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俺と由香の学園生活と三姉妹が初恋するまでのお話し~由香(妹)と三姉妹の仲が思うように良くならないのが俺の悩み~  作者: 光影


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由香ミサイル直撃


「ところでさ、由香はテスト勉強とかいつもしてるんだよな?」


 ベッドの上で二人の男女が向かい合うと言うのはやっぱり兄妹と言っても少し緊張するので照麻は話題をふってみることにした。

 近くにあった櫛を使って髪を溶かす由香は「そうですね~」と言って少し天井を見つめた。


「まぁしなくてもいいかなと言うのが正直な意見ですかね。一度聴いたら大半の事は理解できますから」


「マジか、凄いな……」


 これには流石の照麻も驚いた。

 やっぱり元々の頭の出来が違うのかもしれない、そう思わずにはいられなかった。


「でも特待生として学園に在籍している以上全教科満点じゃないといけないかなと思って、一応全教科の総復習を二、三日かけてしようかなとは思っています。何より私が満点を逃したせいでお兄様に迷惑がかかるような事があってはいけませんから」


「そっかぁ……」


「それと今日理由が一つ増えました。これは個人的な感情によるものですが」


「もう一つは?」


 照麻は少し興味をもった。

 由香が個人的な感情でテスト勉強。

 つまりは由香ですら学年一位を取るのが苦労する相手――同級生がいるのだろうか。


「多分ですが香莉さんもかなり頭が良い方かと個人的には思っています。お兄様のお話しを聞く限りではありますが、テスト勉強を誰かに教え、家ではほとんどしていない、そう考えるとどう見てもテストに対して自信しかないと思えるんです」


 照麻は言われてみればと思う。

 由香に聞かれて色々とテスト勉強はどうやってしているのか、どうゆうふうにしているのかを今日夜ご飯を食べている時に話した。

 その時は何とも思わなかったが、香莉は皆の夜ご飯も毎晩作っている。となるといつ勉強をしているのだろうか。


「恐らくですが香莉さんは私と同じで日頃から勉強していてわからない所がない状態を作る努力を裏ではしているのではないでしょうか?」


「ふむ……それはあるかも……え?」


「どうかしましたか?」


「今香莉もって言った?」


「はい。言いましたがそれがどうかしましたか」


 由香が小首を傾げる。


「ってことは、由香って普段勉強してるの?」


「はい。授業を聞いて分からなかった所は全部メモを残して、土日にインターネットもしくは図書館を使って調べるか、次の授業前に先生にまとめて聞くかをしていますが?」


「……マジか!?」


 驚く照麻。


「ん? 私は小学生の時からずっとそうしていますよ?」


 小首を傾げたまま少し困った表情の由香。


 照麻はこの時、由香に対する認識を改めた。

 今までは何もしなくても全部できる天才かと思っていたが、実際は努力する天才なのだと正しく由香を理解した。


「そりゃ頭いいわけだ。って事は香莉もなのか……そう考えると俺と愛莉はそれぞれ反面教師にされたって事なのか」


 腕を組んで何かを納得し始める照麻。

 そしてチラッと由香を見る。


「…………」


 急に黙る由香。

 そして今まで照麻を見つめていた綺麗な瞳が違う方向に向けられた。

 それは何故か誰もいないはずの方向に向いたまま動かくなった。

 照麻が疑問に思い、由香をジッ―と見ていると、気まずいのか今度は溶かし終わった髪を弄り始めた。

 綺麗な黒髪を指先でクルクル巻いては離してを繰りかえす。

 つまりそうゆうことなのだろう。

 普段ならすぐに否定してくれる由香が黙った。

 これが答えであり、由香が裏で頑張っていた理由の一つなのかもしれない。

 なので、照麻は仕返しに意地悪をする。

 それもただ一方的で理不尽な意地悪だ。


「由香?」


「…………」


「そうか、無視するならこっちにも考えがある」


「……え?」


「ならお休み。今日は一人で寝るから、由香も今日は一人で寝ろ」


「…………いやです」


 その言葉に視線が戻り、由香が小声で反論する。


「俺は由香の勉強する時間を奪っていた悪いお兄ちゃんだとわかった。だから今日からは心を入れ替えて由香の時間を奪うことを止める」


 そのまま手をついてベッドの端に移動する照麻。

 だが一歩由香の方が早かった。


 グハッ!?


 それはもう全身弾丸のように一直線に飛んできた。

 それも頭から。

 幾ら女の子とは言え、後頭部が照麻の腹部にのめり込むとそれ相応の威力になる。

 バランスが崩れた照麻はそのまま頭からベッドの上にある大きめの低反発枕に向かって落ちていく。


「いてぇ!?」


 着弾と同時に伸びてきた二本の腕が照麻の腰をホールドして胸元下から伸びる由香の身体が照麻の動きを制限する。

 正に絶妙なタイミングでの攻撃とホールドに照麻は抵抗する事を諦めた。

 お腹に埋めていた顔を上げた由香の口がすぐに動く。


「逃がしません! 今日は一緒に寝てください!」


「【は】ではなく【も】の間違いだな」


「そんな事はどっちでもいいです。お兄様、私と今日も一緒に寝てください!」


 徐々にホールドする両腕の力が強くなる。

 それは由香の気持ちに比例するかのように。


「わかった、わかったから落ち着け」


「なら今日は誰と一緒に寝ますか!?」


「由香と一緒に寝る。これでいいか?」


「本当に何処にも行きませんか!?」


「行かない」


「わかりました!」


 微笑む由香。

 そのままホールドしていた腕を外して部屋の電気を消した。

 由香は満足しているのかニコニコしている。

 そして照麻を見て「何処にも行ったらダメですからね、お兄様。おやすみなさい」と言って深い眠りに入った。

 この家にはベッドが二つある。

 だが家に一人しかいないときは一つしか使われず、二人いる時も一つしか使われない。これはこれである意味凄いなと思いながら照麻も静かに目を閉じた。

 そうなった原因の一つはベッドが二つともダブルサイズだからなのかもしれない。




  ――赤井照麻は知らない。


 テスト一週間前と当日、それが意味する理由を。

 その予兆がしっかりとこの二日間で起きていた事を。


 なぜならテストの日、朝だけならまだしも放課後にも再会してしまうのだから。

 妹と三姉妹が。



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