


「ハァイ」


『鷺宮、俺だ』


「あら、狩野じゃない」


『お前の要望通り、高坂に動画とリンクは送っておいた』


 仕事が早くて助かるわね。

 やっぱりこういう時に動いてくれる駒がいるのは良いものね。


「ありがとう」


『別にこれぐらいのお願いなら聞くのはやぶさかじゃないがな。つーか自分で送った方が早くねぇか? 知り合いなら連絡先ぐらいは知ってるんだろ?』


「こっちにも事情があるのよ」


 修斗には別れを切り出した時に、金輪際私から連絡は取らないって伝えてあるもの。

 そのルールを破るのは今後に支障をきたすかもしれないし。


『…………俺はお前の親父さんのクラブでプレーさせてもらうから今回はお願いを聞いたが、今度からはやめてくれよ』


「そうね。なるべく善処するわ」


『あのなぁ……』


「それよりも、修斗はその動画を見てどんな反応してたかしら」


『反応? そこまでは知らねーな。別れる直前に送ったから』


 まったく。そこが肝心だっていうのに。


『……鷺宮が何を企んでんのか俺は知らねーが』


「あら、企むなんて人聞きの悪い」


『俺とクラブ契約したのも高坂のためだったってのは察してるんだよ。俺をダシに使ったのは許せねーが…………俺にもメリットがあるのは間違いない』


「ええ、そうでしょうね」


 誰も損するようなことにはなっていないはずだもの。


『だけど俺も仕事はさせてもらった。お前にとってはマイナス行為かもしれないけどな』


 マイナス行為?


 私の目論見は修斗の危機感を煽ること。

 そのために狩野隼人に連絡して、修斗に私が用意した動画を見させるよう享受した。

 特に神上達は予想を遥かに超えた結果を試合を残して、今後もトップチームでの起用が増えることは間違いないでしょうね。

 テレビでの露出が増えれば増えるほどそれは、修斗の首を絞める格好の材料になる。


 それを邪魔するようなら…………狩野も容赦なく消すつもりよ。


「仕事って何かしら」


『高坂を部活に誘った』


 部活って…………学校の部活のこと?


「なんだ、そんなこと」


『意外だな、怒らないのか? 鷺宮は部活を下に見ているものだと思ったが。心酔してる高坂が部活に入るのをお前は良しとしないんじゃないか?』


「浅いわね、考えが。修斗は部活になんて入らないわよ」


『なぜ言い切れるんだ』


「修斗のことなら何でも分かるからよ」


『…………オカルト話か?』


「なんとでも言いなさい」


 修斗のことを世界で一番分かっているのは私。

 実際に一緒に過ごした時間は1ヶ月にも満たないけど、私にとって修斗を理解するのは時間じゃないわ。

 私にはお父さんにも認められた目利きがある。

 その人を観察していれば大抵のことなら目指しているものが分かる。

 修斗が本気になった時の向上心は、一介の部活で満足できるようなものじゃないわ。

 可能性が最も高いのはユースの中でも上位…………ヴァリアブル世代と呼ばれている大城国がいるFC横浜レグノスか、熊埜御堂がいる川崎アルカンテラの二つ。

 この二つが他のユースチームよりも頭一つ抜けてるから、やっぱりどちらかに高坂は所属するでしょうね。

 修斗のことなら何でも分かるんだから。


『サッカー部の奴らのために、俺は高坂を部活に入れるぜ』


「適当に入った学校の部活に情でも湧いたのかしら」


『……かもな。俺にとってあいつらは一緒の釜の飯を食う仲間だ』


「好きになさい」


 私は通話を切った。

 わざわざ動くまでもない。

 狩野がどう動こうとも、修斗の気持ちを変えられる人なんてあの学校にはいないわ。

 一番親しいはずの梨音も、修斗の気持ちを尊重し過ぎるあまりに一歩引いてるような印象だったし。


「ふふ……ふふふ…………!」


 今後が楽しみね。

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