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俺と由香の学園生活と三姉妹が初恋するまでのお話し~由香(妹)と三姉妹の仲が思うように良くならないのが俺の悩み~  作者: 光影


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三姉妹はライバルになる


「愛莉?」


 優莉が愛莉の顔を覗き込むようにして近づいてくる。


「熱でもあるんじゃないの?」


「そうですね。念の為に保健室に寄ってから私達と一緒に帰りましょう」


「えっ?」


「香莉そっちお願い」


「わかりました」


 そして右腕を優莉、左腕を香莉に捕まれて愛莉が保健室へと連行される。


「えっ? ちょ、二人共急にどうしたのよ?」


 それを見た照麻は今日も平和だなと転がっている男子共には目もくれずに思う。

 廊下から聞こえてくる声に照麻が返事をして愛莉のカバンを持って三人の後を由香と一緒に追いかける。どうやら由香は由香で放課後照麻を迎えに来たところ偶然教室の前で鉢合わせになったらしい。なのでそのまま由香も照麻に同伴して香莉達の家に行くことにした。


「それにしても愛莉さんどうしたんですかね?」


「さぁ? 俺にもよくわからん」


 見た感じでは何処も具合が悪そうには見えなかった。

 それもそうだろう。

 だって愛莉は昨日の夜に恋の病にかかったのだから。

 目に見えるはずがないのだ。

 誰だって好きな人とは一秒でも長くいたいし、好きな人の前ではコロッと変わってしまうことだってある。

 なんだってかつて恋心一つで戦争が起き、国が潰れ、多くの者が死んだことだって歴史上ある。それだけ恋心と言うのは理屈で証明ができない目に見えない力となって色々と勝手に働く事だってあるのだ。



「それにしても、二人共一体どうしたのよ?」


 まだ納得がいっていないご様子の愛莉。

 急に保健室に連れて行かれて体温計で熱を測らされたあげく、「あれ? 体温計壊れてる?」と優莉に言われたのだ。

 ただ「恋しただけ」とは恥ずかしくて言えない愛莉は「失礼ね」と返答した。

 だけど心配だからと言う理由で風邪薬まで問答無用で飲まされた愛莉はそれはそれで少しご立腹になってしまったのだ。

 そんな三姉妹の様子を照麻と由香は今も少し離れた所から見守っている。

 

