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田舎出身⑤

 グラウンドの観客席に大石さんと移動した。

 段になっており、少し高さのあるところから試合を見ることになる。

 ジュニアユース生の保護者の人達も同じように観客席に集まってきていた。


 グラウンドでは、AFC東京グレイブジュニアユース、東京ヴァリアブルジュニアユースの面々が準備を始めていた。

 自分も半年前まではジュニアユースと同じ世代だったというのに、高校生という立場になったからなのか、みんながえらく幼く見える。

 これが大人になるということなのだろうか。


 ヴァリアブル側には赤坂コーチの姿が見えた。

 来年からはユースのコーチを務めると言っていたので、ジュニアユースの指揮を執るのは今年が最後になるのだろう。

 聞いた話によると、今年の日本クラブユースサッカー選手権(Uー15)はテオダール神戸に敗北して優勝を逃したらしい。

 今年のテオダール神戸にはまだ火ノ川兄弟や徳川がいたはずだから負けてしまうのも無理ない。

 特に火ノ川兄弟の右サイドでの連携には目を見張るものがあった。双子だからこそできる芸当なのだろうかと勘繰ってしまうほどだ。


「オラはあんまりサッカーのことは分からないんだけども、義助があそこまで興奮するってことは、高坂は相当上手いんだべ?」


 大石さんが隣に座った。


「少なくとも1年ちょっと前までは相当上手いって言えましたね。今はあまり大きな声で言えませんが」


「そっかぁ。でも高坂はクラブチームとかやってないんだべ? 生徒会役員をやってるぐらいだすけ、そんなヒマないもんなぁ」


「今はそうですね。サッカーは自主練だけです」


「そったら義助は高坂と同じところでサッカーをやりたいって言ってたすけ、瑞都高校に入学する気みたいだぁ」


「え? ユースはどうするんですか?」


「うーん、どうするんだべなぁ。そこらへんはあんまりよく分かってないんだすけ」


 わざわざ同じ高校に来たからと言って、俺が今後どうするかはまだ決まっていないのに。

 瑞都高校からグレイブユースに通うことはできると思うが、それなら提携校とかに行った方がいいんじゃないか? 東京グレイブにも提携校はあった気がするんだが……。


「まあ高坂は気にすることないべ。たまに今日みたいに付き合ってくれれば義助も満足すると思うから」


「それぐらいなら全然」


 しばらくすると両チームのアップが終了し、試合に出るスタメンメンバーがユニフォームになり、ベンチメンバーはビブスを着た。

 東京グレイブのメンバーは見知った顔も何人かいるが、これと言って記憶に根強く残る選手はいない。

 対してヴァリアブルの選手は流石にほぼ全員分かる。

 知らない顔も数人出ているが、恐らく1年生なのだろう。


 GK 穂村ほむら ごう 3年生

 DF 大里おおさと 凛太郎りんたろう 3年生

 DF 志摩しま 陽翔はると 2年生

 MF 佐伯さえき リヨン 2年生

 MF 堂島どうじま 緋月ひづき 3年生

 MF 玉田たまだ 翔平しょうへい 3年生

 FW 安達あだち みつぐ 3年生


 俺が知っているのはこれぐらいだ。

 この中で言うところのエースは安達になる。

 タイプで言えば優夜と同じフィジカル重視のフォワードになるが、いかんせん決定力に欠けていた記憶がある。

 俺も実感していることだが、1年の差というのはそれなりに大きい。だが、それを差し引いたとしても、俺達の世代のヴァリアブルはあまりにも粒揃いすぎた。

 一緒にプレーをしていても、こちらの意図を汲み取れる選手が多かったのは、俺にとっても非常に幸運だったのだと、改めて思う。

 戻るつもりは決してないが、あいつらとのサッカーは楽しかったんだなと感慨にふけってしまうな。


「試合が始まるべ」


 前後半合わせて60分。

 短いようで長いようでやっぱり短く感じるのが試合だ。


『ピッ!』


 グレイブボールで試合が開始された。

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