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俺と由香の学園生活と三姉妹が初恋するまでのお話し~由香(妹)と三姉妹の仲が思うように良くならないのが俺の悩み~  作者: 光影


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新一年生と新二年生の対決【決着】


「ご苦労様です。後は私に任せて下さい」


 その声に照麻は背筋がゾッとした。

 緊張で手がびしょびしょになりながら後ろを振り向けば二年生の後衛ポジションの生徒が全員負傷し倒れていた。


「マジか……」


『こちらセンター。後方何をやっている。挟撃を今受けている。早く援護を! 無理ならこちらで強引に何とかするがどうしたらいい?』


『大将後ろで何があった? しっかりしろ!』


 インカムから聞こえてくる声。


『後方ポジションに残った全員がやられた。どうやら敵の大将が直々にこちらに来たみたい』


 愛莉の声を聞いた全員が戸惑い始める。


『どうやら私達相手に正攻法ではいずれ負けると判断して正面は囮で奇襲からの少数精鋭による戦力で短期勝負ってのが向こうの作戦だったみたい』


『ならどうする? 後退してそっちの援護が最優先か』


 戦況の急変それも悪化に二年生達は軽いパニックに陥り始めていた。

 その時。


『私にすぐ頼るな! 各々がやるべきことを今はただすればいい。学園が本当に私達が求めいる事は勝敗? 違うでしょ! 団体行動において各々がやるべきことをどのような状況でもしっかりと果たせるか! それが一番見られているんじゃないの! だったらお前達はお前達が正しいと思う事を貫け!』


 愛莉の一言が全員の迷いをかき消した。

 そしてあちらこちらから雄たけびが聞こえてきた。

 それはだんだん大きくなり、一年生に傾いていた流れを断ち切る破壊力を持っていた。心の不安を消しベストコンディションまで持ってきた愛莉の鼓舞に照麻はにっこりと笑う。


「なら後は頼んだ。俺は大将の首を取りにいく」


「お願いします。最悪魔力を奪ってくれるだけでも構いません」


 男子生徒は頷くとすぐに愛莉の方へと走って行った。


「お兄様、今日は私の味方じゃなくて円満な関係にある方達の味方なんですね」


「円満ってあのなぁ……。一応今はチーム戦だからな……」


「嫉妬しますね。私と闘ってまで愛莉さんという大将を護りたいのですか?」


「当然だろ。アイツは俺達の大将だからな」


「そうですか。では私も本気で行きますね。女性の嫉妬にはいい加減気をつけてくださいね」


 由香が不意に笑みを向けてきた。

 照麻がそう認識すると同時に頭上から七本の氷柱が降り注ぎ、そのうち三本が照麻の身体を掠めた。由香を警戒して炎帝に回す魔力を最大にしていたおかげで炎の盾が自動で生成され破られたものの致命傷とはならなかった。

 照麻は学ランの内ポケットから魔力石を取り出す。

 そのまま手で割り魔力の補充をし、炎帝の出力をfase三最大値で固定する。


 照麻の炎帝が翼竜の形へと姿を変え突撃する。


「甘いですよ、お兄様」


 更に出現した氷柱が二本翼竜へと向かって飛んでいき、両翼を貫く。

 翼を失った翼竜は炎へと戻る。

 その炎の中から照麻は姿を見せる。


「だよな!」


 照麻の渾身の一撃が由香に決まる。

 が由香は一歩も動かない。

 見えない壁に照麻の拳が止められたのだ。

 そして身体が動かなくなる。

 あの時、照麻と香莉を護ってくれた魔術が今度は牙を向いた。


 ――しまった。


 炎を操り脱出を試みるが照麻の周囲にあった炎は全く動かない。

 もしやと思い視線を由香から外すと炎が凍っていた。

 照麻の顔が青ざめる。


 負けた。


 今から魔力を強引に暴走させて最大火力で脱出を試みても間に合わない。

 足先と右拳から徐々に浸食してくる氷。

 このまま氷漬けにされて負ける。


 だけど納得した。


 本当はどのような状況とは言え由香に手を出したくはない。

 でもそれは由香が望んでいない事でもある。

 だって由香は真面目だから。

 多分照麻がそんな事を言えば本気で怒ると思う。

 そして多分失望されたのだろう。

 由香の顔を見ればそれくらいわかる。


 バチバチバチバチッ!!!!!


 閃光が一つ。


 目に見えない氷の壁を貫き、周囲の風を切り裂いた一筋の閃光。

 それは魔術で防御姿勢を取った由香の細い身体を軽々と七メートル程吹き飛ばす。

 そして由香の魔術が強制的に解除され氷が砕けた。


「誰がもう諦めているの? まだ五分経ってないけど」


 バチバチと音を鳴らした剣を片手に愛莉が照麻の横に来る。

 慌てて照麻が後ろを見て見れば優莉が香莉に合流しており、さっきの男子生徒が地面に倒れていた。


「あいり……」


 怪我をしているのか左手からは赤い血がポタポタと垂れていた。

 だけど全く気にしていないのか愛莉の視線は由香だけを見ていた。


「やっぱり『雷撃』でもそう簡単には通じないか」


 首をぽきぽきと鳴らす愛莉。


 左手を銃の形にする。


 左手の人差し指に集められた魔力がバチバチと放電し音を鳴らし、ズドン、ズドン、ズドンと三度光った。

 人差し指が光る度に、由香が放った氷柱が、バリン! バリン! バリン! と音を鳴らし雷撃が氷柱を粉砕していく。


「しょうがない、火力上げるか」


 愛莉は先程よりも魔力を圧縮して高密度にして人差し指に溜めていく。

 地面から青白い雷が出現し愛莉の人差し指に集約されていく光景に照麻は息を飲み込む。


「悪いわね。私ただで負ける気ないから」


 愛莉はそう呟くと人差し指から一発の雷撃を放った。

 進路上にあった小石や砂を吹き飛ばし、空気を裂き、バチバチと音を鳴らしながら放たれた一撃は由香の表情を変えた。由香から余裕の笑みが消え、広範囲に氷の壁を展開してきた。雷撃はその氷の壁を雷による熱で強引に溶かしながら突き破っていく。そして氷の破片を周囲にまき散らしながら大爆発した。


 ――ドガーン!!!!!!


 まるで爆弾が爆発したように眩しい光が周囲を襲い、視界が戻った時には校庭の一部がオレンジ色の炎で燃えていた。


 由香の後ろには合流した一年生が沢山いた。

 もしあの場で由香が守らなければ多くの怪我人が出ていただろう。


 照麻は愛莉の指示に従い、その場を離れ優莉の援護へと向かった。




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