「ごめんね。でも愛莉が照麻を家に呼んでいいって言ったの初めてだったじゃん? それに昨日は昨日で照麻に怒ってたからついね」


「別に。ただコイツは私とも仲良くするって言った。だったらまぁこれからはたまになら別にいいかなって思っただけ」


「そっかぁ」


「ところでなんで優莉は由香と一緒にいたの?」


「気になるの?」


 愛莉が一度由香に視線を向けて頷く。


「うん」


「私は愛莉と香莉で由香ちゃんが照麻を迎えに教室に来たところ偶然三人が二組にいたから鉢合わせしただけだよ」


「そうだったのね」


「とりあえず制服皺になっても面倒だし香莉が着替えている間に私達も部屋着に着替えよう?」


「そうね」


「ごめんね。そうゆう事でもう少し待ってて」


「わかった」


「わかりました」


 照麻と由香が頷く。

 そのまま二人は立ち上がって自分達の部屋へと向かって歩いて行く。


「それと愛莉?」


「なに?」


 優莉が愛莉にだけ聞こえるように言う。


「さっきからチラチラ照麻を見てるって事は愛莉もしかして?」


「うん。バレた?」


「当たり前。香莉も気が付いていると思うよ?」


「だよね。でもチラチラ見てたのは優莉もでしょ?」


「まぁね。なら着替えて先に三人で話そうか?」


「わかった。そうしよう」


 そのまま優莉と愛莉がそれぞれの部屋に入っていく。

 それと同時に由香が素早く動く。

 隣にいる照麻に身体を預けて腕を絡ませて甘えてくる。


「誰かの目を盗んで甘えるってのもいいものです」


 そんな事を呟きながら、甘える由香。

 今更由香が甘えん坊だと言う事を優莉、愛莉、香莉に隠す必要がないと思った照麻は「そうだな」と返事をした。

 昨日愛莉には止められたが、これくらいならいいかなと思ったのだ。

 全てを全て断ると愛莉が良くても今度は由香が可哀そうだしとこれでも照麻は香莉との約束、そして由香の幸せを心の中では願っている。


 それを知らない三人はそれぞれの事を思いながら着替えていた。

 それはほぼ確信に近かった。


「愛莉の態度間違いない、照麻さんを好きなんですね。今まで愛莉が男性に対してあそこまで照れた事はないですから。それに優莉も最近照麻さんと二人きりになろうとしているのはきっと……」


 香莉はようやく気付いてしまった。

 昨日と今日でよく見ないとわからない変化ではあるが二人の接し方が少しずつ変わっている事に。今まで産まれてずっと一緒にいたからこそこれが友人として仲良くしていきたいのか、異性として仲良くしていきたいのかがよくわかる。


 だから迷ってしまった。


 これから二人とどう接していけばいいのかを。

 そうこう悩んでいると、着替えを終わらせた二人が部屋の扉を開けて入って来た。


「香莉実はね話しがあるの」


「私も」


 何処か気まずそうな二人。

 香莉は微笑みながら口を開く。


「お二人共どうしたんですか?」


「私照麻の事が好きなの! だからゴメン」


 そう言って申し訳なさそうに謝る優莉。


「わ、私も。だから香莉の初恋もう応援できない」


 続いて愛莉。


 二人は考えたのだ。

 このまま隠し事をしていたら大切な姉妹の絆を壊す事になるかもしれないと。

 だから告白する事にした。


 戸惑う香莉。


「でも聞いて欲しいの。香莉にとっては照麻は特別な人ってのはわかる。でも私達ってさ、本当は求めている人が一緒だったよね。だからそこに早い遅いは合っても結局いつかはこうなってたと思う。私はね、優莉と香莉が相手でもやっぱり諦めきれない。アイツは……ううん照麻はこんな私をありのままの私を受け入れてくれて護ってくれたヒーローなの。だから私達これからは三姉妹で恋のライバルじゃダメかな?」


「恋のライバルですか?」


「うん。優莉はどう思う?」


「私もこのまま身を引きたくはないかな。だって照麻はね素の私を受け入れてくれたし、話しを聞いてくれた。それに助けてもくれた。何より一緒にいて楽しいし、幸せな気持ちになれる存在なの。だから私は愛莉の意見に賛成。三姉妹だから香莉の幸せを願いたい気持ちはある。でも一生で一度しか経験が出来ない初恋をそう簡単には諦めたくないの。だから私は今まで通り三人仲良くこれからもいたい。でも恋のライバルでお互いに高め合える存在にこれからはなりたいと思うの。どうかな?」


「愛莉だけでなく優莉もですか」


「うん。ゴメンね。でもこれが本当の私だから。可愛い妹二人の初恋を邪魔してでも私にも譲れない……グズッ……ゆずれ……ない……グズッ、グズッ、グズッ」


 優莉がとうとう泣いてしまう。

 それを見た愛莉がすぐに優莉を抱きしめる。

 香莉はそんな二人を見て思う。

 二人もそれだけ本気なんだって。

 いつも末っ子って事で甘やしてくれたり妥協してくれていた姉二人が譲れないと言ってきた事に驚いていた。


 だから大きく手を広げて膝をついてしゃがみながら優莉と愛莉を抱きしめる。


「わかりました。恋に早いも遅いもありませんので。でも私はお二人に負けるつもりはありません。それで良いですか?」


「……うん、ゴメンね香莉」


「いえ、謝らないでください。私達はこれからもずっと仲良しです。ただ恋に関しては個人プレーでお互いに頑張りましょう」


「そうだね」


「わかった」


 三人はそれぞれの顔を見て誓いあう。


 そして部屋を出た。


 

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