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「なるほど。アイツらが言っていたツンツン頭は坊主か。確かに聞いた通りのバカらしい」


「なにがいいたい?」


「俺の役目は最初から坊主が来た時に足止めをすること。それがクライアントとの契約だからな。それに良いのか? 上の階にはボスがいる。今のアイツらに勝てるのか? ましてや妹を人質に取られた状態であの姉ちゃん達が本領を発揮できるとは思えねぇ」


 男の言葉に照麻が危機感を覚える。

 ついこの場から逃がす事に気を取られて、注意が足りていなかった。


 今から追いかけるか、と考えるがそんな事をすれば目の前にいる男も当然追いかけてくる。

 そうなっては元も子もない。


「俺の名前はレンジ。まぁよろしくな、っても今日でお別れになりそうだけどな。まぁ上は上で大喜びだろうな。娘三人揃えば更に一億は要求できる。その後はそのまま女三人を使って遊んで殺せばいいだけだし、俺は俺で報酬金が増える。まぁ一石二鳥ってやつだ。だから坊主に選択肢をやる。ここで俺に殺されたって事にして大人しくここで全てが終わるのを待っているか、俺にこの場で殺されるか。さぁどっちがいい」


 照麻の血がじわじわと熱くなる。

 痛覚が麻痺し今まで抑えていた怒りがグツグツと音を立てて身体の内側から湧き上がってくる。もし目の前の男――レンジが言った事が本当だとしたら、赤井照麻は黙って全てが終わるのを待っている事などできるだろうか。


 答えは否ッ!


 自分達の都合の良いように人を弄び、用が終わったら役目を終えた道具のように捨てる。そんな男共の好きにさせてはいけない。


「俺がお前を倒す、ただそれだけだ」


「いいだろう、かかってきな坊主」


 直感でわかる、レンジは実力者だと。

 同じ炎の使い手らしく、フロアに立つレンジを中心とした周辺の空気が一気に熱せられ温度が急上昇する。右手に持っていたマシンガンを捨て、目つきの悪い瞳で照麻を睨むようにして見る。男にしては長い肩下まである黒い髪をなびかせて、口角を少し上げて微笑む。なんて嫌らしい男なのだろうか。

 照麻達が使う魔術とは違い、殺意を込めた魔術の波動が目に見えない触手のようにして照麻の身体に纏わりつき、身体を動かなくしていく。

 感情任せに動いたら間違いなく殺される、触手に触れた肌が感じ取る。

 まるで照麻達が普段使っている魔術は子供のお遊びで、レンジが使う魔術が戦争で使われる魔術。そう思ってしまう程に照麻の身体は不安と戸惑いに支配され始めていた。

 一目でわかった。

 これは間違いなく住んでいる世界が違う者の目だと。


「それにしても落ち着いているな。いい目だ、坊主。大人しく待っていた甲斐がある。実に素晴らしい」


「…………」


「おっ、さっきまでの威勢が消えたな。まぁ学園生のヒーロー気取りじゃ仕方ないか」


 ――ヒーロー?


 照麻の頭が何故かその言葉に反応した。

 あの日香莉が言った言葉。

 そして鮮明に蘇ってくるあの時の香莉の表情。


『私がピンチの時に助けに来てくれるヒーローです』


 照麻は思い出した。

 あの笑顔を護る為に照麻は立ち上がったのだと。そして護ると自分に強く誓ったのだと。


「……、待ってろ。その期待に答えてやる」


 照麻が自分の身体を見ると鳥肌が立っていた。

 確かにレンジの言う通り、照麻はヒーロー気取りの学園生なのかもしれない。だけどこれだけはわかる。レンジ達がやろうとしている事は絶対に悪で、自分達の欲望を叶える為ならば例え万を犠牲にしても一を偽りの善とし物事を成し遂げようとするテロリストだと。そのせいで大切な人の笑顔が奪われていく。力なき者は力ある者に従い、逆らう事すら許されないそんな大人の欲望がまみれた世界に今立っているのかもしれない。だったら従うしかないのか、そう思わずにはいられない感情が生まれた。見えない触手は照麻の脳をも支配し抗う事を諦めさせようとしてくる。これが善だと言うなら、赤井照麻は悪となろう。例え魂を悪魔に売り渡す事になっても構わない。なぜならそんな理不尽な世界に赤井照麻は窮屈な思いをしてまでいたいとは思わないからだ。


「来い『炎帝』!」

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