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兄妹の恋愛話し


「なら今週はずっとこっちにいるのか?」


「はい。とは言っても金曜日までです。私も自分のテスト勉強がありますので、金曜日お兄様と一緒に夜ご飯を食べた後からはしばらく実家の方にいようと思います。なによりお父様とお母様から……金曜日の夜も一緒にいたら土日勉強せずに甘えん坊になるからダメだとさっき電話で言われました」


 由香が寂しそうな声で照麻に告白する。

 それはそうだろう。と照麻は心の中で思った。今まで由香がお泊りに来て夜甘えて来なかった日は過去に一度もない。次の日学園が休みの日は二人で家の中でゲームしたり、買い物に行ったり、だらだらとお話ししたり、…………etc、とこれが照麻と由香の休日の過ごし方である。なにより凄いのが由香が絶対に照麻から離れようとしないのだ。つまり両親は勉強に支障が出ると考えたのだろう。その考えには照麻も賛成だった。流石に自分のバカな姿を妹には見せたくないからだ。


「ところでお兄様はどういった女性がお好みなんですか?」


「そうだな~」


 照麻は少し真面目に考えて見る。


「やっぱり優しい人がいいかな」


 その一言に由香の表情から笑みがこぼれる。


「他にはなにかないのですか?」


「後は……こんな俺をありのまま受け入れてくれて、積極的な子とかかな?」


「なるほど。案外高望みはされていないんですね」

(つまりもっと甘えてOK-と言うメッセージなのですね、お兄様!)


「ちなみに由香はどんな人がいいんだ?」


「私は尊敬できる方が好みです。後はやっぱり私も女ですのでいざという時は身体を張って護ってくれる人がいいですかね」


 その言葉を聞いた照麻は納得した。

 確かに幾ら由香が強いと言ってもそれは一対一の戦闘においてだ。敵が複数になれば当然物量差に苦戦を強いられることだってある。普段はそんな素振り見せない癖に本当は誰かに護られたいんだなと照麻は思った。


「あ、あと、もう一つあります」


 由香は何かに気が付いたようにして付け足す。


「一緒にいて私を安心させてくれる人がいいです!」


「なるほど」


 これには照麻も同感だ。

 一緒にいて安心できない人とは結婚以前に同居も嫌だ。どうせ結婚できるなら一緒に居たいと思える人と将来結ばれたい。


「あの~お兄様?」


 下唇を悔しそうに少し噛んだ由香が申し訳なさそうにして声で呟いた。


「どうした……んだ?」


 突然の事に照麻はえ? 俺何かした? と不安になってしまった。

 とりあえずまずは理由を聞いてみる。

 心当たりはないが、相手は高校生になったばかりの女の子。

 先月まで中学生……とは思えない肉付きが良い身体ではあるが、中身は中学生だったのだ。些細な事で傷ついて泣いてしまっても可笑しくはない。


「手が疲れちゃいました。少し休憩してもいいですか?」


 頑張って手を伸ばして由香をベッドの隅に移動させてた照麻はベッドの上で身体をクルっと反転させて上半身を起き上がらせて由香の頭を撫でてあげる。よかった、これなら全然大丈夫そうだ。というか、ごく当たり前の事でその反応は心臓に悪いから止めて欲しいのだが、まぁこれはこれで可愛い妹と言う事で納得する。


「今日はもういいよ。めっちゃ気持ち良かった。ありがとうな!」


 すると由香の顔がパァと明るくなる。


「はい!」


「ヨシヨシ。由香は笑顔が一番似合うからな~」


 マッサージのおかげで身体の軽さを感じた照麻は甘えん坊になりぎゅーと抱き着いてきた由香を見ていつか結婚して兄離れをしていくんだなと思うと少し嬉しくも寂しい気持ちに襲われた。


「こちらこそ頭を撫でて頂き、ありがとうございます! 今日はもう遅いですし、お兄様お先にお風呂どうぞ」


「由香が先でもいいぞ?」


「……それは、その……また裸体を見られても恥ずかしいのでお先にどうぞ」


 由香が急に顔を真っ赤にさせて、照れくさそうに言ってきた。

 あの日照麻が見た、タオル一枚の由香。

 あれは正直に言うと刺激が強すぎて今でも鮮明に覚えている。

 茹タコのように全身を真っ赤にして、羞恥心に溢れた表情。

 何より上隠して下隠さずと言っても過言ではない瞬間的な行動の全てを。


「それともお兄様は私の身体にご興味が……でしたら恥ずかしさを我慢して頑張らさせて頂きますが?」


「いやいや頑張らなくていいぞ。由香に嫌な思いをさせてまでとか見たいとか思ってないからな俺。いや、マジで。確かに男として色々と欲望はあるが、ホントマジで見たいとかないからな。だから俺が先に入る。それでいいな? うん、いいよな。なら俺が先に入って由香が入っている間は俺は部屋で大人しくしている。だからそれで納得しよ。うん、それがいい。なら行ってくるから!」


 照麻は逃げるようにして言葉を残して由香の部屋を出ていこうとしたが、慌てていた為に部屋の片隅に右足の小指をぶつけて「いてぇーーーー!」と悲鳴をあげた。

 そのまま目から透明のしずくを流しながら、お風呂へと向かった。

 一人になった由香はクスクスと一人部屋で笑っていた。


「早口で誤魔化しておきながら、本音と建前が混ざっていましたよ。それに顔を真っ赤にしてお兄様可愛い過ぎます。まぁ何はともあれ私を女として意識してもらえていることがわかったので良しとしましょう。三人の藤原先輩には私負けません」


 そして。


「今日は敢えて上を付けて寝るとしましょう」


 と由香は呟いた。

 そこにどんな意図があるのかは由香だけの秘密である。


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