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プロローグ

 とある中学生の双子が動画を見ていた。

 つい最近上がったばかりの動画らしく、ヴァリアブル世代として有名な川崎アルカンテラの熊埜御堂将太朗が参加しているイベントのものだった。


「やっぱこの人異常だわ」


「どうやって蹴ったらこんなドンピシャで球が飛ぶんだよ」


 1stステージをパーフェクトで突破した熊埜御堂を見て二人は半分呆れたように呟いた。


 火ノ川(ひのかわ)大空そらと火ノ川利空(りく)

 二人はテオダール神戸ジュニアユースに所属しているが、将来的にはプロ確実とも噂されている優秀なサイドプレーヤーだった。

 実際、今年の日本クラブユースサッカー選手権(Uー15)では、3年連続優勝していた東京Vジュニアユースを下し、テオダール神戸が優勝した。

 一つ上の世代が注目ばかりされているが、当の本人達も実力の面でそれは認めており、一つ上の世代がいかにハイレベルなのかを理解していた。

 故に、ヴァリアブルの選手達とは違って、メディア露出があまり少ない熊埜御堂の試合以外のプレー動画は彼らにとって貴重な栄養源であった。


「やっぱ今アチィのは関東のクラブじゃね?」


「ヴァリアブル世代って呼ばれてる人もみんなアッチだしな」


「やっちまうか、セレクション」


「いやいや、さすがにそれだけのために東京行けないだろ。それに俺達、本物のヴァリアブルには勝ててないわけだし、負けっぱなしは悔しいじゃん」


「そうだよなぁ」


 その後の挑戦者達を早送りで流していた兄だったが、13番の選手のところですぐさま映像を止めた。


「───んん!?」


「あれ、この人って確か……」


『続いては高坂修斗選手です! 手元の資料では現在高校1年生で中学時代に……東京V(ヴァリアブル)ユースに在籍していたみたいですね。とういうことはヴァリアブル世代として活躍中の選手達と一緒にプレーしていたということでしょうか』


 そしてテロップには私立瑞都高校1年生と字幕が流れていた。


「うっわマジ!? この人怪我から復帰したの!?」


「凄くねこれ! めっちゃアチィじゃん!」


 そして熊埜御堂と同じくパーフェクトを成し遂げた高坂を見て、二人のテンションは有頂天になった。


「瑞都高校って東京の高校だってよ!」


「行くっきゃねぇよなぁ、東京遠征!」


「母さーん! 金ちょうだい金!」


「急になんなのよあんた達!」



 ────────────



「ね、姉ちゃん!」


「なーんだべ、そんな大声出して」


「この人、姉ちゃんと同じ学校!?」


 少年は携帯の画面を姉に見せた。

 そこにはキックターゲットを行う高坂の姿が映し出されていた。


「おーん? …………ああ、確か1年生にこんな人おったすけなぁ、話したことはねぇけんども。確か生徒会やってるすけ知っとるじゃ」


「本当じゃったんか………………決めた! おら……じゃなかった、俺! 姉ちゃんと同じ学校受ける!」


「急にどうしたんだべ義助ぎすけ、サッカーのクラブチームが提携してるとこさ行く言ってただっきゃ」


「やめた!」


「やめたって…………勉強はどうするんだべ。提携校に入るからって何もしてなかったのに」


「これから頑張るから姉ちゃん教えて!」


「オラは構わんけども…………」


「あ、でも待てよ…………高坂さんのことだから東京ヴァリアブルに復帰してるかもしれないし……ヴァリアブルのセレクション受けるべきか……?」


「どうするんだっきゃ?」


「いいや、高校はそこにするべ! 姉ちゃん頼む!」


「はいはい」


 大石おおいし義助ぎすけ、中学3年生。

 AFC東京グレイブジュニアユースに所属するD(ディフェンシブ)MミッドFフィルダー

 彼もまた当時の高坂を知る人物の一人。

 高坂と直接戦い、そして圧倒的なプレイスキルの前に完封された思い出がある。



 高坂が出演した、たった数十分の動画。

 この僅かな1本の動画は、高坂本人を含め、多くのサッカープレイヤーの運命を大きく変えることとなる。

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