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俺と由香の学園生活と三姉妹が初恋するまでのお話し~由香(妹)と三姉妹の仲が思うように良くならないのが俺の悩み~  作者: 光影


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テスト勉強は大事


 次に照麻が目を覚ましたのは、喉が渇いてだった。


「あっ、おはようございます」


 自室に入ってくる太陽の陽でもう朝かと気付いた辺りで、照麻はようやく視界の先で由香が顔を覗き込んでいる事を知った。視界の先で天井と一緒に見える由香の顔はニコニコしていた。


「今何時?」


「七時三十六分です」


 二度寝をするには物理的に不可能な時間だなと思って、大きく背伸びをしながら起き上がる。空気の入れ替えの為に由香が空けた窓から冷たい空気が部屋に入って来て、もう少し布団の中にいたくなる気持ちをグッと堪えてそのまま立ち上がる。そしてこれも空気の入れ替えの為と開けられたままのリビングに繋がる扉の先にある朝食をチラッと見て由香の頭をポンポンと叩いてお礼を言う。


「いつもありがとうな」


「はい。これくらい当然です」


 由香の笑顔を確認してから照麻は手早く朝ごはんを食べて、身支度を終わらせていく。



 学園に行く準備を終わらせて由香と一緒に家を出る。

 ここ数日由香と一緒に住んでいるせいか通学路にあるコンビニとスポーツショップの脇を通り、JRの駅へと続く歩道橋をくぐる事が当たり前になっていた。人間の慣れと言うのはある意味恐ろしいなと思いながら、隣を歩く由香をチラッと見る。笑みを溢しながら鼻歌を歌い登校する由香は相変わらず嬉しそうだった。


「鼻歌歌ってどうしたんだ? いいことでもあったのか」


「もうお忘れなんですか?」


「なにを?」


 お忘れ? 照麻は一体なんのことだろうと思い考えて見るが別に心当たりはない。


「昨日お兄様が私と一緒に寝てくれたじゃありませんか」


 数歩前に出て由香は一度立ち止まり振り返ると、照麻に笑顔を向けてくれた。

 照麻が「あぁ~」と言って納得したのを確認して由香が身体を半回転クルっと回してまた歩き始めた。


 二年前まで照麻と由香が通っていた中学校があり、さらにその先に魔術学園はあるのだが、中学校を通り過ぎようとしたタイミングで照麻の足がピタっと止まった。


「あれは……」


 照麻の足が止まった事に気付いた由香も足を止めて、隣に来る。


「どうかしましたか?」


「いや、なんでもない」


 照麻はすぐに止めていた足を動かして魔術学園に向かう。

 由香も照麻を追いかけるようにして一緒に歩き始めた。


 さりげなく照麻はもう一度車道を挟んだ向こう側にある歩道を見た。

 そこには制服姿の優莉、愛莉、香莉がいる。

 だけど照麻が足を止めた理由はそこじゃない。

 少し気になる人物が目に入ったからだ。

 優莉達の隣にもう一人学生がいるのだ。

 魔術学園の生徒ではない。

 制服から違う学園の男子生徒でわかったが、優莉達とどういった関係の相手がわからない。だから三人の姿には気づいていながら敢えて気付いていない振りをした。きっとその方が良いかと思ったからだ。


「お兄様は本日もテスト勉強で帰りが遅くなりますよね?」


「そうだな。多分昨日と同じぐらいの時間になるかな」


「わかりました。夜食べたい物とかありますか? お時間があるので何でも作りますよ」


「とは言っても由香の作る料理は美味しいから何でもいいんだけどな……あっ!今日はサッパリした物が食べたい。昨日勉強して思ったんだけどやっぱり勉強すると疲れるからこう重たい物よりかはサッパリした物の方が良いって言うか。どうかな?」


 少しダメ元で大雑把に由香に意見を伝えてみる照麻。

 これ! と言うのは特にないがとりあえずサッパリした物が食べたかった。

 すると由香がほほ笑みながら答える。


「はい。ではレシピは私が考えておきますのでテスト勉強頑張られてください」


「おう! 赤点回避できるように今日も頑張ってくる」


 今日も一日頑張って勉強する事を心に誓い照麻は由香と一緒に学校の校門を通り抜ける。

 靴を履き替えた照麻は二年生の教室、由香は一年生の階に行くために途中で別れ、それぞれの教室へと向かった。



 教室に入り、昨日の復習をしていると香莉がやって来た。


「おはようございます。照麻さん」


「おっ、香莉。おはよう」


「昨日の復習ですか?」


 香莉は自分の席に座って、鞄から必要な物を取り出して机の中に直していく。

 そのまま机の横に鞄をかけてから椅子を持って照麻の隣に来る。


「あっ! 偉いじゃないですか。ちゃんと全部問題解いていますし、間違った所はやり直しもしてますね」


 机の上に開かれたワークを見て香莉が納得したように微笑みながら頷く。


「まぁな」


「ちなみに自分でわからなかった問題はありますか?」


「うん、こことここかな」


「わかりました。ではまだ朝のHRホームルームまでお時間がありますのでここの復習を一緒にして終わらなかった分は放課後に回しましょう。それから今日の分のお勉強をしましょう」


「わかった」


 そのまま照麻にわかりやすいように香莉が教科書とノートを使い解説してくれる。

 香莉の髪から香る微かに甘い香りが照麻を刺激するが、今は集中する。

 周りを見渡せば舌打ちをする男子達。

 そこから聞こえる声は「なんでアイツ香莉ちゃんとあんなに仲がいいんだ」「あ~ムカつく。放課後やっぱり二人きりで会ってるのかな」「赤点回避しそうだな」と嫉妬の声が聞こえてきた。

 対して女子達は「マズいわね」「えぇ、バカ代表の成績があがったら……」「大丈夫、アイツはきっと全教科の赤点を取って先生達の怒りを全て受け止めてくれるはず」と照麻がテストで赤点を回避しない事を願っているような声がチラホラと聞こえてきた。

 人を避雷針扱いするのは正直止めて欲しい。確かに去年全教科赤点と言うある意味素晴らしい事を成し遂げたが、去年は去年、今年は今年、と分けて考えて欲しいものだ。今年の赤井照麻は何かが違う、そうクラスの皆が思い始めた瞬間だった。


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