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田舎出身③

「ご、ごめん…………ちょっとふらついただけだから、もう大丈夫」


「ふらついたって……保健室行くか?」


「ううん、ほんと大丈夫だから」


「どうしたんだべ? 調子悪いんだっきゃ?」


 大石さんも心配してかけ寄ってきた。

 修斗が会ったこともない人の告白に二つ返事でオーケーしたなんて…………確かに良い人そうに見えるけど……。


「高坂はその…………大石さんと付き合うって……」


「ああ、話聞こえてたのか?」


 きいの質問に、まるで普通の会話のように答える修斗。

 修斗に対して特別な感情を抱いていたのは私だけだったのかもしれない。


「大石さんの弟がAFC東京グレイブのジュニアユースに所属しててな、なんでもキックターゲットの動画を見て、俺にサッカーを教えて欲しいらしいんだ」


「………………え?」


「それでお姉さんが同じ学校ってことで俺に会いに来てくれたんだと」


 あれ…………これってもしかして…………私の早とちり?

 普通の会話のようにっていうか、普通の会話してた?


「じゃあ付き合うっていうのは……」


「弟さんの練習にな。ジュニアユース時代に戦ったことあるから、俺も覚えてるよ」


「…………な、な〜んだぁ」


 きいと二人で顔を見合わせて、思わず笑ってしまった。

 ちょっと考えれば分かることなのに、人って大きな衝撃を与えられると思考能力が低下しちゃうんだね。


「それならどうしてわざわざ外に?」


「いやぁ、オラの個人的な話だすけな、生徒会室で話し込んだら迷惑になるべ」


「そんなことないと思いますけど」


 むしろ、外で二人で話し込み始めたから邪推し過ぎてしまったくらいなのに。


「それじゃあ日時はまた連絡するすけ、よろしく頼むなぁ」


「はい、お願いします」


 大石さんは満足そうにその場を後にした。


「じゃあ俺も戻るわ。気分悪いならマジで保健室行けよな」


 そう言って修斗も生徒会室に戻っていった。

 残された私達はなんとも不思議なおも持ちでそこに佇んでいた。


「えっと…………告白とかじゃ……なかったね」


「ふ、ふん。そんなことだと思ったけど、若元が見に行くなんて言うから」


「ええ!? 私のせいなのー!? きいだってソワソワしてたじゃん!」


「し、してないし。というか元をただせばそそのかした未来さんが悪い」


「分かってて楽しんでたふしがあったよね……」


 とはいえ、神奈月先輩に言われて見に来なければ気になってたままになってたし、結果的に勘違いだってことが分かったからね。うん、一応、神奈月先輩のおかげではあるのか。感謝はしないけど!


「というか……若元は高坂のこと…………好きなの?」


「へっ!?」


 きいからのストレートな質問に、思わず情けない声をあげてしまった。


「な、なんで!?」


「だって……あんなダメージ受けてたし…………」


「ちち、違うわよ! ほら、幼馴染として気になってただけで、修斗に今までそういう恋愛事とか浮いた話が無かったから驚いちゃって!」


「ふ〜ん…………」


「そういうきいだって修斗のこと気になってるんじゃないの!?」


「ちち、違うし! 私はあくまで今後の高坂のサッカーに対する動向が気になったからで……!」


 自分から話を振っておいて、いざカウンターを喰らうと防御力が低すぎる。

 二人してこんなところで何を話しているんだろう。

 お互いに受傷してるだけじゃん。

 というよりもこの反応、やっぱりきいも修斗のことをただのファンとして見ているようには見えない。

 やっぱり待ってるだけじゃ駄目なんだ。

 自分から変わらなきゃ、修斗との関係が変わるとも思えない。

 もっと積極的にならなきゃ。

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