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田舎出身⑥

 ヴァリアブルのフォーメーションはやはり4ー2ー3ー1の最も得意とする基本の形だ。

 ボールを奪われた際には前線からプレスを繰り返し、ショートカウンターを基本戦術とする。

 対してグレイブは…………5バックか?

 3バックにしてはサイドバックの位置が低い。たぶんこれは5バックだろう。

 後ろの枚数を増やすことで守備の厚みを増す、見て分かる通り守りの戦術。

 フォーメーション自体は……5ー2ー3か?

 大石弟がアンカーの位置にいるが、それに加えてもう一人横並びで構えてる。

 ボランチが2枚というところはヴァリアブルと同じで、トップ下に1枚。そして最前線には2人。

 撃ち合いよりもヴァリアブルの攻撃を防ぎたいための専用フォーメーションなのか、それとも普段からこのフォーメーションを得意としているのかは分からないな。


 試合開始と同時に安達が前線からボールを追いかける。

 それは分かってか、グレイブも最終ラインでボールを回す。徐々にお互いのラインが上がり始めた。それに合わせてグレイブの両サイドバックが高めの位置を取ることで、3ー4ー2の形へと変化している。


「5バックは前線3枚とサイドが流動的にポジションを変化させる必要があるから、選手の戦術理解度が高くないと難しいんだけど…………グレイブはジュニアユースでそれができるのか?」


「凄い難しそうな言葉を使うんだねぇ」


「へっ? すいません、口に出てました?」


「出てたすけ。オラにはなんも分からなかったべ」


「サッカー見てる時の癖なんです」


 頭の中で考えてることが口を突いて出てきちゃうんだよな。

 前にも誰かに指摘された気がする。


 そうこうしてる間にグレイブがパスミスをしてボールを奪われた。

 ハーフラインに近いところであったために、流石のヴァリアブルも速攻カウンターというわけにはいかないみたいだ。ゆっくりとパスを回していく。

 MFの緋月ひづきとリヨンが中央から組み立てようとするのに対し、グレイブの前線3枚がボールに対してプレスをかけて、中央からサイドへとボールを逃がしている。

 ボールが寄ったサイドに対してグレイブのサイドバックが前に上がり、逆サイドバックが中に入りつつディフェンスラインに揃った。4ー3ー3の形だ。

 そしてヴァリアブルが再び中央にいるリヨンに戻したところでプレスを激しくかけ、ボールはまたサイドに寄らされる。


「ボールを中央からサイドに追いやることで、ディフェンスラインを一枚上げて対応させるのか。もしかしてグレイブの戦術としては、ヴァリアブルに中央から攻撃をさせないつもりか?」


 トップ下にいる翔平には大石弟がマンマークで付いていた。

 かなり粘着質なマークで、どこに行こうともピッタリついている。


「義助ってば、おんなじ選手のことをずぅっと追いかけてるなぁ」


「あれが役割なんでしょうね。弟くんが張り付いている選手は下がってパスを受ける起点になったり、裏を抜け出すのが得意な選手だったはずですから、ああやって好きにさせないようにしてるんです」


「へぇ〜、なんていうか地味な役割だべなぁ」


 そう、地味なんだよな。

 あそこまで徹底的なマンマークっていうのも最近はあんまり見ない。

 それに言っちゃ悪いが、翔平はそこまで警戒するほどの選手じゃない。

 ここまで何もできていないのがその証拠だ。

 大石弟が何もやらせてないという表現が正しいのかもしれないが。


 ヴァリアブルは無理して中央からの攻撃をすることをやめ、そのままサイドからクロスを上げて安達に合わせる動きに変わった。

 ただ、その役目を担っているのが1年生だからなのか、ボールが上手いこと安達に合うことはなく、両者共に決定的な攻撃が出来ないまま時間は過ぎていった。


「そういえば……」


 俺がジュニアユースの頃にも同じ戦術を取ってくるチームがあった。

 あれはかしわフォーカスだったか。

 5バックで中央にボールが入るとすぐさまプレスを掛けてきていたな。

 それで俺達もサイドから攻撃を展開するようにしたけど、涼介がDFをぶち抜いてクロスを優夜に合わせる形で1点、俺から光に裏抜けスルーパスからのクロスで優夜がもう1点取ったら戦術をすぐに変えていた。

 あの頃の俺達はサイドからの攻撃も個人技でなんとかできてたし、俺と優夜と涼介の連携で相手のフォーメーションがぐちゃぐちゃになってたんだよな。

 ある意味、相手の戦術に左右されない最強の戦術とも言える。


 そして今のヴァリアブルジュニアユースにはそれを打開できる選手が足りない。

 安達がそれなりにできるとしても、そこまで辿り着くためのスキルを持った選手がいない。

 パスによる連携で敵を崩そうとする意識は見られる、が、その途中でカットされてしまっている。

 ここまでグレイブの戦術が刺さっているのは間違いないだろう。


 ただ、このままで終わる赤坂コーチじゃないはずだ。

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