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俺と由香の学園生活と三姉妹が初恋するまでのお話し~由香(妹)と三姉妹の仲が思うように良くならないのが俺の悩み~  作者: 光影


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心配とニュース


 ――数日後。


 朝のHRの時間になり、担任の先生が教室の扉を開けて中に入ってくる。


 照麻には一つ気になっている事がある。

 それは昨日まで元気に登校していた香莉が今日は来ていないのだ。


 それに今日は優莉と愛莉も見ていない。


 家の用事か何かならまだいいけど、三姉妹揃って風邪とかだと少し心配だと言う事だ。藤原三姉妹は両親と別居し、学園生活の為に三姉妹だけで豪華なタワーマンションの上階を借りて生活しているのだ。いつもなら自分達だけで全てをするのは簡単なのは知っている。だが全員風邪となれば話しが変わってくるだろう。


「仕方ない。気になるし今日風邪薬と一緒にスポーツドリンクでも買って様子でも見に行ってくるか」


 照麻は大きな欠伸をしながら担任の先生の話しを適当に聞き流していく。

 するとクラスの視線が照麻に集まる。


「――ん?」


 まさか大きな欠伸をしただけで怒られるのか、朝からついていないなと思い視線をしっかりと前に向ける。


「――だから早く行きなさい!」


 機嫌が悪い担任の先生。


「どこにですか?」


「職員室! 何回言えばいいのよ。さては聞いている振りしてたわね」


「すみませんでした。すぐに行きます」


 照麻は勢いよく立ち上がる。

 それから腰を曲げて謝り、教室を出て職員室へと向かった。

 とことん朝からついていない照麻であった。

 とは言ってもこればかりは照麻が悪いのも事実。

 文句を言った所でどうしようもないだろう。


 照麻は職員室に向かいながら、怒られるようなことは普段何もしていないけどなと念の為覚悟を決めるという意味で今までの行動を再確認していく。


 ただ心当たりとして、登下校中の買い食い、授業が怠いので保健室エスケープ、授業中の居眠り、話しは聞いてもわからないので聞いている振りをしながらノートの板書……etc、これが少し際どい所だなと心の中で思い反省した。いや本当に内申点も大事なんだけど……でもね身体が欲望に中々勝てないのだよ……うん。


「おっ、やっと来たな」


 職員室に入るとすぐに生徒指導の先生がいた。

 そして、優莉と愛莉が泣きながら隣にいて、それを辛そうに見る由香もいた。

 幾ら何でも泣かせるなよ。

 そう思いながら照麻は自分もこうなるのだと覚悟を決めて生徒指導の先生の前に行き、目を見て腰を九十度に曲げて「すみませんでした。今日から真面目に授業受けます!」と先制攻撃をする。


「「「「………………?」」」」


 職員室の中にいた先生全員の視線が照麻へと向けられた。


「……お前何を言っているんだ?」


「え? 優莉達が泣いているのってゴリラのせいじゃないんですか?」


「誰がゴリラだ。後で覚悟しておけ!」


「げっ……すみません本音がポロリじゃなくて……口が滑りました」


「そうか、なら反省文五枚だな。と言いたいが今日はいい。それよりこれを見ろ」


 危うくいつものノリで悪口を言う方のあだ名で先生を呼んでしまったが怒るわけでもなく水に流してくれた。そのままゴリラのようにガタイが良く、ただでさえ地黒なのに日焼けで更に真っ黒になった肌が特徴的な生徒指導の山内先生がスマートフォンの画面を見せて来た。


 ――。

 ――――……。


『犯人は魔術都市第三学区にある大型ショッピングセンターに立てこもっています。人質となった女子高生は魔術学園に通う高校二年生の藤原香莉さんです。犯人は彼女の命と引き換えに五千万の現金を要求しているとのことです。犯人が警察に突き付けた残りの時間は一時間を切っています。また犯人はこうも言っているそうです。『ツンツン頭の学生。お前も来い』と。これが何のことかはわかりませんが、どうやら犯人と面識がある学生がいるようにも見えます』


 映像はここで終わった。


「先日赤井がボコボコにした犯罪組織だ。警察からさっき連絡があって赤井と妹を匿って欲しいと依頼を受けた。お金は今藤原のご両親が用意しているとのことだ。警察は要求を呑んでも命の保証をしないだろうと考えているらしい。悪いが今日は今から学園長室で大人しくしてもらう。学園の中では一番安全な場所だしな。それと今から赤井のご両親が迎えに来てくれるように上手く手配する」


 照麻はスマートフォンの画面を見て、八時二十三分のニュースだとわかった。

 優莉と愛莉を見れば、二人共泣いて何かを言っている。

 後悔しているのだろう。


 聞こえてくる声に傾ければ香莉が今日の昼食代をおろす為にATMに立ち寄った瞬間を狙われたことがわかった。


 普段なら迷わず強気に何かを言いそうな愛莉が今はいない。

 初めての光景と状況に頭がついて行けず、か弱い女の子になっている。

 無理もないだろう。身内がこんな事件に当たり前のように巻き込まれるとは普通考えているわけがないからだ。


 だったらと思い照麻が口を開く。


「由香?」


「はい」


 照麻は大きく息を吸いこんで、ゆっくりと吐き出す。


「お前はここにいろ。俺はちょっと出かけてくる」


 本当は今すぐにでも逃げ出したい。

 身体は正直らしく、心臓の鼓動が速くなり、いやな手汗までかきはじめた。

 だけど優莉と愛莉の泣き顔がそれ以上に照麻の心を強く後押しした。

 照麻は先日香莉と約束した。学園を卒業するまで三人と仲良くすると。

 だったらそうなる為の努力をする義務が照麻にはある。

 ただの口約束だと言えばそうなのかもしれない。

 だけどアイツら(犯罪者グループ)のしつこさを見る限り、例え身代金を受け取っても照麻に復讐をするまで香莉を狙うかもしれない。もしかしたらここにいる由香や優莉や愛莉も狙われるかもしれない。だったら向こうがわざわざ呼んでくれているならやる事は一つしかないだろう。

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