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照麻の覚悟に学園長が紡ぐ


「父さんと母さんには俺が勝手に何も言わずに行った。こう言え、いいな」


「下手したら死にますよ? 向こうはニュースを見る限りマシンガンやハンドガンも持っています。わかっているのですか? それに犯罪者は間違いなくお兄様を恨んでいます。大型ショッピングセンターには推定で五十人程武装した犯罪者がいると別の所では報道もされています。恐らく組織そのものが動いているのでしょう。そんな所に何をしに行くおつもりですか?」


 由香は照麻の目だけを見て、言葉を投げかける。

 その綺麗な瞳には照麻の顔がしっかりと映っていた。


「なにって香莉を助けに行くに決まってるだろ?」


「ダメだ! 警察からも無駄死にをさせる必要はないと言われている」


「先生もこう言われております。考え直してください。向こうは私達と違ってプロです。それに先日の人達は間違いなく実力的にも末端。敵は未知数です」


「妹の言う通りだ。まずは落ち着け。それに藤原のご両親も赤井は呼ばなくていいと言ってくれている。娘の不注意が招いたことに赤の他人を巻き込めないとさっき言われていた」


 どうしても引き止めたい由香と生徒指導の先生に照麻が珍しくブチ切れる。


「理屈で動けたら誰も苦労はしねぇ! なら聞くが香莉の命は最初から助かるか助からないかのフィフティーフィフティーにかける。あんたはそう言いたいのかよ⁉」


「そうだ! 魔術師である以上、日常生活に絶対の安全は保障されていない。力を持つ者は更に力を持つ者に利用されたり力を持たない者に逆恨みされたりする。これはお前達が中等部で習う基本事項だ! 赤井もそれくらいわかっているだろう! だから目を覚まして落ち着け! 最悪お前まで死んだら誰が一番悲しむか考えろ!」


 そう言ってゴリラのような腕力で照麻の襟を掴みあげ、地面に突き落とす。


 そう言われて照麻は――。


 なんでやる前から諦めているんだ。


 なんでアンタも涙をこらえるほどに辛いのにルールに縛られないといけないんだよ。


 俺達が生きる世界ってルールがそんなに大事なのかよ……。


 だったら……。


 そんな腐った世界ならば……。


 この俺が……。


 お前達の――。


 全てを否定してやる。


「なら俺はこの学園を今すぐ止めてやる!」


 言い切ってしまった。

 これは後で両親に死ぬほど怒られるだろう。

 由香は大きく目を見開き、口を開けて言葉を失っている。

 それもそうだろう。

 学園を中退などすれば将来まともな職種には絶対につけない。魔術都市に入るのは簡単だが出るのはかなり難しい。それだけ魔術はまだ秘密が多い代物。そんな知識を持つ人間を簡単に外の世界に出すことなど出来ないのだ。


 だけど、自分の将来よりも――。

 照麻にとっては大事な物がある。

 多分、これが香莉じゃなくて優莉や愛莉。そして由香でも。

 同じ事をしたと思う。


「俺は集団の輪を乱す事になっても自分が護りたいと思った人の為に魔術を使う!」


 そして赤井照麻は学ランの内ポケットから生徒手帳を取り出して、生徒指導の先生の足元に向かって投げつけた。これで後戻りはできない。誰が見ても大馬鹿な奴としか思わないだろう。これだけ未来を投げうっても今も一人怖い思いをしている女の子一人すら助けられる保障が何処にもないのだから。


「由香ゴメンな」


 照麻は後ろを振り返って出口に向かって歩いて行く。


「待ちな!」


 学園長の声が聞こえてきた。


「赤井照麻。さっきの言葉は本気で言ったのか?」


 長い髪には白髪が混じり普通の教員とは違うオーラーがある学園長。

 これが貫禄という奴なのだろう。

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