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アイス、アイス、アイス!4

聖歴2026年7月8日(水)


 翌朝。雲行きは怪しいが、今日も蒸し暑くなりそうだ。


 昨日、バレー部員の女子は朝九時からアイスの販売を始めると言っていた。ので、少し早めに朝八時半に校庭脇の屋台のある場所に行ってみた。……の、だが――


『な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁ……!!』

 メリュジーヌが叫んだ。それもそのはず。屋台前にはすでに長蛇の列が形成されていた。開店三十分前にもかかわらずバレー部員のうち二人が行列の整理を行っている。


「本日のアイスは現在並んでいる人で完売です! 今から並んでも買えませんので、並ばないようにしてください!」

 などと叫んでいる。


 屋台を見ると昨日は一個三百円だったのだが一個二百円になっている。おそらく、一人前当たりの量を減らしてより多くの人に行き渡るようにしているようにしているのだろう。にもかかわらずこの状況である。


「仕方ない。また今度来よう」

 頭の中でメリュジーヌがわめいていたが、どうにもならないものは仕方がない。はしごを作ってくれる姫子には何か差し入れをしなきゃいけないなと思いながらその場を後にした。




 その後、気温の上昇とともにアイスを巡る争奪戦はエスカレートの一途をたどっていった。


 朝九時の販売開始のために徹夜組が出るのはすぐだった。やがて前日の販売締め切りと同時に次の日の行列が出始めたが、これは風紀委員会によって強制的に解散させられた。同時に徹夜での行列の禁止と、朝八時よりも前の行列形成の禁止が正式に校則で決められた。


 バレー部も無策だったわけではない。初期一個三百円だったアイスは最終的に一個百円となり、三分の一の分量となった代わりに三倍の生徒に行き渡るようにしたが、それが逆に人気に火がついて行列は拡大の一途をたどっていった。


 次にバレー部は“アイス引換券”を発行した。校則に従って毎朝八時に屋台前に集まった生徒に対して抽選で当日限りの引換券を配ったのだ。これによって行列は解消された。


 しかしこれは別の問題を産み出した。


 最初に起こったのは買収だ。某部の男子生徒はクラスメイト数人に報酬を払ってアイスの大量購入を企んだ。彼のこの行動は一度は成功した。


 彼が巧妙だったのは、部単位で行動している今の北高において、クラスメイトに頼んだということだ。

 別々の部員だった協力者のために発覚が遅れたが、風紀委員達の執念の()()によって彼らは摘発された。校内での流通が禁止されている日本円での買収が発覚して、彼らは厳罰に処されたという。


 次に起こったのは引換券の転売だ。これは同時多発的に発生し、しかも証拠が残りにくいために隆盛を極めた。最盛時には引換券はアイス本体の価格の七倍以上である、七百二十四円にまで高騰したという。真偽のほどは定かではないが、引換券で財をなした“アイス長者”も誕生したという。


 引き換え券による取引も行われた。最初は仕事の肩代わりや当番の交代などが行われていたが、やがてエスカレートし、北高の正式な通貨である〈北高円〉の代わりに貨幣として使われ始めるにあたり、全面的に禁止されるようになった。


 このようなアイスを巡る大狂乱を前に、風紀委員長の岡田遙佳はアイスそのものの販売停止とバレー部の解散を主張したが、生徒会長の菊池一は食べ物の規制は人心の荒廃を招くと頑として譲らなかった。

 そんな状態でおよそ一週間。バレー部は突如としてアイスクリームの販売中止を発表した。






聖歴2026年7月15日(水)


「〈竜王部〉のみんな、お願い。私たちを――ううん、バスケ部のアイスを救って!」

 バレー部の一年生が〈竜王部〉部室にやってきたのはアイスの販売中止が発表されたその日の夜、彼らが迷宮探索から戻ってきた時だった。

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