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俺と由香の学園生活と三姉妹が初恋するまでのお話し~由香(妹)と三姉妹の仲が思うように良くならないのが俺の悩み~  作者: 光影


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優莉と香莉は優しい、愛莉は厳しい


「ちなみに照麻さんの配置は何処ですか?」


 照麻は校庭に出ると同時に先生から貰ったプリントをポケットから取り出して確認する。そこには先生達が各々の適性を考えて予め配置が決められていて、生徒はそのポジションで各々の力を奮いチームに貢献する事となっている。一般の学校で言うところのこれは体育で集団行動練習や体育祭予行練習と言った認識で間違いはないと思う。将来ここから軍隊や国の政治などに携わる者も出てくる。そう言った将来を考えて集団行動訓練はこうして学年を超えて学園全体で行われたり、時には学園を超えた魔術都市全体で行われたりもする。


「えっと……一番後ろの後衛ポジションだって」


 ポジションは三つある。


 近接戦闘や近接魔術を得意とする前衛ポジション。


 中距離、遠距離戦闘や中距離以上の遠距離魔術得意とするセンターポジション。


 前衛ポジションやセンターポジションのように役割がなくどちらにも適応できる後衛ポジション。


 である。


 大将は原則として後衛ポジションに配置されるようになっている。


 だがこれはあくまで原則であって、半年に一回生徒が記入するアンケートに希望ポジションを書いて先生に提出するとその配置に優先的に入れて貰える。先生の内申点を稼ぐにはやはり勝負の醍醐味となる前衛ポジションやセンターポジションとなり場合によっては比較的安全で最悪出番がない後衛ポジションはアピールポイントがなく人気が悪い。照麻はどこでもいいのでアンケートすら出していない。それでも大将だけは選ばれただけでも目立つポジションなので一番人気が高い分、希望してもそれ相応の実力がないと候補にすら入る事が許されない。各企業の社長や役員の人も各学園から提出される模擬戦の結果や報告書などは職種によっては重要視して見ていたりもするからだ。



「なら私達と一緒ですね。改めてよろしくお願いします」


「私達?」


 照麻が香莉、愛莉、優莉の順で視線を飛ばす。

 すると香莉と優莉がほほ笑み、愛莉が「ふんっ」と言ってソッポを向いた。


「今回学年の代表が愛莉で私と優莉も照麻さんと同じく愛莉を護る最後の砦と言った所です」


「嘘だろ!?」


 照麻はもう一度よく手に持ったプリントに目を通す。

 チーム戦の代表と言ったら、先生達が一番と認めた実力者もしくはその実力者に近い者が選ばれるポジション。代表が降参、もしくは倒されたらチームは負ける。つまり大将なのだ。そんなポジションにこんな性格に難があるやつが選ばれるだと!? と思い目を通す。

すると確かに愛莉が代表と選ばれていた。


「アンタねぇ……私をなんだと思ってるの?」


「なにって性格に難があって人を見下しつつ下着泥棒と言ってくる奴だけど?」


「ほぉー、とりあえず私はアンタを八つ裂きにすればいいのかしらね」


 愛莉が初めて照麻に素敵な笑顔を見せてくれた。

 その背後にある見てはいけない物にいち早く気が付いた照麻。

 慌てて香莉の腕を掴み自分の方に引き寄せる。

 そして香莉の背中に隠れるようにして顔だけを出して言う。


「嘘です。本当は泣き虫でか弱い女の子だと思っております、愛莉様」


「そう、ありがとう。なら覚悟はいいかしら?」


「まぁまぁ、落ち着いて愛莉」


「そうですよ。先に酷い事を言ったのは愛莉ですよ?」


 香莉は照麻をチラッと見て愛莉が拳を握り近寄るのを止める。


「それに照麻さんがビビッてます。手を出したら今度こそ私は本気で怒りますよ?」


「それは私も賛成。もう少し照麻を受け入れてあげな、愛莉」


 優莉も香莉の隣に来て、照麻を護る。


 照麻はこの瞬間二人に便乗して言いたい事を言おうと思ったが、愛莉の死んだ魚を見るような視線に射抜かれて急いでお口をチャックした。

 照麻の体感温度が二度下がった。

 そう感じた。


「にしても照麻も可愛い所あるじゃん。よしよし、お姉ちゃんが慰めてあげるぞ~」


 ブルブル震える子猫となった照麻の頭を優莉が撫でて安心させる。


「愛莉が、愛莉が、愛莉が怖いんだけど。俺やっぱり前衛がいい、後衛ヤダよ……」


 そのまま弱音を吐く照麻。


「ってアンタなに香莉だけじゃなくて優莉にも甘えてるのよ! 今すぐ離れなさい! でないと本当に八つ裂きにするわよ!」 


「まぁ、愛莉ったら拗ねてから」


「す、拗ねてないし!」


「ほら、愛莉もこっちおいで。お姉ちゃんが頭を撫でてあげるわよ~」


「別にいい! 本当にそんなんじゃないから!」


 そう言って愛莉は怒って何処かへと行ってしまった。

 香莉と優莉は「いつもの事だから、大丈夫」と言って気にしていないのか照麻と一緒にその場で雑談をして演習開始の時を待った。




 ――愛莉が怒って一人で時間を潰している頃。


 由香の隣にはある女の子――クラスメイトの後藤小夜子ごとうさよこがいた。

 綺麗な紫色のセミロングの髪を風に揺らして、女子にしては背が高い百六十センチの五十二キロとスレンダーな身体をした女子高生だ。ない胸を張り、青い空を見上げてながら呟いた。


「由香がいれば二年生の先輩も余裕だよね」


 明るい性格の為か思考もポジティブ。

 言い方を変えれば由香をかなり頼りにしているようにも聞こえる発言に由香はため息混じりに答える。


「そんなに上手く行けば誰も苦労しませんよ」


「どうゆう意味?」


「学園の先生方も馬鹿じゃないってことです。私が無双して終わる、そんな簡単な演習なわけがないと思いますよ」


「そう?」


「えぇ。だって職員専用テントにお年を召された学園長がいらっしゃいます。つまり学園側としても新一年生の実力を知りたいそうお考えなのでしょう。そう考えるとやはり一番厄介なのはお兄様なのかもしれません」


 由香は姿すら見えない照麻がいるであろう方向に身体を向けて答えた。

 誰がなんと言っても由香にはわかる。

 達人が使う鈍らは素人が扱う名刀と対等に渡り合う事ができると。


「それに敵の大将は私のお兄様を泥棒猫した三姉妹の一人。このプリントを見る限り円満な関係にある香莉さんとまだお会いした事がありませんかお二人の姉にあたる優莉さん。倒す相手には持ってこいです」


 プリントを凝視する由香。

 そのまなこは燃えていた。

 それを見た小夜子さよこは苦笑いをする。


「……由香?」


「なんですか?」


「お兄ちゃん愛も大概にしときなよ」


 小夜子はこんなにも兄想いの人間を今まで見た事がなかった。

 彼女の中には闘争心と言うよりかは嫉妬心があり、それが今回の演習の原動力になっている、そんな風に見えていた。


 こうして両者の大将はそれぞれの思いを心の中に秘めて配置に着いた。




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