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俺と由香の学園生活と三姉妹が初恋するまでのお話し~由香(妹)と三姉妹の仲が思うように良くならないのが俺の悩み~  作者: 光影


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積極的な香莉


 四月二十七日。

 後三日でGWゴールデンウイークと言う事もあり放課後のテンションが高まっていた。中間テストも無事返却された照麻は本日までに返却された五教科の答案用紙を見てニヤニヤしていた。


 国語 四十一点。


 社会 四十点


 英語 四十七点


 だった。

 魔術学園では赤点が四十点未満なのでこの三教科に限ってはひとまず赤点を回避した。


 そして数学五十二点。これには照麻も大喜びだった。

 まさか愛莉に教えてもらった所が八点問題で、丸々点数が貰えたのだ。

 これを知った時は後で香莉だけでなく優莉と愛莉にもお礼を言わないとだなと思った。

 だが神様はこれだけではなかった。

 しっかりと文句は言う物の頑張ったおかげがなんと理科が――。



 六十八点だったのだ!!!



 いやもうこれを知った時は教室の中で「香莉様ありがとうございます!」と大声で感謝の言葉を伝えると同時に腰を九十度に曲げて頭を下げてしまった。それと同時に「うるさい! 赤井照麻!」と先生に怒られた。それを見た香莉はクスクスと嬉しそうにして笑ってくれた。クラスの連中からは「この裏切者……」「嘘だろ……おい、あの赤井が……」「えっ……私アイツより点数低いんだけど……」と弱者の小言が教室のあちらこちらから聞こえてきた。照麻はそんな弱者達の言葉を聞き、今は天狗になっている。


「うふふ、あははは。ついに、ついに、俺の時代が……イヒヒ~アハハ!」


 もうニヤニヤが止まらなくなるぐらいに嬉しい照麻は一人不気味な声を教室で発している。

 担任の先生が話し終わりHRホームルームも終わりと自由時間となった。

 正直今日程学園生活って素晴らしいと思える日はないぐらいにテンションが高い照麻は早速全教科の教科書を机の中に入れて、更に筆箱とノートを入れていく。

 テストさえ終わってしまえばもうこっちの物だと思い、鼻歌を歌いながら堂々とした態度で作業していく。

 それを隣で見ていた香莉は大きくため息をついてから椅子に座ったまま身体の向きを照麻に向ける。


「照麻さん?」


 その言葉に手を止めた照麻。


「なにをしているんですか?」


「なにって教科書とノートを机に直してるだけだけど」


 香莉は一度咳払いをした。


 ゴホン


「普通に考えて逆ですよね?」


「いや……俺の中ではこれが普通だけど?」


「照麻さん?」


「はい?」


「冗談ですよね?」


「いや、本当ですけど?」


 呆れているのかもう一度ため息をついた香莉。

 そのまま指を丸くして親指と人差し指で輪っかを作り照麻の顔に近づける。

 そして人差し指に力を入れて弾いた。


「いてっ」


 オデコにデコピンをされた照麻は思わず声を出してそこまで痛くないのに痛いと反射的に言ってしまった。


「そんなことばっかりしていると留年しますよ?」


 心配してくれているのか真剣な表情の香莉。

 綺麗な瞳は照麻の目をしっかりと見ており、瞳の中に映った照麻は留年と言う言葉に怯えた顔をしていた。

 さっきまでのぬか喜びが消え、自分がどれだけ危険な場所にいるのかを再認識した照麻。

 今回は大丈夫でも次で全教科赤点なら楽しい楽しい夏休み期間に鬼の補修が待っている。

 そんな補修が全教科赤点だと夏休み期間中の半分続く。そこに自分一人では解けない夏休みの宿題もあるのだ。去年その身を持って体験した照麻の背中に冷や汗が支配する。


 ――ゴクリ


 その言葉は全教科95点以上だった香莉が言うからこそ説得力があるのだ。一般教科の五教科において全クラスの全教科で最高得点を取った香莉の目力の強さに照麻は視線を逸らして逃げる事すら出来なくなっていた。


「いいですか? もしそんなことをするなら私期末テスト前は助けてあげませんからね! それでいいんですね!?」


 顔を近づけてきた香莉。

 その顔は迫力があり、照麻と同じ事をしようとしていたクラスメイトの手を止める程の破壊力があった。そしてその生徒はカバンから取り出した教科書をカバンに入れると言う謎の行動を始めた。そんなクラスメイトが視界の隅に入った照麻はこれは本気だと判断する。


「すみませんでした……」


 そう言えば由香にも言われたんだったと思い出して照麻は置き勉をすることを諦める。

 そしてため息をついてからさっき机に入れた教科書、ノート、筆箱を再度カバンの中に入れて行く。

 それを見た由香は嬉しいそうに微笑みながら首を小さく上下に動かした。


「偉いです。素直な人は大好きです」


「うん、ありがとう」


「さぁ落ち込んでないで、それ直したら私達も帰りますよ」


「は~い」


「ちなみに今日は私の家に来ますか?」


「んや、テスト期間中お世話になってばかりだったから今日は自分の家に――」


 照麻がチラッと香莉の顔を見ると、何処か悲しそうな顔になっていた。

 なんだろう。さっきとのギャップのせいか可愛いく見えてしまう。

 それに捨てられた猫みたく、そのまん丸とした瞳をウルウルさせられたら断れるはずもなく。


「――と思ったけど、やっぱり行こうかな」


「はい。では一緒に帰りましょう」


 その時、赤井照麻と言う男子生徒の第六感が働いた。


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