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すれ違う心


 すると、優莉が照麻に耳打ちしてくる。


「なんか熱が入ってみるみたいでゴメンね」


「別に大丈夫。それより俺お邪魔みたいだし帰るよ」


「気にしないでここにいていいよ」


「でも……」


 照麻は困った。

 帰ろうにも引き留められる。だけどここに居て欲しくなさそうな愛莉。

 多数決と言うのであれば優莉と香莉の意見に乗るべきなのだろう。


「愛莉!」


 突然、香莉が叫ぶ。

 これには流石の照麻もビックリして身体がビクンっとなってしまった。

 チラッと見れば優莉と愛莉も身体をビクンとしている。


「な、なによ?」


「そう言わずに仲良くしませんか。一体何がそんなに気にくわないと言うのですか?」


「だって……」


 愛莉は一度照麻を見て、少し躊躇う。

 この期に及んで一体何を躊躇うと言うのだ。

 人を下着泥棒呼ばわりしておいて、と言うのが照麻の意見だった。


「「だって?」」


 優莉と香莉の言葉に続くようにして。


「だってコイツ香莉に手を出してそうゆう関係になろうとしてるって今日友達から聞いた。つまりコイツは性欲の塊で私達の下着とかを見て興奮し、襲い掛かってくるかもしれない狼……なんでしょ? それにシスコンで浮気男の癖に香莉を狙っているとも聞いた」


「「「………………」」」


 照麻はその言葉を聞いた時、「あ! なるほど!」と妙に納得してしまった。

 校内では早くも噂が尾ひれを付けある事ない事で一杯なのだと。

 だから愛莉はこんなにも照麻の事を警戒しているのかと。

 よく見れば優莉も「あ~、あれか」と言って愛莉の言葉に納得している。


「照麻?」


「はい」


「あれ本当なの?」


「全部違う。もしそれが本当なら俺はこの瞬間にも三人のうち誰か一人ぐらいには手を出しているぞ?」


「それもそうだね。つまり噂は噂ってことだね」


「当たり前です。本当に照麻さんが危ない人だったら家にあげませんしお友達にもなりません」


 香莉の言葉に納得する優莉。

 流石姉妹。ここら辺は姉妹での信頼関係がしっかりとあるのかすぐに受け入れてくれているみたいだし、何より噂ではなく実際に自分の目を信じると言わんばかりの二人。ただ一人はそれでもまだ納得できないらしい。


「と言う事でこれからも仲良くしましょうね、照麻さん」


「俺なんかで良ければ喜んでだ!」


「はい!」


 香莉の笑みを見た照麻は止めていた手を動かし料理を口に運んでいく。

 それから四人全員はご飯を食べた。


 食べ終わると愛莉が席を立とうとする照麻に向かって鋭い視線と一緒に優莉と香莉と話す時とは違い声のトーンを一つさげて威嚇するようにして呟いた。


「アンタ二度と家に来ないで」


 照麻はこれが愛莉の本音なんだと直感で感じた。


「あぁ、悪い。もうここには――」


 照麻の声を遮るようにして、偶然近くを通り愛莉の一言を聞いた香莉が爆発した。


「いい加減にしてください! 私が誰と仲良くしても勝手じゃありませんか!」


「……かおり」


「さっきから優しくしてあげてれば、私はあの日照麻さんがいなかったら女として嫌な経験をしていたのかも知れないのですよ? それを見返りを求める事すらせず、私の為に身を盾にして暴漢達から私を護ってくれたことは事実です! なのにどうして噂に踊らされて、私の言葉をさっきから半信半疑でしか受け入れてくれないのですか!?」


 その光景を見た優莉が慌てて二人の元にやって来て。


「照麻は一旦ベランダに逃げて」


 照麻は優莉に言われすぐにベランダにやって来たのだ。




 さり気なく後ろ振り返ってもう終わってたりしないかなと願望を込めて照麻が振り返る。

 ベランダのドアが閉まっていて、話し声が聞こえないがそこには驚く光景が視界に入って来た。

 それは香莉の顔からは怒りがまだ消えておらず、優莉の表情はまだ両者の言い分を聞いて迷っているように見える。だけど驚いたのはそこじゃない。驚いたのはあの愛莉が目から涙を零して泣いていたのだ。そしてたまたま照麻と目が合った愛莉は急に身体の向きを変えて玄関の方へと走って行った。

 照麻はしまったと思い、慌ててベランダのドアを開けると香莉と優莉の表情が沈み始めた。


「愛莉……」


「大丈夫よ。愛莉は香莉の事を本当に心配していたんだと思う。だからあんなに過保護だったとお姉ちゃん思うな」


 落ち込む香莉、励ます優莉。

 照麻はカバンを手に持ち、二人の前に行って言う。


「今日は帰るよ。また明日学園で会おうな」


「わかりました」


「うん。なんかごめんね」


「大丈夫。それよりもしっかりと仲直りするんだぞ」


 照麻は二人にそう言い残して玄関へと向かい家を出た。



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