中間テスト
テストが始まり集中する照麻。
一時間目――国語。
よしここで作者の言いたい事は基本的に最後に書いてある。
自由作文もできた。
あとは神に祈るだけ。
二時間目――数学。
そう言えばここは愛莉が教えてくれたんだっけ。
感謝、感謝、それと計算間違いかないかの確認。
あとは神に祈るだけ。
三時間目――社会。
歴史はほぼ丸暗記で優莉に教わった通りに語呂合わせ。
後はこれこれ、六面鉛筆のコロコロ君に選択問題は任せてと。
あとは神に祈るだけ。
四時間目――英語。
これは香莉と一緒に勉強したところで抜け目なしからの答えはジョーは六歳だ。
おっといけない、六を英語で書こうとしたらiとe書き間違えてしまった。
あとは神に祈るだけ。
五時間目――理科。
女神香莉様のおかげでクローンの所は余裕のよっちゃんだぜ。
あれ……仕方がない、コロコロ君後は頼んだぜ! ふむ二が正解か、ナイスコロコロ君。
あとは神に祈るだけ。
……こうして赤井照麻のテストが終わった。
そしてクラスの半分以上の生徒が頭を抱えて明日以降返却されるテストに恐怖する事となったのだった。
「よっしゃー! テスト終わった!!!」
そんな中、一人赤点回避をしたという自信がある男はガッツポーズした。
今まで頑張ってきたおかげで過去最高の達成感を味わいながら照麻は香莉に身体を向けて心の底からお礼を言う。
「香莉ありがとう。今回香莉が俺を助けてくれなかったら多分俺今頃マジで心が病んでいたと思う。だから本当にありがとう」
「それは良かったです。では照麻さんまずお顔を上げてください」
「わかった」
「照麻さんのお願いを私は聞いてあげました。まだ結果は出ていませんがこれは事実です。ですから私の些細なお願いも聞いては頂けませんか?」
「別に良いけどお願いってなんなんだ?」
「今日私と一緒に夜を共に過ごして欲しいな~なんて。最近お勉強のお話しばかりでしたので、今日はそう言ったのなしでテストも終わったことですし息抜きがてらご一緒にどうでしょうか?」
眩しい。
照麻は香莉の笑顔を見てそう思ってしまった。
勉強から解放された達成感からなのか、それともここ数日平日は放課後お世話になっていたからなのか、それともここ最近照麻をからかう為に色々と色仕掛けされたからなのか、テスト前に比べて香莉に対する警戒心が緩くなっていた。普段ならクラスの連中がと周りの目を気にする照麻だったが、ついその場で「わかった。二人で?」と軽率な返事をしてしまった。
――ゴッ、ゴッ、ゴッ
何かが燃え滾る音が聞こえてくる。
「私は二人でも構いませんが、そっちの方がいいんですか?」
「別にそういうわけじゃ……」
「むぅ~、私も女の子ですよ!」
「そりゃ香莉とも仲良くしたいのはあるけど、やっぱり緊張するって言うか……」
照れくさそうにして言った照麻。
その言葉に大きく口を開けて、上品に手で隠す香莉。
小顔の為か口元を隠しているので照麻からはハッキリと見えないがイチゴのように熟していく香莉の頬。そしてそんな香莉を見て可愛いと思った。
――ゴッ、ゴッ、ゴッ
何かが更に燃え滾る音が聞こえてくる。
が照麻と香莉は二人だけの世界に入っており、聞こえない。
「やっとお世辞の一つも言えるようになりましたね」
「まぁな。でも恥ずかしいけど本音も少しはあるぞ」
「お世辞でもいいからまずは褒めて欲しいって我儘も言ってみるもんですね」
「そりゃ、勉強教えてもらってる時にそんな事を言われたらそれも覚えると言うか……」
「ならこれも覚えておいてください。私は褒めて欲しい人には褒められたいと思う人ですと」
「わかった」
「話しを戻して今日も二人ではありませんよ。それだと優莉と愛莉が可哀想です。ですから四人で今夜お食事どうですか?」
「四人か……」
「大丈夫です。愛莉も今朝しぶしぶですが納得してくれてます。それに優莉から今朝放課後の予定聞かれていましたよね? あれはこうゆう意味です。由香さんは私達と照麻さんが仲良くするのを避けているようでしたので、私からのお誘いにはなりましたが構いせんよね?」
この時、照麻はようやく理解できた。
今朝何で優莉があんなことを聞いてきたのか。
そしてなんで香莉がこのタイミングで言ってきたのか。
確かにあの場面で由香が優莉からお誘いを受けている場面を目撃していたら、多分だけど学園に間に合っていなかったと思う。街中で三姉妹のリアルファイトなんてことが起きても不思議ではないからだ。特に愛莉とだけはダメだ。由香と愛莉のガチファイトになんてことにもし仮に起きたら……想像しただけでも恐ろしい事になる。
「あぁ。それにしてもえらい教室が静か……だな」
クラスのモテない男子の怒りの視線にようやく気が付いた照麻。
ゴクリ。
息を飲み込めば今にも野獣と化した野郎共が襲い掛かってきそうではないか。




